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金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第3章 ユニコーン×バイコーン×借金男
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第127話 新米騎士と潜入調査③

 プロスペリタ王国の交易都市、メルシオで1週間に渡って調査を続けた2人。

 メアリーとエリオットはそのまま大きな街を幾つか回った。3週掛けて5つの都市で調査をし、得られた結果は幾つかある。

 ユニコーンとバイコーンの販売価格が高騰している話。冒険者が減ってしまいモンスターが増加している事。

 商人達が減った冒険者に変わって傭兵を護衛として雇っている事。それから調教済みのモンスターを借りる方が、傭兵より安く済むと人気が上昇している事などが主な収穫だった。

 他にも噂話程度なら複数入手する事が出来た。2人はそろそろ王都に向かってみる事にし、乗合馬車に乗って移動していた。


「王都のシェントロはどんな所だろうね、姉さん」


 エリオットはあくまで弟を演じなければならない。不自然にならないよう注意しつつ、メアリーと雑談を行う。


「とても綺麗な所だって噂よ」


 メアリーも同様に姉として振る舞う。どこで誰が聞いているか分からない。油断せずに徹底して演技を続ける。

 2人は実際に姉弟でも通じる程度に年齢が離れており、外見からの違和感はない。

 強いて言えばメアリーがやや小柄だという程度だが、姉より背が高い弟などどこにでも居る。


 容姿の違いもあるにはあるが、どちらも美形という点では共通している。メアリーは髪が淡い緑で、エリオットの髪色は蒼い。

 それぐらいの違いなら両親のどちらに似たかで変わって来る。単色の髪色が多い国なら違和感も生じるかも知れないが、マネー大陸ではその様な国は少ない。

 多少の差異など問題にならない。2人がありきたりな雑談をしていると、近くに座っていた老婆が話し掛けて来た。


「あなた達はご姉弟? どこから来たのかしら?」


 60代ぐらいの皺のある顔、少し曲がった背中。手に持った杖は結構使いこまれている。眼鏡の奥にある目は、とても優しそうだった。


「ええそうですよ。私達はローン王国から来ました」


 同じ女性同士だからと、メアリーが代表して対応する。単純に経験豊富である事も理由だったが。

 それにエリオット普段より寡黙な雰囲気を作っており、うっかりボロが出ない様に対策している。


「まあ遠くの国から来たのねぇ。観光なの?」


「弟と大陸東部への移住を考えていまして、半分観光もう半分は下見ですね」


 メアリーとエリオットはずっとこの言い分を使っている。その方が情報を収集する上で都合が良いからだ。

 地域の治安や最近の出来事、事件や事故について聞いて回っても不思議ではないからだ。

 ましてやメアリーはまだ十分若い女性であり、その辺りを気にするのは当然の話。

 エリオットの方も、歳の近い姉が一緒だからと言えば十分な理由になる。

 良い人達に嘘をつくのは少々気が引けるが、任務なのだから仕方がない。2人は老婆の前で演技を続ける。


「弟さんは随分とお上品なのね」


 平民のふりをしていても、エリオットが貴族として生きて来た経験は消えない。どうしても伯爵家長男としての風格が滲み出る。

 エリオットが抑えているつもりでも、人生経験が豊富な老婆には勘付かれてしまった様だ。


「祖父が元貴族だったので、男の僕には少々厳しくて」


 こうなってしまっても対策は考えてある。没落貴族の孫だという事にしておけば、それ程深く聞かれはしない。

 貴族が没落する事はたまにあり、複雑な家庭になりがちだ。エリオットの言うような話はそう珍しい事ではない。

 貴族でなくなったというのに、高貴な者として生きようとする。そしてそれを家族にも強要してしまう。特に家を継ぐ立場である息子や男子の孫は苦労する。


「あらまあ、ごめんなさいね。変な事を聞いちゃって」


「いえ、お気になさらず。もう昔の話ですから」


 そもそも嘘の話であり、エリオットが気にする事はない。貴族としての教育が大変だったのは本当だが。

 代々騎士として国に仕えて来た名門として、それはもう厳しい指導が行われた。

 辛い時期は確かにあったし、やさぐれていた事もある。しかし今のエリオットは真っ直ぐに生きる事が出来ている。


「それよりおばあ様は何しに王都へ?」


 メアリーが自然に話題を変える。自分達の事を聞かれるよりも、相手の事を聞く方が圧倒的に楽だからだ。


「孫が結婚するらしくてねぇ、お祝いに行く途中なのよ」


「まあ! それはおめでたいですね」


 とても会話を広げやすい話題が出て来たので、2人はすかさず乗っかる。どんなお孫さんなのかや、お相手の話。

 結婚式はどうするのか。ひ孫が生まれるかも知れない事等。話す事は幾らでも出て来る。それと同時に王都の現状を聞く良い機会でもある。


「王都はやっぱり賑やかですか?」


「そうねぇ、最近は特に賑やかよ。国王様の誕生祭も近いから」


 老婆から王都の情報を聞いていく。誕生祭の話は既に聞いており、2人共知っていた。

 しかしあくまで知らなかったフリをしておき、話題として引き延ばす。

 同じ情報でも、視点によって認識は変わる。2人は王都に着くまでの間、老婆から様々な情報を得る事が出来た。


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