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金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第3章 ユニコーン×バイコーン×借金男
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第126話 新米騎士と潜入調査②

 交易都市メルシオに滞在中のメアリーとエリオットは、プロスペリタ王国内の情報収集に勤しんでいる。

 3日目を迎えた朝、2人は宿泊している宿の一室で相談をしていた。念の為に防音の結界を発生させる魔道具を使用中だ。

 誰からも聞かれる必要がないので、ここでは元の話し方で2人は会話している。


「それで、昨日までにエリオット殿が集めた情報ですが……」


 姉弟を装って行動している2人は、平民らしい格好をしている。

 任務の為とは言え、やや薄着の先輩が同じ部屋にいる状況は、エリオットには少々辛い。

 不躾な視線を向けない様に注意しつつ、彼は自分の集めた情報を話す。


「コホン。先ずはユニコーンやバイコーンの価格の高騰ですね。ズーク先生が入手した情報と同じですね」


 かつて教えを受けたズークはエリオットにとって、今でも先生である事は変わらない。

 そんな扱いを受ける価値があるか甚だ怪しい男だが、授業で感銘を受けたエリオットはバイアスが掛かっている。


「それは私も聞きました。オーディナリ王国で需要が上がっていると」


 プロスペリタ王国の隣国であるオーディナリ王国は、最近ユニコーンやバイコーンを大量に購入している。

 女性の部隊を新設するのではないかと、商人達の間で専らの噂だ。それもあってマネー大陸の東部では現在、2種の乱獲が行われている。

 ただしゴブリン等の様に、大きな群れを作る生物ではないので、数を集めるのは難しい。


「後は自分が聞いた中で気になるのは、最近東部ではモンスターによる被害が増えているとか」


「それは王都キャッシュの近辺で起きた様な?」


 彼らの故郷であるローン王国で、最近起きている襲撃。その中で転移を使った魔物の襲撃が起きた。この調査を行う切っ掛けにもなった事件だ。


「いえ、そうでは無い様子で。純粋に魔物が増加しているみたいですね。冒険者が忙しいとか」


 マネー大陸の南部で人気の大規模ダンジョンへ、優秀な冒険者が出張っている為駆除が追い付いていない。

 そのせいで傭兵や調教したモンスターの貸し出し、奴隷部隊の派遣などが盛んに行われている。

 武器や戦力を売る商売が人気のプロスペリタ王国では、こういう時に商人達が活躍する。

 冒険者ギルドや王国を相手に、大商会はここぞとばかりに稼いでいる。


「なるほど……。ならば今日はその辺りを調べてみましょうか」


「はっ!」


 今の2人は姉弟の関係ではない。あくまで先任の騎士と新米だ。メアリーの指示にエリオットは敬礼で応える。


「そこまで堅くなくても良いのですよ?」


 あくまで真面目に対応するエリオットに、メアリーが苦笑をしながら伝える。騎士団での地位は確かにメアリーが上だ。

 しかしエリオットは伯爵家の長男で、メアリーは平民の出身だ。こんな時ぐらいまで、何もそう真面目に振る舞う必要はない。

 多少砕けた態度でも構わないとメアリーは思っている。


「いえ、その……あまり慣れなくて」


 厳格な父親に育てられた事もあり、本来エリオットはお堅い性格をしている。

 学生時代に腐っていたタイミングこそあったが、基本的にエリオットはこういう青年だ。

 それに腐っていた理由も、強い教師が居なかったからだ。実力を認めるしかない相手に囲まれていれば、真面目な一面が色濃く表に出る。

 最も、リーシュと出会った影響が一番大きくはあるが。


「真面目なのは良いですが、先任者と仲良くなるのも大事ですよ」


「分かってはいるのですが……」


 メアリーが防音の魔道具を片付けながら、出発の準備を始める。ここからは姉弟として演じる時間だ。

 この演技を続ける過程で、優秀な新人と仲良くなれたらなとメアリーは思っている。

 もちろんそれは副次的な目的で、あくまで事件のヒントを得る事が最優先だが。


「さあ、行くわよ」


「うん、姉さん」


 2人は宿を出て街へと出る。朝の稼ぎ時に商品を売りたい者達が、あちこちで呼び込みをしている。

 屋台を出している者達も同様だ。都市部の朝の喧噪が、メアリーとエリオットを出迎える。

 メルシオは交易都市の名に恥じず、多くの人々が行き来している。他国の者も多く出入りするので、歩いている人種も様々だ。亜人達の姿もかなり多い。


「武器商人達が多いエリアへ行くわよ」


 メアリーの指示に従いエリオットはすぐ後ろを着いて行く。国外の人間が多く訪れる都市である為、ローン王国から来た異国人であっても目立つ事は無い。

 雑踏に紛れて2人はメルシオの街を歩く。今日は2人で武器商人達が集まる区画へ向かう。

 飲食店が多い宿屋のある区画と違い、歩いている人々の装いは違う。武器を携えた冒険者や傭兵達が殆どで、2人は少し浮いて見える。

 平民でも訪れる事はあれど、そう多くはない。包丁やナイフなど、家庭で使う刃物類を買う時ぐらいか。


「さて、先ずは手近な店から」


「了解」


 すぐ近くにあった武器屋から調査を開始する2人。適当に理由をつけてナイフを購入したり、砥石を購入したりしつつ情報を集めていく。

 どうやらモンスターの増加による被害は、結構多いらしい事が分かった。

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