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金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第3章 ユニコーン×バイコーン×借金男
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第122話 ベテラン受付嬢の報告

 冒険者ギルドの鑑定士見習いであるレオンが、進化した鑑定魔法で様々な事実を判明させた。

 回収されたモンスター達の出生地、洗脳されていた事実。それらのお陰で不透明だった襲撃犯の正体が、ある程度絞れる様になった。

 先ずモンスターを洗脳していた事実から、魔族が関与している可能性はほぼゼロになった。

 魔族はモンスターを使役するが、それは洗脳ではなく調教だ。上下関係と仲間意識をしっかり持たせて、軍隊の一部として取り込む。

 洗脳を必要としない為、今回の件とは関連性が低い。また魔族達の住む大陸で生まれたモンスターも含まれていない。


 わざわざマネー大陸に来て各地を回ってまで、魔族が手間を掛ける意味もない。

 そうなると関連性が高いのは、マネー大陸でモンスターを洗脳する必要がある組織だ。

 モンスターを扱う商売は幾つかある。物好きな金持ちや、武闘派がモンスターを飼う事がある。

 権威を示す為に、ペットとして使役するのだ。他にも見世物小屋や、サーカスでの使用。そして軍事力としての利用。

 魔族を真似て軍事力として組み込む国は幾つかある。それらの場合で多くは、洗脳というやり方を取る。


 教え込むよりも圧倒的に楽であり、掛かるコストも低くなる。ただし洗脳では信頼関係が築けないので、リスクではないかと考える勢力は少なくない。

 もし戦場で洗脳が解ける様な事になれば、要らぬ戦闘を余儀なくされてしまう。ローン王国も慎重派であり、戦力としての利用はしていない。

 安全な種をペットとするのは認められているが、洗脳したモンスターの入手及び購入は違法とされている。

 近隣の国はどこも似た様な法律であり、少なくとも周辺国は関与していない可能性が高い。

 それらの報告をベテラン職員である受付嬢のカレンが、ファウンズ支部長の執務室で報告していた。


「現在分かっている事は以上です」


 30歳になっても美しいカレンは、今日もその整った顔立ちをメイクで映えさせている。

 ギルド職員の制服の上からでも、スタイルの良さが見るだけで分かる。


「なるほどな……大陸の東が怪しいか」


 少し頭髪が薄くなって来たファウンズは、顎を撫でながら思案している。男性としては小柄な彼は、カレンとさほど体格が変わらない。

 しかし50年生きて来た彼は、年相応の威厳を持っている。


「騎士団が転移魔法についても調べていますから、そろそろ結果が出て来るでしょう」


「分かった。報告書は王城にも送っておいてくれ」


 ファウンズはそう締め括り、執務机のイスに深く体重を預ける。


「ところで、あやつは真面目にやっとるか?」


 ファウンズがあやつと呼ぶのは、このギルドでは1人しかいない。キャッシュ支部の最高戦力であり、1番の問題児でもある男。借金塗れのSランク、ズーク・オーウィングだ。


「ええまあ、珍しく真面目に。どうせギャンブル絡みだからなんて、下らない理由だと思いますが」


 ズークが新人の時代から知っていたカレンには、ズークの考える事なんて丸わかりだ。弟分として見守ってきた時間はかなり長い。


「はぁ…………まあ良い。あやつが余計な事をやらん様に、良く注意しておいてくれ」


「はい。いつもの様に対処します」


 そのやり取りを最後に、カレンはファウンズの執務室を出て行く。ズークを監視する役目を担う1人であるカレンは、ズークがまた馬鹿をやらない様に日々注意している。

 ズークを監視するもう1人、リーシュとの情報共有は頻繁に行っている。最近のズークはとても真面目に……比較的真面目に働いている。

 今回は王都で起きた事件だけに、国からの支援金も出ている。このままズークが真面目に労働していれば、まともな収入となり返済は進むだろう。


「アナタ、この報告書を王城へ送って頂戴」


「分かりました」


 郵送関係を担当している職員に報告書を手渡し、カレンは受付へと戻っていく。そろそろ受付業務が終わる時間だ。

 完全に日は落ちており、窓から見える王都の街並みは薄暗い。カレンが戻って来たタイミングで、レオンが鑑定室から出て来るのが見えた。功労者である彼を労う為、カレンは声を掛ける。


「レオン、貴方最近頑張っているじゃない。鑑定士に誘って正解だったわ」


 憧れの女性に褒められて、レオンは照れ臭そうにしている。


「いっ、いえ! そんな大した事は……まだ見習いですし」


 まだ20歳の彼は、外見に幼さが少し残っている。体格こそ大人の男性だが、可愛らしいと表現出来る顔立ち。短めの銀髪と青い瞳を持つ人の良さそうな青年だ。


「そんな事ないわよ。期待以上の成果よ。今夜奢ってあげるわ」


「え!? い、良いんですか?」


 突然の提案に、レオンは驚きを隠せない。最近こうやって、カレンはレオンを食事に誘う様になった。

 彼女に憧れているレオンは、断る理由がないので毎度オッケーしている。


「エエ良いわよ。頑張っている後輩へのご褒美よ」


 綺麗なウインクを決めるカレンに、頬を赤らめるレオン。彼は知っているのだ、夕食のお誘いがあった日はその後もあると。

 美しい憧れの上司と過ごす夜。ご褒美に込められた意味。まだ終業前に浮かぶ煩悩を振り払い、レオンは業務を続けた。

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