表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第3章 ユニコーン×バイコーン×借金男
120/132

第120話 鑑定士見習いの鑑定魔法

 ズーク達冒険者がトラブルに対応していた頃、冒険者ギルドでは見習い鑑定士のレオンが届いたモンスターの死体を調べていた。鑑定結果を報告書に書き込んで行く。


「えっと、このコボルトは大陸の北方に生息するタイプと」


 15歳で王都に上京するも、才能の限界を感じて冒険者を辞めた元Eランク。

 しかし引退を決めた20歳の時に、カレンから誘いを受けてギルドの職員となったレオン。

 鑑定の魔法が使えた事で、まだ見習いでも正確な情報を得られる。鑑定の魔法はレアな時属性に含まれるもので、使える人間はそう多くない。

 殆どの鑑定士は、魔導具を使って鑑定を行う。ただし魔導具による鑑定は、鑑定の魔法より精度が落ちる。

 しかも必要な魔力は大きく、大体の鑑定士はギルドが用意した魔力タンクを併用せねば魔力不足に陥る。


「次をお願いします!」


「おう! 待ってろ!」


 レオンと仲が良い先輩のマークが、運び込まれた死体を鑑定部屋の中に持って来る。

 台車に積まれた死体は、劣化しない様に停止の魔法が掛かっている。そちらも時属性の魔法であり、対象の物体の時を止めるもの。

 それだけ聞けば非常に強力な魔法だが、生きているモノには使用出来ない。かつては生物に使用出来た者が居たと言われているが、ここ数百年の間にそんな人物が現れた記録は残されていない。


「ほらよ、次の分だ」


「ありがとうございます」


 王都キャッシュの冒険者ギルドには、鑑定士がレオン以外に5名在籍している。しかし鑑定魔法が使用出来るのは、レオンしか居ない。

 彼らは鑑定士としての知識は豊富だが、レオンの様にポンポンと連続で鑑定するのは難しい。

 魔力が人より多いレオンは、立て続けに鑑定を続けていく。現在最優先に調べねばならないのは、ズークと騎士団が倒した草原に現れたモンスターの死体だ。

 どこから送られてきたのか、送り込んだ犯人は誰なのか。そのヒントになる何かを、見つけねばならない。


「凄い量じゃないのよ! 鑑定士を増やして欲しいわ」


 ベテランの女性が、冒険者ギルドの現状を嘆く。鑑定士は貴重であり、そう沢山は居ない職業だ。

 鑑定魔法を使えるか、モンスターについて詳しくないといけない。前者はレアなパターンで、後者は相応の知識が必要となる。

 後者の場合は元々研究者気質な人でないと、膨大な情報を頭に入れるのは難しい。モンスターの生態とか、どこがどんな素材として使えるのか。

 それらに興味が持てないと、勉強を続けるのはただ苦痛なだけだ。給料が良いので鑑定士になろうと考える者も居るが、大体は途中で挫折する羽目になる。


「この前だってアテム大森林の調査で、ワシらは大変だったのにのぅ」


 1番古株である初老の鑑定士も、流石に愚痴をこぼしている。通常通り持ち込まれる冒険者達の素材も、彼らは鑑定しないといけない。

 立て続けに忙しい状態が続いたので、彼らは少し疲労が溜まっている。この状況を理解しているファウンズ支部長も、どうにか人員確保を急いでいるがまだ増員には至っていない。

 その点を考えれば、レオンを勧誘したカレンは実に良い仕事をしたと言える。


「このゴブリンは南方の海沿いに生息するタイプだ」


 消費の激しい鑑定魔法を連続で使えるレオンは、次々と鑑定を済ませていく。

 最近レオンには妙な感覚があり、一度で消費する魔力量が少なくなった気がしている。

 特定の魔法を使い続けていると、性能が微妙に変化する場合がある。発生条件は良く分かっておらず、才能由来の現象だとされている。

 まさか自分もそのタイプだったのかと、レオンは少し驚いている。続いて新しい死体に向けて、レオンは再び鑑定魔法を使用する。


「……え? 何だこの表示?」


 今までの鑑定魔法とは違い、新たに表示項目が増えている。空中に浮かび上がる鑑定結果には、『状態:洗脳の痕跡有り』と見た事のない文言が書かれている。


「あ、あの〜何か洗脳の痕跡有りって出たのですが……」


「え? 何ですって?」


 ベテランの女性を始めとした、5人の鑑定士がレオンの下に集まる。全員が鑑定結果を覗き込み、レオンと同じ表記を見る。


「な、なんじゃこれは!?」


「こんなの初めて見たぞ!」


 突然性能が変化したレオンの鑑定魔法。それは鑑定の魔導具では表記されない情報。

 死んだモンスターが生前どんな状態にあったのか、読み取って表示している。

 レアな鑑定魔法の使い手であり、しかも性能を変化させる才能まで持っていた。

 その事実に驚くと共に、モンスターが洗脳状態にあった点についても5人は驚く。


「ほ、他の死体も調べてみてくれないかしら?」


「は、はい…………あ、やっぱり洗脳の痕跡有りと出ます」


 それからレオンが全ての死体を調べた所、どのモンスターも洗脳の痕跡有りだと判明した。

 ズーク達が疑った魔族による調教ではなく、モンスターを洗脳して操っていた事が発覚。

 重要な情報だとすぐさまファウンズまで報告が行き、事態は新たな局面を見せ始めた。そして功労者であるレオンの評価が、また一段階上昇した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ