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金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第3章 ユニコーン×バイコーン×借金男
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第118話 痕跡の調査

 ズーク達が討伐したモンスター達は、詳しく調べる為に冒険者ギルドへ送られた。

 より正確な情報を引き出す為の措置である。そちらは派遣されたギルド職員と冒険者達に任せ、ズークは騎士団と共に周辺の捜索に回る。

 これだけ纏った量のモンスターを、ここまで運んだ方法を探る為だ。共闘する様に仕込まれたモンスター達。


 そんなものが自発的に突然やって来るなんて有り得ない。必ず誰かの介入があった筈だ。複数の馬車を利用したのか、魔導車に似た何かか。

 それとも別の方法によるものか。おかしな痕跡がないか、全員でモンスター達の移動跡を遡る。

 ズークは必要性を感じたので、斥候チームを呼び寄せて合流している。ギャレットファーム周辺の警戒からは一旦外れ、ズークや騎士団と共にバックスを始めとする斥候役達も捜索を開始。


「ったく、地味な作業だ」


 痕跡を辿る作業は、ズークが言う様に酷く地味だ。魔法や魔導具を併用しても、簡単になる事はない。

 結局は人間の目で、最後は確認せねばならない。ズーク達は足跡を辿る魔導具を使い、ひたすらその痕跡を追い続ける。


「止まって! ここで途切れている」


 騎士団を率いるメアリーが、足跡が完全に消えた事を告げる。つまりここからはまた、全員で何かのヒントを探すターンだ。

 馬の足で何かを踏み潰す可能性を排除する為、全員が降りて自らの足で周辺を見て回る。

 草の生い茂る大自然の中、ズーク達は何かが残されているか探す。探しても何も見つからないかも知れない。


 しかしその何にも見つからなかったという、1つの答えもまた必要なのだ。捜査とはそういうもの。

 戦闘の様な派手さは一切なく、地道な作業の繰り返しだ。犯罪の捜査で慣れている騎士団や、常日頃から似た事をしている斥候役は慣れたもの。

 だがズークの様なタイプには、中々厳しい作業となる。


「皆良く飽きねぇなぁ。俺には向かない作業だ」


「慣れですよズーク殿。こういうのは」


 ぼやくズークに、たまたま近くに来ていたメアリーが答えた。大好きなケイバが絡んでいるから続けているが、そうでなければ先ず手伝わない作業だ。

 魔導具を片手に、地面をひたすら調べて回るだけの時間。ランタンに似たガラスの箱を持ち、照射される光を地面に当てる。

 もし何か異常があれば、ガラス面に詳細が表示される。しかしこの魔導具、痕跡を見つけた後は便利だが、見つけるまでは大変だ。


 何せ人間の肩幅ぐらいの広さしか、探索時は調べられない。発見した何かを追跡する場合は、結構な範囲をカバー出来るのだが。

 この魔導具を作ったのは異世界人であり、探偵の7つ道具シリーズと言われる内の1つだ。

 他に6つあったのだが、4つが歴史の闇に消え、現在では再現が不可能だ。全て揃っていれば、もっと便利に使えたという記録が残されている。


「お? 何だ? 反応してるぞ」


「見せて下さい……これは、転移系の魔法が使われた痕跡ですね」


 メアリーがズークの持つランタンに似た魔導具を確認し、表示された分析結果を見る。

 彼女がガラス面を幾つか触ると、分析した反応と同様の痕跡を広範囲に渡り探索する。

 微弱な魔力が魔導具から放出され、周辺に拡散していく。暫くするとガラス面に結果が表示された。

 ズークが居る位置から前方に向けて、20メートル四方の範囲で転移系の魔導具又は魔法が使われたと言う結果が出た。


「少なくともローン王国では製造していない型ですね。魔法の方は、時属性の適正さえあれば使える物です」


「そんな事まで分かるのか、便利だなコレ」


 メアリーが要請して持ってこさせた魔導具を、ズークは物珍しそうに見つめる。


「ええまあ。でも維持コストが高いのですよ。この通りガラス製で、破損もしやすいですし」


 メアリーが困った表情でガラス面を指でコツコツと叩く。こうして集団で使うと非常に便利だが、作業は地味だしコストが掛かる。

 皆で虫眼鏡を片手に、地面とにらめっこするよりは遥かにマシというだけで。


「それよりも転移の方ですね。決めつけるのはまだ早いのですが、国外の勢力である可能性はかなり高くなりました」


「転移の魔導具か?」


 先程出た分析結果と、倒したモンスター達から得た情報。それらが指し示すのは、ローン王国外から来た何者かの関与。


「そうですね。流通している国を調べれば、ある程度の範囲が絞れるかと」


「そっちは任せても良いか?」


 その様な調査は、ズークに出来ない仕事だ。そもそも冒険者には難しい。冒険者には冒険者の領分がある様に、騎士団には騎士団の領分がある。


「もちろんですよ。ここからは騎士団の仕事ですから」


 メアリーはただ槍の扱いが上手いだけの女性ではない。頭を使った捜査や調査も、卒なくこなす聡明さも持ち合わせている。どこかの借金男とは違うのだ。


「他に見落としがないか、もう少し調べてから戻りましょう」


「ああ、分かった」


 それからも暫くの間、ズーク達は周辺の捜索を続けた。だがそれ以上の情報は得られず、今回の捜索は打ち切られた。

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