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金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第3章 ユニコーン×バイコーン×借金男
116/119

第116話 草原の異変

今日だけ夜更新です。次回からはいつもの時間です。

 ズークの休暇は終了し、再びギャレットファームの護衛役として戻って来た。

 ズークが居ない間も特に問題は起きていなかった。以前の騒動は何だったのかと、疑問に思う者が増えつつある。

 諦めて逃げたのではないか、そう思えてしまう心情は理解できなくもない。ただし犯人不明のまま、解決したと断言するわけにも行かない。

 爽やかな風が吹き抜ける草原で、牧場の運営を見守りつつズークはリーシュに声を掛けた。


「相変わらず平和な事で。良い事なんだけどな、本来なら」


 外見だけなら赤髪の美丈夫であるズークは、厩舎の壁に凭れ掛かる。背の高いズークが、腕を組みながらそうしていると様になる。


「本当にね。平和そのものよ。特にトラブルは無し」


 朝の日差しを受けて、リーシュの金髪が輝いている。今日も腰まであるポニーテールは艷やかだ。

 こうして2人が並んでいると、仕事の出来る最高位冒険者のコンビに見える。

 しかし悲しい事に、片方は馬鹿みたいな金額の債務を背負う男だ。せめて頭の出来さえまともなら、物凄く絵になる組み合わせだ。実際にはそうでないのが残念でならない。


「なぁ、どう思う? 諦めたと思うか?」


 現在護衛に回っている冒険者の内、3割ほどがその様に考えている。このままならば、更に増えて行く可能性は高い。


「……正直微妙ね。犯人達が利口なら、わざと間隔を空けている可能性もあるし」


 こう言った防衛戦では、根気良く耐え続けるメンタルが求められる。もう安全なのではないか?

 そう思わせて油断を誘うのは常套手段である。特に人対人の争い等では、良く使われる戦法の1つだ。

 ずっと気を張り続けるのは負担が大きく、緊張感を維持し続けるのは難しい。ズークやリーシュの様に、高位の冒険者なら可能だ。

 しかしCランクだと厳しいし、Bランクでもまちまちだ。長期に渡る防衛任務を任される、軍人や騎士とは根本的に違うからだ。


「王都の雰囲気もあまり良くない。早く解決したいんだがなぁ」


「ええ、このままというのもね……」


 狙いも分からず規模も不明、何やら怪しい連中が居るらしい。この中途半端な状況が、良くない空気を熟成させて行く。

 もしこれを狙ってやっているのなら、最早単なる賊ではなく軍事作戦の領域だろう。

 地域住民を不安にさせ、防衛側にジワジワと消耗を強いる。ただユニコーンやバイコーンを狙うだけの、そこらのチンピラに出来る事ではない。

 諦めて逃げたのであれば、小物だったという判断を下せるのだが。何とも言えない現状に、2人は悩まざるを得ない。そんな2人の元に、1つの伝令が届いた。


「2人とも! 大変だ! 西の草原にモンスターの集団が出たらしい! 今緊急で騎士団が対応中で、各牧場は警戒して欲しいと!」


 それなりに2人と面識のあるBランク冒険者が、慌てて今起きている状況を伝えた。ズークはリーシュの方を向き、指示を出しつつ動き出す。


「騎士団だけじゃキツイかも知れない。俺も現地に行って来る! ここは任せる!」


「分かったわ!」


 対モンスター戦は騎士団よりも、冒険者の方が向いている。

 どれぐらいの規模で現れたのか不明だが、ズークの様な高位冒険者が参戦するだけで大きく変わる。

 ズークは牧場を出ると、全速力で駆け出した。Sランク冒険者ともなると、単独で移動するなら自分の足で赴く方が速い。

 魔法も併用すれば馬よりも速く走破出来る。周囲への警戒を行いつつ、ズークは草原を駆けて行く。


「あそこか!」


 暫く走っていると、激しい戦闘音と怒号が聞こえて来た。そちらに向けて方向を変え、一気に距離を詰めて行く。

 前方には舞い上がる土埃と、複数のモンスターと対峙する騎士達が見えた。こう言った混戦状態に用いる、同士討ちや混乱を避ける方法がある。

 ズークは魔法で3色の閃光弾を上空に打ち上げた。その意味は冒険者が戦闘へ介入するという意思表示だ。

 ズークはモンスター達の後方に回り、背後から奇襲を掛けた。ただ暴れているだけの集団では、人類最高峰の魔法剣士を止められない。


「喰らえ!」


 ズークが得意とする魔法剣、使い勝手が良く威力も申し分ないライトニングエッジ。

 紫電を刀身に纏わせた一閃で、首を落とされたオークの体が地面に倒れた。

 立て続けにゴブリンを倒しコボルトを倒し、ズークの周囲はあっという間にモンスターの死体だらけになる。


(何だコイツら? 種族がバラバラなのに共闘しているのか?)


 王都の周辺には、複数のモンスターが混在する様な森等はない。それ故にモンスター達の大移動、所謂スタンピードなど発生しようがない。

 だと言うのに何故か、100匹近いモンスターが集団となって暴れている。まるで天賦の才と言われている、テイマーが操っているかの様に。


(これもまた牧場の件に絡むのか? 確証はまだないが、無関係とは思えないな)


 暴れているモンスター自体には、それ程強い個体は居ない。あくまでズーク基準では、という注釈は入るが。そんな集団を制圧するのに、長い時間を必要とはしなかった。

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