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金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第3章 ユニコーン×バイコーン×借金男
115/119

第115話 槍の名手とズーク

 ラドロンから得た情報を騎士団に提供する為、ズークは王都キャッシュの詰め所に向かっていた。

 今日も石畳が綺麗に敷かれた街中を、沢山の人々が歩いている。普段なら誰もが明るい表情を浮かべているのだが、現在は少し陰りが見られる。

 やはり牧場襲撃犯が捕まっていないのが原因か。普段からケイバに関わらない人でも、誰かが襲撃されたとなれば無関係ではなくなる。

 今のところはケイバ関係者しか被害に遭っていないが、いつか別の人々にも矛先が向かないか不安がっていた。


(ん〜あんまり良い空気じゃねーな)


 街中を歩いていたズークは、不安な気持ちを抱えた人々の空気を感じ取った。まだ深刻なレベルではないが、このまま続くのは良くないだろう。

 ラドロンの情報で何か進展すれば良いのだが、まだ何とも言えない状況だ。それはともかく、女性騎士のメアリーに差し入れを持って行く為、果物屋に寄ってフルーツの盛り合わせを購入する。


「まいどあり〜! また頼むよズークさん」


 店主の中年男性が、ズークからお金を受け取りお釣りを返す。


「ああ、また来るよ」


 まるでお得意様かの様に振る舞うズークだが、金のない男がまた来るとはまたおかしな事を言う。

 そもそも何処に買い物をする資金があったかと言えば、現在もまたエレナのヒモをしているからだ。

 朝から出掛ける際に、幾らかお金を貰っていた。囲っているハーレムメンバーから貰った金で、他所の女性に渡すプレゼントを購入する。

 シンプルにカスとしか言えない行為だ。しかしこの男にはそんな事は関係が無いのである。ズークは更に街中を移動して、騎士団の詰め所まで到着した。


 剣と盾を交差させたデザインの、ローン王国騎士団を象徴するエンブレムが大きく飾られている。

 真っ白な石造りのシンプルな2階建ての建物である。入り口に立っていた男性騎士に挨拶をして、ズークは中へと入って行く。

 冒険者と騎士団は何度も共闘をした仲であり、今更ズークを呼び止める騎士などいない。

 ほぼ顔パスで事務所に入ったズークは、お目当ての女性騎士が座る席まで行き足を止めた。


「やあメアリー、忙しそうだね」


 いつもの態度で、淡いグリーンの髪を短く纏めた女性に声を掛けた。


「ズーク殿、何か私に用事でしょうか?」


 少し小柄な体型だが、槍を持たせたらこの国1番とまで言われている武闘派な女性。目鼻立ちの整った綺麗な女性だ。

 可愛いと美しいの中間に居るような、不思議な魅力を感じさせる。目尻の下がった優しそうな印象を受けるが、この見た目で男性にも負けない屈強な騎士である。


「実は知り合いから、牧場絡みの情報を得てな」


 少し声を抑え気味に、ズークはメアリーへと話し掛ける。


「なんと! 本当ですか?」


 可愛らしい表情で驚いてみせたメアリーは、ズークへと確認を返す。どうやら本当らしいと判断したメアリーは、別室へとズークを連れていく。

 奥の部屋なら騎士しか入って来られないので、聞き耳を立てられる心配もない。


「それで、情報というのは?」


「ああ。どうも東のオーディナリ王国で、ユニコーンとバイコーンの価格が高騰しているらしい」


 オーディナリ王国とは、マネー大陸の中央より東にある普通の国である。どう形容するにしても、普通という言葉しか出て来ない平凡な国だ。

 特にこれと言って名産があるわけでもなく、有名な何かがあるわけでもない。


「……なるほど、その話は初耳ですね」


「今回の事件と関係あるかは、正直なんとも言えないけどさ」


 ズークは自分の考えと共に、ラドロンから貰った手紙を見せた。メアリーは暫く考え込み、ズークに確認を取る。


「この手紙、暫くお借りしても?」


「構わないよ。むしろ団長にも見せた方が良いだろうしな」


 じゃあ自分で持って行けよと言いたい所だ。騎士団長が女性であったなら、喜んで持って行っただろう事が容易に想像出来てしまう。本当に本能と下半身に正直な男だ。


「それにしても、オーディナリですか……少し遠いですね」


「そうなんだよな。うちの国まで狙いに来るかは微妙な距離だろ?」


 オーディナリ王国からローン王国までは、それなりに距離がある。思い切り阿漕な商売をするからこそ、遠方でやらかすというのは理に適ってはいるのだが。

 盗難や強奪を近隣でやれば、バレるまでがかなり早い。しかし遠い国でやるならば、発覚するまでの時間を稼ぎやすい。


「それはそれとして、はいコレ差し入れ」


「……ズーク殿、こういのは困りますよ」


 頻繁に何かをプレゼントするズークに、困った表情を見せるメアリー。律儀な性格の彼女は、贈り物を貰ったらちゃんと返す主義だ。

 だからこそこうして何度も物を貰ってしまうのは、どうにも慣れないしお返しにも悩まされる。


「別に見返りを求めてじゃないさ。応援とか労いとか、そんな感じだ」


「ですが……」


「良いから、これでも食べて頑張ってくれ」


 半ば押し付けるかの様に、フルーツの盛り合わせをメアリーに渡すズーク。少なくとも見返りを求めていないというのは、確実に方便だろう。

 何故ならこの赤髪の男にとって、メアリーは完全に恋愛対象だからだ。良い所を見せたいのなら、早く借金を全額返済しろと言う話だ。

 しかし残念ながら、この場にはカレンやファウンズ達がいない。ただ調子の良い事をつらつらと話すズークは、メアリーとのコミュニケーションを楽しんだ。

これから暫くの間、本作の更新を【火・木更新】に頻度を落とします。先に3章150話程度で完結させる予定のラブコメを、ある程度仕上げてしまいたいので。

またその代わりになるかは分かりませんが、人外お姉さん×ホラー×青春の新作を本日から投下していきます。

そちらはいつもの毎日更新で進めていく予定です。どうにもファンタジー路線があまり得意ではないらく、負担が結構大きいので一旦そうさせて下さい。

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