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金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第3章 ユニコーン×バイコーン×借金男
113/119

第113話 停滞感

 ズーク達が警戒しているギャレットファームでは、相変わらず何も起きていない。

 冒険者達がやって来てから20日が経つが、平和そのものである。ただし別の牧場では、出入りする商人が襲撃を受けるトラブルがあった。

 どこから情報を得ているのか、的確にルートを把握していたのは確定らしい。嘘の日時とルートを事前に流したにも関わらず、そちらには引っ掛からず本命を狙われた。


 そのわりに迎撃をすると深追いせず、あっさりと引いて行った。襲撃犯達は顔をマスクの様な物で隠しており、特定出来ない様にして来たのでそれ以上の情報は無かった。

 この情報が届いたのは今朝の話で、すぐに騎士団が周辺の調査を開始。しかし昼を回っても吉報は届いていない。

 さてどうしたものかと、ズークはリーシュと相談していた。オーウェンから応接室を借りて、現状分かっている情報を整理している。革張りのソファに座って向き合う2人は、難しい表情で唸っていた。


「相変わらず何がしたいのか分からん」


「邪魔がしたいだけ、にしては大掛かりよねぇ」


 嫌がらせ目的というなら、十分迷惑を掛けてはいる。牧場だけでなく、各方面が手を焼いているのだから大成功だ。

 それはもう盛大な嫌がらせだろう。ただそれにしては、やっている事があまりにも手が込んでいる。しかも偽の情報までしっかりと見抜いているのだから。


「昨日はケイバ場に脅迫状が届いたのでしょう? やっぱりケイバ全体に対する恨みなの?」


「うーん……まあ、可能性としては有り得るな」


 ケイバ業界そのものへの怨恨を疑い、騎士団は調査をする方針を取った。ローン王国内のケイバで大敗した者を中心に、周辺や最近の動向を探っている。

 起きている状況と辻褄が合う動機としては、一応筋が通ってはいる。そういった者達が徒党を組んで、というのは理解できなくもない。


「ただなぁ、それでここまでやるか?」


「よほど恨んでいたらまあ? 微妙なラインだけどね」


 ズークは負けてもギャンブルを恨まないし、まだまだ続けるつもりで居る。負けたからといって、暴れる者の気持ちが理解できない。

 そしてリーシュはそもそもギャンブルをやらない。仲間内のちょっとした賭けぐらいならやっても、賭場の類に自分から行く事はない。

 そんな2人からすると、あまりピンと来る動機ではなかった。もちろん絶対に無いとは言い切れないので、騎士団の方針に物を申すつもりはないけれど。


「何か別の理由な気がするんだよな。ただの勘だけどさ」


「例えば?」


 勘で話をしただけなので、具体例を聞かれるとズークも困ってしまう。少し考える素振りを見せ、思いついた内容をとりあえず話してみた。


「……何かの利権絡みで、ケイバ場が邪魔とか?」


「ケイバ場を無くしたいみたいな事?」


「そうそう、そういう感じ」


 ギャンブル関連の施設を、快く思わない人間も居る。教育によくないとか、騒音が激しい等の理由で。

 客層を問題視する者もおり、その言い分も分からなくはない。地域の治安が悪く思われる事もあるので、あまり歓迎しない不動産業者も居る。

 それらの理由から、というズークの想像も有り得ない話ではない。事実としてギャンブル関連施設を作る際には、周辺住民と揉め事になるケースがある。

 特に平民の中でも富裕層が集まる地域等は、強い反発を受ける傾向が強い。貴族街など以ての外で、上品な施設でないと受け入れて貰うのは難しい。


 特にケイバの様なギャンブルは、下品だと女性の貴族からは嫌われる傾向にある。

 若い女性がわざと下着の見える格好をするのだから、その様に言われてしまうのも仕方がないだろう。

 男性の貴族からはわりと好評だが、外聞が悪いのでお忍びで楽しむのが定番だ。その点を考えれば、女性の貴族達が王都からの排除を願う可能性はある。

 ただその場合であれば、正式に王宮へ申し出れば良い。わざわざ遠回りな事をするだろうか? という疑問はどうしても残る。


「とりあえず、一旦は騎士団の調査結果を待つしかないか? バックスのおっさんは何て?」


「特に何も見つからないって、さっき報告が来ていたわ」


 当初はすぐに解決しそうな雰囲気だったが、どうやらそう甘くはないらしい。

 やはり目的と動機が不透明という所が、調査を難航させている1番の理由だった。

 どんな事件でもそこさえ判明していれば、守るべき所や罠の仕掛けようもある。だが犯人像すら謎のままとなると、防衛側への負担は増すばかりだ。

 まだズークやリーシュには余裕があるものの、既にCランク冒険者からは弛んだ空気が出始めている。

 何も起きないのだから、油断や疲労が浸透するのも当然か。冒険者は城を守る門番や、王を守る騎士ではない。


 停滞した防衛任務など、つまらないと感じてしまう者もいる。それも仕方がないだろう、何故なら彼らは冒険する者達だ。

 守護を主な仕事とする人々の集まりではないのだから。合間に戦闘でも挟まればまた違うのだが、生憎と平和そのものだ。

 とは言えこれもまた依頼である事は変わりない。良くない流れを止める為に、ズークやリーシュが注意をしているが完璧とは言い難い。やや緊張感が崩れつつある状況で、時間だけは過ぎていく。

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