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金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第3章 ユニコーン×バイコーン×借金男
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第111話 牧場の防衛 初日

 さて各牧場で護衛と調査が始まったわけだが、そんなにすぐ馬脚を現す様な相手ではないらしい。

 ズークを始めとした有名な冒険者が関わる現状で、速攻下手な手を打つような存在ならここまでの事件に発展しない。

 1日目の夕方に、ズークとリーシュの護衛組は現状の擦り合わせを行う。


「なあ、そっちはどうだった?」


「こっちは特に収穫無いわねぇ」


 牧場の客室を借りて、報告会を行っていた。来客用の豪華なテーブルを挟み、豪華なソファに座って向かい合う。


「特に怪しい奴も居なかったなぁ。まあ初日だからだろうけど」


「むしろ今夜か、明日の早朝の方が何かあるかもね」


 何かを仕掛けるのであれば、日中よりも夜の方が発覚し難い。わざわざ丸見えの昼間に行動するよりも、闇夜に紛れた方が良いのは戦場でもそうだ。

 夜目の効くモンスターを相手にするのならともかく、今回は人対人の事件である。夜間は自分も見辛いというデメリットが一応は存在しているが。


「夜の担当者には、注意させるけど。果たして……」


 ズークとしては初日から大きな動きがあるとは思っていない。先行して騎士団の部隊が、王都近郊の大捜索を行っている。かなりの規模で捜索されたと聞いている。


「騎士団の方はどうだったのかしら?」


「あ〜何か、無関係らしい小悪党が捕まったと聞いたぞ。ただの野盗だって」


 別件で他国から逃げ延びて来た、強欲の螺旋に所属していた残党が捕まっていた。規模の大きい組織だけに、各地で残党の逮捕劇が行われている。

 今頃はアンナも少しは溜飲が下がった事だろう。しかしそれは今回の件と関連性がなく、事件の解決には程遠い。むしろややこしい時期に暴れ始めて、却って面倒なぐらいだ。


「根気良くやるしかないのでしょうね」


 溜息をつきつつ、リーシュが背凭れに体重を預ける。その動きに追随して、綺麗な金髪が揺れた。

 美人は何をしていても美しいと言うが、こうして悩ましい表情を見せるのもまた良さがある。

 戦闘だけでなく高い知性も持ち、人格にも恵まれた中身も伴う美がそこにはある。


「パパッと解決して、美味い酒が飲みてぇな」


 対して戦闘と見た目だけの男は、美とは程遠い位置にある。幾ら外見が良かろうとも、中身に問題があり過ぎる。

 容姿と中身が伴ってこそ、本物であると言えるだろう。室内が静まり返り、2人が紅茶を飲む音だけが流れていた。そこにバックスが現れて、日中の報告書を提示した。


「だよなぁ、そっちも空振りか」


「……」


 静かに頷くバックスは、声こそ出さないが悩む様な雰囲気を醸し出していた。

 初日の本命はバックス達の調査であり、何らかの糸口ぐらいは見つかる事を期待していた。

 だが斥候のプロ達が動いても、何も見つからない。それはつまり相手の方が、それなりのやり手であると言う事を意味する。

 ちょっと行き過ぎた連中が暴れただけ、それならどれだけ良かったか。


「俺、ちょっと知り合いに連絡してみるわ。情報通が居るからさ」


「ズーク、そんな知り合い居たの?」


「最近ちょっとね」


 ズークの言う情報通とは、裏レートマージャン大会で協力したロ・コレクトのラドロンの事だ。

 彼の組織に依頼すれば、何らかの組織が動いているか分かるだろう。素人の犯行という線が薄まっていく以上は、早い段階で動いておく方が良いだろうとの判断だ。

 そんな頭がお前にもあったのかと、ファウンズがここに居れば思っただろう。


「さて、飯食って仮眠したら夜の部と行きますか」


「ええ。そうしましょう」


 それぞれ指揮する部隊を動かす以上は、いつでもすぐ動ける様に備える必要がある。食べられる時に食べ、眠れる時にしっかり寝る。

 それが冒険者の基本であり、高位の冒険者ほどスムーズだ。3人はギャレットファームの食堂へ移動し、食事を取る事にした。


「あら、ズークさん達。お疲れ様です」


「リエラさん、レーナちゃん」


 淡い青髪の麗しい40代の女性が、10代半ばの少女を連れて食堂に来た所にズーク達は遭遇した。

 関係者との顔合わせの際に、全員と挨拶をしているので初対面ではない。レーナなんて背が高くて絹の様に綺麗な金髪を持つリーシュに、早速懐いて仲良くなっていた。


「リーシュさん! 一緒に食べませんか?」


「構わないわよ、一緒に座ろうか」


「あらあら、すいませんね」


 元の村では厄介者の腫れ物扱いだったレーナは、沢山の冒険者達が来ている現状を喜んでいる。

 田舎者らしい言動をとるレーナを、冒険者達は微笑ましく見守っている。特に警護を担当する女性冒険者達は、妹を見るかの様に接している。

 だからこそ仕事にも熱が入るし、彼女達の士気は滅茶苦茶高い。初日からお説教をされてしまった男性陣とは、雲泥の差である。

 もちろんそれを理由にミスをしようものなら、恥の上塗りになるので当然彼らは気をつけている。

 ただ気分的に良いかと言われたら、微妙な気持ちになるのは仕方ない。男女で明暗がハッキリと分かれた初日については、その様な形で進行して行った。特にこれと言って大きな問題は起きなかった。

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