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金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第3章 ユニコーン×バイコーン×借金男
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第109話 見えない目的

 依頼を受けたズークは、再びギャレットファームを訪れていた。

 ファウンズ支部長からもある程度の事情は聴いているが、当事者から直接話を聴いた方が確実で勘違いも起きにくい。

 元々ギルドでの説明は、触りだけに留められる場合が殆どである。直接依頼者から詳しい事情を聴いておくのは、冒険者として常識である。

 幾らズークがおバカだとしても、そんな当たり前の事ぐらいはやる。


「オーウェンさん、何があったんだ?」


 行動はおバカだが、戦闘では無類の強さを誇る赤毛の美丈夫が、熊のように大柄な中年男性に問い掛ける。


「どうやら他の同業者も、数々の妨害行為を受けたみたいで」


「実例を全部教えて貰えるかな?」


 大好きなケイバに絡む事件なだけに、ズークはかなり積極的に動いている。尋ねられたオーウェンが、実際に受けた被害を挙げていく。


「餌を運ぶ業者への襲撃に、藁を売りに来る商人に向けた火炎瓶の投擲、それから君も知っている仲介業者への襲撃行為」


 冒険者ギルドで聴いた以上の様々な被害が、王都周辺の牧場で起きていたらしい。

 更にオーウェンの説明が進み、冒険者ギルドでも出た井戸への毒物の混入や、肉食の小型モンスターを近所に放つ行為まで判明している。

 多種多様な妨害や嫌がらせが行われていた。合計で20を超える被害が出ており、怪我をした関係者も出ている。

 最も酷い人的被害としては、火炎瓶を投げかけられた商人だろう。命こそ助かったものの、大火傷を負ってしまい全治3カ月の入院生活を余儀なくされた。現状を詳しく聴いたズークは、思わず呟いた。


「思った以上に酷いな」


 純粋な物的被害だけでも、数千万円ゼニーという大規模な被害が出ていた。これだけの被害ともあれば、噂が広まるのも早いだろう。

 新聞記者達が知れば記事にもする。そうなると王都の住民達も、この件を知る事になる。だからこそ王宮も、素早い対応を取ったのかとズークは理解した。


「こんな事、今までにも?」


「まさか、そんな筈ありませんよ。今回が初めてです」


 突然起きた大事件に、オーウェンも困惑していた。騎手に対する付きまとい行為や、ユニコーン達を狙った盗人ならたまにある。

 しかしこんな複数の妨害が、複数箇所で起きた事なんてこれまでに無い。儲けている事を妬み、オーウェンや関係する商人への些細な嫌がらせがせいぜいだ。


「そもそも何がしたいんだ? 牧場に対する恨み? でも恨む理由なんてあるのか?」


「私達は周辺に気を遣っています。恨まれるようなトラブルは何も」


 あまりの酷さにズークは怨恨を疑ったが、オーウェンにはその心当たりがない。儲けの為に誰かを陥れたり、卑怯な取引を行ったりしていない。

 ケイバ場との癒着や裏金なども一切無い、非常にクリーンな経営を続けている。


「そりゃあギャンブルが絡みますから、そういう意味では誰かに恨まれるかも知れませんが……」


 オーウェンとて、それぐらいは覚悟を持っている。もし自分の牧場で育てたユニコーンかバイコーンに賭け、大損をしたという人物なら恨む可能性はある。しかしそれならギャレットファームだけを狙う筈。


「どう見ても金銭目的ではないからなぁ。以前に来た時とは被害の内容が違い過ぎる」


 前回はあくまで、ユニコーンやバイコーンの強奪を狙ったと思われていた。あくまでガンツ達仲介業者が襲われただけだった。

 あの時は盗む意図が明確に示されていた。だがいざ蓋をあけてみれば、この通り明らかに金銭を目的としない妨害が多い。

 井戸に毒物なんて、ユニコーンやバイコーンが死ぬかも知れない。奪って売却を狙う目的とは対極の位置にある行動だ。

 眠らせる為、というならまだ分かるがそれなら使うのは睡眠薬だ。犯人達の目的があまりにも不透明で、ズークとオーウェンは理解に苦しむ。


「ケイバ場にも妨害が行っていたりは?」


 ケイバ全体への妨害行為である可能性を考慮してズークは問う。だがしかし。


「牧場主全員で確認しましたが、特に来ていませんでした」


 ケイバで大損をした者達の犯行、という可能性もこれで薄れた。ゼロになった訳では無いが、ケイバ場には何も被害が無いのであれば動機としては弱い。

 目的や動機が不明だというのは、防衛を任される側としては辛い。ただユニコーンを強奪したいだけなら、ガンツ達と厩舎を守るだけで良い。

 しかし何がしたいか分からない場合、あらゆる可能性を考えねばならない。現状では非常にやり難いとしか言えない。


「他の冒険者も交えてやり方を決めないと、どうにもならないな」


「今日中には全員揃うとギルドから連絡を貰っておりますので、そろそろ来られるのではないかと」


 真っ先にやって来たズークが1番乗りだったので、依頼を受けた冒険者がまだ揃っていない。準備なんて特に必要がないからこその、単身身軽な動きが出来た。

 ただそれをメリットと見るべきか、一文無し故と呆れるべきか。ともあれ事態は動き出し、問題を解決まで導かねばならない。

 ズークとオーウェンは色々と話し合いながら、防衛を行う冒険者達が揃うのを待った。

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