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金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第3章 ユニコーン×バイコーン×借金男
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第108話 牧場からの依頼

中途半端ではありますが、ここから文体というか文章の構成を以前とは変えています。

時間は掛かると思いますが、他の作品もこうして表現を変えていくつもりです。

WEB小説はこう書けみたいな話に、少し引っ張れ過ぎていた気がするので。

 1週間かけて真面目に働いたズークは、600万ゼニーをどうにか稼いだ。運良く珍しいモンスターに遭遇出来た事がプラスに作用した。買い取り相場がガクッと落ちている状況で、これだけ稼げたのは僥倖と言えた。冒険者ギルドの受付にて、ズークは今日もカレンから小言を言われていた。


「ほら、アンタだってちゃんとやれば出来るんじゃないの」


「俺いつもちゃんとやってるでしょ?」


 寝言は寝て言えという話だが、全くそのままの事をズークはカレンに言われてしまった。当たり前の話である。普段から真面目にやっている人間であれば、10億なんて借金は作らない。思わぬ事故や災害に遭ったのならともかく、ただ豪遊して回っただけである。それのどこが『ちゃんとしている』に相当する行動なのか。


「それよりさ、例の依頼って来てる?」


「ああ、来ているわよ。内容が内容だから、ファウンズ支部長の所で聞いてきなさい。今ならまだ執務室に居る筈だから」


 どうやら予定通り来たらしい、牧場関係者からの指名依頼。内容は支部長の執務室で聞けという事は、あまり表だって話せる依頼ではないのだろう。そういう依頼は大抵の場合、ファウンズ支部長から直接聞かされる。まあズークの場合は、借金の事を隠し通す為の行動である可能性も否定出来ないが。


「じゃあちょっと言って来る」


「いつも言っているけど、失礼のないようにね」


 事あるごとに失言をかまし、怒らるまでが定番の流れだ。戦闘力だけは一流でも、頭の出来は三流以下の男なので仕方ない。戦闘とギャンブル以外では、学習能力がまともに作用しない不良品なのだ。ちゃんとした学習能力と常識を身に着けて欲しい所だが、20歳を過ぎてこれでは望み薄か。ポンコツSランクは嬉しそうに2階に上がり、ファウンズ支部長の執務室に入った。


「ノックをせんかバカモノ!」


「あ、ごめん。でさぁ、依頼なんだけど」


 意気揚々と入ってきた浮かれポンチに、支部長の叱責が早速入る。あまりの軽率さに頭痛が痛いと言いたくなる様な表情で、ファウンズはこめかみを抑えている。


「はぁ…………座れ」


 何かを諦めた様な声音でファウンズが促し、ズークが応接用のソファに座る。丁寧にお手入れがされた革製の座面は、高級ホテルのベッドにも匹敵する柔らかさで沈み込む。ファウンズ拘りの一品だが、ズークにはその価値が分からない。本当ならこう言った高級品を買い揃えて、大きな豪邸でズークも暮らせていた筈だ。しかし遊び回って来たせいで、そんな未来は訪れなかった。自業自得でしかないが、なんともまあ情けない話である。


「それで、内容は?」


「ギャレットファームとその周囲にある牧場の護衛と調査を頼みたい」


 自分の机からズークの対面へと移動したファウンズが、1枚の依頼書を取り出しズークへと手渡した。ズークが座るソファと同様の物に座ったファウンズが、テーブルの上で腕を組みながら説明を始めた。どうやら結構な大事に発展している様子だ。


「どうも牧場に対する妨害行為が数件起きているらしい。犯人の正体はまだ不明だ」


「なるほど、そいつらをとっ捕まえろと」


 あれからオーウェン達牧場オーナー達が会合をし、それぞれの被害を報告し合った。ギャレットファームの周辺には同じ様な牧場が幾つかあり、その全てで何らかの妨害行為を受けていた。実害は出ずに済んだものの、井戸に毒物をいれらるという被害も起きている。仲介業者への襲撃も、複数件報告があったようだ。既に国の方でも、キャッシュの街周辺に盗賊団の様な存在が居ないか確認中だそう。


「先日捕まった強欲の螺旋に関係する者達にも、尋問が行われたが下っ端過ぎて殆ど何も知らなかった。それに壊滅した組織に出来る範疇を超えている」


「やっぱり別の組織が?」


「恐らくはそうだろう」


 この件は国と連携して行われる調査と護衛の依頼となった。大規模な捜索活動は騎士団が担い、直接牧場を守るのは冒険者達の担当だ。怪しげな者を見つけたら、即捕縛する許可が国から既に出ている。普段は罪状が確定していない者に対する逮捕権は、ズーク達冒険者にはない。盗賊行為などの現行犯の場合なら、話は変わって来るのだが。その範囲を超えた形で、今回のみは逮捕権を行使出来る。


「へぇ、国王も動いたのか」


「王都の周辺で襲撃事件を起こされてはな。治安が悪いと、諸外国に思われたくはないだろう」


 最初は自分の好きなケイバ絡みだからと、半ば個人的な理由から絡むつもりだった。しかし事は結構な規模の話になり、ズークは認識を改めた。つい先日までも、カーロ共和国で沢山の裏社会に潜む組織達を見て来た。そう言った何かが、絡んでいるのかも知れない。


「俺以外にも参加するって事で良いのか?」


「そうだ。複数箇所を守らねばならん。お前の依頼は指名依頼でもあるから、ギャレットファームに行って貰う」


 期限は解決するまでと、かなり長丁場になりそうな依頼である。当初ズークが思っていた以上に、何かが起きそうな空気が漂い始めていた。

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