第1話 そりゃあ追放されるだろ
この作品にキャッチコピーを付けるなら、『この主人公をカッコイイと思ったら負け』です。
追放モノで良く突っ込まれている要素を大体クリアした作品は果たして受けるのか? と思って書いてみました。
アホでカスな主人公が、アホでカスな毎日を送る物語です。
夜寝る前にお酒でも飲みながら「こいつアホで草」って笑いながらゆるーく読める物として楽しんで頂ければ幸いです。
基本ギャグとおふざけ、たまに真面目にファンタジー、稀にシリアスって構成でやって行きます。
※本作にはBSSとNTRをする方の描写が稀に入ります。苦手な方はご注意ください。
とある剣と魔法のファンタジー世界がある。この世界には複数の大陸と広大な海が存在していた。
そこでは様々な種族とモンスター達が生活している。この世界にある大きな大陸の内の1つに、マネーと呼ばれる大陸があった。
この大陸では基本的に、人族と呼ばれる種族が最も多く暮らしている大陸だ。長い歴史を持つこの大陸は5千年以上の歴史を誇る。
マネー大陸の中でも特に発展した国であるローン王国。
その王都であるキャッシュの街にある豪華なホテルの一室で、1人の男が革張りの高価なソファーに堂々と座っている。
鮮やかな逆立つ赤髪を短く切り揃えた、金色の瞳を持つ美丈夫だ。鼻筋の通った美しい顔立ちで、体格にも恵まれ厚い胸板を持つ。
かと言って巨漢という訳ではなく、引き締まったバランスの良い体つきだ。背丈は180センチ程と高めであり、金色の刺繍が入った立派な青のサーコートがよく似合っていた。
所々に豪奢な装飾がされた白銀の鎧を来た、この青年の名はズーク・オーウィング。
彼は2年前に22歳という若さでSランクという冒険者の最高位にまで上り詰めた若き英雄であり、その優れた容姿と確かな実績から女性からの人気は非常に高い。
今も両隣に美しい女性達を侍らせていた。Sランクとして華々しい活躍を見せて来た彼は今、パーティメンバー達から責められていた。
「ズーク!! いい加減にしろ!」
「おいおい、何をそんなに怒っているんだよ? 悪いねお姉さん達、また後で」
「えぇ~~待ってるから早く来てね」
怒り心頭で叫ぶパーティメンバーの様子を見て、ズークは女性達を一旦帰らせる事にした。
ズークに向けて厳しい視線を向けているのは3人の男性達だ。ど真ん中に立つのは巨漢の戦士、このパーティで盾役をこなして来たオルクという男だ。
ズークから見て左に居るのは斥候役である盗賊のジャン。その反対にいるのは魔導士で範囲魔法が得意なマージだ。
彼らはこのパーティ結成初期から、ずっと一緒にやって来た仲間たちだ。3人共20代後半で、ズークよりは少し年上だ。
「これを見ろ! 何だこの1000万ゼニーなんて大金の請求は!?」
「うーん、あぁ~~? ……何だっけなぁ? 高級酒を娼館で飲み明かした時のやつか? いや、カジノだったか?」
「もういい加減にしてくれ! エレナを引退させた事だってそうだ!」
このパーティには数日前まで聖属性魔法の使い手で、神官をやっているエレナという女性が居た。
モテる上に女癖が悪いズークは、女性がパーティに入ると必ず手を出しては子供が出来てしまい引退させて来た。
そのせいで頻繫に欠けた枠を募集せねばならなくなる。特に後衛職は女性に人気の職業であり、募集すれば大体は女性冒険者が来る。
何よりズークが所属するパーティ『銀翼の風』は非常に人気が高く、募集を出せば多くの女性達が殺到する。
「エレナも魅力的な女性だよなぁ。そろそろ会いに行かないとな」
「そういう話じゃねぇんだよ! 子供が出来ちまった以上は、生活費を保証してやらねばならんのだ! 分かっているのか!?」
「そんなの稼いで来れば良いだけだろう?」
200年程前に、女性を妊娠させたパーティ又は冒険者個人に対する決まりが出来た。
その相手と結婚するしないに関わらず、生活費を保証せねばならないというルールだ。
この決まりが出来るまでは好き放題だった為に、路頭に迷う母親達が後を絶たなかった。
冒険者という職業が出来てから長い歴史を持つが、長年に渡り放置されて来た。それを問題視したとあるギルドマスターが、その様なルールを作り妊娠した女性の生活を保証して来た。
当然このパーティもそのルールには従わねばならず、有無を言わさずパーティの口座からズークが孕ませた女性達に支払われる。
問題はその人数の多さにあった。今話題に出ていたエレナという女性で、記念すべき20人目である。
「俺達はお前の女達の為に働いているんじゃねぇよ!!」
「Sランクパーティでいられるのは俺が居るからだろ? お前らにも恩恵はあるじゃないか」
「それを差し引いても割に合わねぇんだよ! Aランクに落ちようが構わん! もう今日限りで出て行ってくれ!」
このパーティ『銀翼の風』がSランクであるのは、ズークの存在が大きい。彼の圧倒的な実力があったからこそ、これまでやって来られた。
パーティのランクは、最も高いランクを持つメンバーのモノが基準となっている。このパーティでSランクなのはズークだけ。
もしズークを追放してしまえば、残ったメンバーが全員Aランクである為パーティのランクは落ちてしまう。
だがオルク達はもう我慢の限界を迎えていた。確かにSランクパーティに所属するメリットは大きい。
貴族だけでなく王族からの覚えも良く、高額な指名依頼を受ける事も多い。だがその立場を捨てても構わないと思う程に、彼らはもう嫌気が差していた。
Aランクでも冒険者としては十分な地位であり、ズークが居なくても生活して行く事は出来るのだ。
「ズーク、お前は変わっちまったよ。今のお前は、何の為に冒険者をやっている?」
「仇なら討っただろう。やる事はやった」
「…………そうかよ」
彼らはとある強力なモンスターに、家族や友人等の大切な人を奪われた者達が集まって出来たパーティだった。
国の軍隊や兵士の仕事は、あくまで治安維持や自国の守護が目的だ。どこに居るかも分からない、危険なモンスターを探し出して討伐する事まではやってくれない。
対して冒険者とはその名の通り、世界中を旅しつつ国が対処しきれないモンスターの討伐等で報酬を得る者達だ。
だから彼らは冒険者になった。そして仇のモンスターを探し当て討伐した。それからだろうか、ズークの行動に変化が生まれたのは。
人類最高峰の力を得たが、今では目的を失っていた。
「お前とはもう組めねぇよ! 出て行け!」
「なんだよ、デカい声で叫びやがって」
ホテルの部屋を追いだされたズークは、仕方なくパーティを出て行く事にした。
国からオーウィングの姓と、1代限りとは言え爵位を与えられた程の英雄がパーティから追い出されてしまった。
ズークは1人でも十分戦えるので、ソロになったからと戦闘で困る事はない。
今やSランクとなり、戦闘においては出来ない事が殆どないズークには何の問題も無かった。
そう、戦闘に関してだけは。お金の管理なんてまともにやった事がないズークは、支出入の計算などまともに出来ない。
そんな彼が今まで通りの生活をすればどうなるかなど、想像するまでも無かった。
主人公の名前ですが
ズーク→クズ
オーウィング→英語のowingから取っており、意味は借金です。
つまり主人公はクズ借金君です。
名称にお金関係の単語が使われている場合は大体ネタキャラ枠です。
あとこの作品の世界観ですが、地球人が現代知識無双を散々やりまくった後のナーロッパをテーマにしています。
所謂なろう系のその後、みたいな世界として書いています。
今より30分おきに、本日中に4万文字分ほど投稿して行きます。16時半に投稿分が全てアップされます。
あれでしたら注目度ランキング1位を先日取った『ヤニカスで酒カスで限界配信者なお姉さん(31)は好きですか?』というラブコメでも先に読みながら待って頂くのもありかなと思います。こちらは超真面目に書いています。(露骨な宣伝)
それではもしこの作品を面白いと思って頂けたなら、最後までお付き合い下さい!
これからよろしくお願いします!