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姉の運命を変える予定でしたが 〜死に戻った姉と転生した弟〜  作者: こまつり


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お兄ちゃん、です


 

 ところ変わって、おそらくどこかのお屋敷の地下。

 

 先に連れてこられた僕は手足に鎖をつけられて牢屋の中です。こんばんは。

 

 あの子はどこか他の場所に連れて行かれてしまったので話し相手もいません。

 近くから啜り泣く声とかも聞こえはするんだけど、話しかけたりしたら棍棒が飛んでくるみたいなので必死に下を向いてます。

 

 何度か扉の開け閉めをする音や……悲鳴と殴打する音も……聞こえたので、人身売買はここで行われているのかな……。

 

 鎖の音が、近づいてくるな。

 

 僕の番なのかな?

 

 扉が開くのに覚悟をしようとしていたら、開いた扉から誰かが押し込まれて、扉はまた閉まる。

 

「あ……」

「やあ、お兄ちゃんです、よろしく」

 

 綺麗な服に着替えさせられて、髪も乱雑ながら部屋であった時よりは綺麗になっている。

 

「銀髪だから兄弟ってことで売るんだって」

「せっかく今日まで生き延びたってのに、お前がきたせいで何もかもおしまいだ」

 

 

 ここに連れて来られる前、『助けてもらえると思うよ』って話はしたのにそこから少年のこちらを見る目はどんどん冷たさを増している。

 恨みがましく声をかけてくるけど、僕はまだ正直『商品である』とか『売られる』という実感がない。

 絶対にみんな探してくれているし、ここがどこかはわからないけどまだ国を出てはいないだろう、という妙な確信があった。

 

 

 何せ荷馬車で一日二日だ。僕の領地まで行くのに馬車でかかった時間より短い。

 

 

 薄暗い中でとりあえず整えられた少年の姿を観察する。

 

 銀髪、整った容姿、瞳の色はおそらく……彼があのキャラなら赤いはず。

 薄暗いため茶色っぽいように感じるけど。

 

「じゃあお兄ちゃん、別の名前になる前に、名前を聞いてもいい?」

「聞いてどうするんだよ」

 

 フイと下を向いてしまったけれど、僕が待っているので渋々彼はもう一度口を開いてくれた。

 

「家では……ジュノって呼ばれてた」

 

 

 当たりだ! 彼が男爵家の子だし、攻略対象キャラの大魔導師だ!

 

 つまり僕が何かしなくても彼はもともとここから抜け出した可能性はあるかもってことになってしまうんだけど。

 それは僕がきたことで変わってしまった可能性だってあるんだから、一緒に逃げて悪いことは起きないだろう。

 

 

「僕はヴィクス。……アルセン侯爵の長男。だから、たぶんみんな探してくれてるはずなんだ」

「侯爵様の……!」

 じり……とジュノが後ずさる。

 家では聞いたことがなくても、この歳になっていればどこかでうちのことを聞いたことがあるのかもしれない。

 

 ……後ずさるほどの噂って何なのか気になるけど。

 なんか顔も青ざめてる気がする。

 

「よろしくね、ジュノお兄ちゃん」

 

 まるで毛虫でも見るような顔をしただけで、答えはなかった。

 

 

 

 次々に扉を開ける音が近づいてくる。

 次こそ僕たちの番か、と思うたび違う扉の開く音がして、流石に怖くなってきていたのは事実だ。

 彼の名前を聞いて、少しでも安心したかったのかもしれない。

 一方的にとはいえ、知ってる人がいるということは安心できるから。

 

 

 

 

「あと、どれくらいかな」

 

 もはや「さっさとしてくれ」の気分になりつつあるのだけど、それでも怖いものは怖い。

 

「知らない。俺が知ってるのはこの屋敷まで来たら誰も戻って来なかったことだけ。俺もきたのは初めてだけど」

 

 つまり、もうおしまいだと彼は皮肉っぽく笑う。

 

「まあ、どこかに買われることになっても、助けは来ると思うよ」

「追跡魔法、持ってるからか」

「そゆこと」

 

 まぁ……あっさり誘拐されてしまった僕が悪いんだけど、あまりにあっさり捕まった上、移動中に助け出されることもなかった。

 

 僕には追跡魔法がかかっているというのに……である。

 

 

 となると『いっそのこと一網打尽にしてしまおうか』と考えていて欲しいな、というのが僕の個人的な期待。

 それから外のことが全くわからないまま移動してきているけれど、ここはまだ国内、ルートによっては『首都の郊外』程度の場所の可能性が高い。

 僕に付けられた追跡魔法は『遠くに行くほど』位置を特定しやすくなる。離れるだけ僕の居場所は見つけやすくなるのだから、助けも来るはず。と、いうこと。

 一目散に突撃できるほどは、離れていないということのはずだ。

 

 

「ジュノお兄ちゃんも、一緒に帰ろうね」

「…………」

「男爵様、ずっと探してるよ」

「……そんなはずない」

「なんで? 僕が聞いた話と違うね」

 

 励まし合って耐える場面かと思ったのに……ちょっと拍子抜けしてしまう。

 

「父上が俺を探すはずないんだ」

 

「仲……悪いの?」

「この肌見てわからないのか」

「ちょっぴり色黒だね」

 

 将来的には健康的で色っぽい褐色肌になるよ。女の子に大人気に。

 

「母上の先祖に遊牧民が居た。そのせいで俺だけこの色だ。父上は母上を信じてない」

「あー……」

 

 よくある『無実の不貞を疑われる妻とその子』のやつだったか。

 じゃあ国外まで捜索を、ってもしかしてお母さんの方が探してるのかな……?

 

 

 でも……僕の聞いた話と……違う……のだけど。

 

 ジュノが拐われたあと、男爵家にはもう一人子どもが生まれている。それなのに男爵様の方がむしろ周囲の人が諌めるのも聞かずに国外に捜索を広げた。だから国内の捜索が手薄になって『次の子が生まれたから捜索をやめた』『諦めたんだろう』という噂になったんだと聞いたのに。

 

 そのあらましを、教えようと口を開いた瞬間、扉に近づいてくる鍵束の音。

 

 聞こえる音は靴音と鍵束の音だけになった。

 


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