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姉の運命を変える予定でしたが 〜死に戻った姉と転生した弟〜  作者: こまつり


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魔法とは


 

 洗ってもらったとはいえ、べちょべちょになった服を着替えさせてもらって、父上がテントに僕を呼ぶ。

 

「お昼にしようか」

 

 本当は沼地の中の拠点で食べる予定だったお弁当を、テントで広げる。

 

「魔法を使う前に、魔力のお話をしておこうね」

「それも学校で習うお話ですか?」

「そうだよ。それまで待ちたい?」

「父上が……教えてくれるんじゃないの?」

 

 にっこり笑って、父上が指を二本立てる。

 

「私が教えるのは、『魔力ってどんなものか』と『どうやって使うか』だけだよ」

 

 立てた指を順に折って、父上は手を開く。

 

「それだけで、魔法は使えるの?」

「そう、それだけ。でもこの国でお父さんより魔法が強いのは、大公閣下だけなんだよ?」

 

 ……大公閣下、規格外すぎない?

 この国で一番強い人なのに……剣より魔法が得意とは。

 ドラゴンも倒せる、と言われるだけある魔法使い、って事なのかな。

 

「閣下は召喚獣を持ってるからねぇ」

 

 ——『召喚獣』なんてシステムあったか?

 

「閣下がドラゴンを召喚獣として使役してるから『ドラゴンを倒した』ってことになってるんだけどね」

 

 ……似たようなものではないかなぁ。

 というかそんなシステムあったら戦闘の時にヒロインが使っているはず。

 俺にその記憶はない。

 

 まさか……あちらのことも、覚えていたゲームの内容も忘れ始めてる?

 

 いや、聖女としてヒロインが覚醒するのは結構終盤だ。

 魔獣の大量発生、その主となった魔物の討伐で覚醒するイベントがある。

 その後召喚獣を従えるのなら、ゲーム内に出てきていなくてもおかしくはない、か……?

 

 もっとゲームの資料集を読むとか、真面目にやっておけばよかった。

 

「さ、食べようか?」

 

 サンドイッチやキッシュ、温め直したスープなどが並べられる。

 

「どうして、僕が魔法を使うのは危険なんですか?」

「魔法はね、使い方を知る前に使えてしまうことはあるよ。でも、そうすると『どんな魔法にどれくらいの魔力が必要か』がわからないままだ」

 

 指先に小さな火の玉を出して見せて、父上が少しずつその火を大きくする。

 

「そうすると『魔力暴走』といって『魔力を制御できないまま止められなくなる』や『大量の魔力を使った魔法で大きな被害が出る』なんてことになる」

 

 ぽん、と音を立てて火が消えると、父上はまた手を開いて見せた。

 

「今の魔法に、どれくらい魔力を使うか。自分の魔力を感知できるか。シャーロットが特別だったのはそういったことが理解できたからだよ」

 

 僕は少し考えて、尋ねてみる。

 

「魔力が感知できない人も、いるんですか」

「もちろん」

 

 父上の答えは、実に簡潔だった。

 

「魔法が使えない人はいる。魔力を持っていない人や、魔力が感知できなくて使いこなすことができない人がね」

 

 

 じゃあ、僕はきっとそのどちらかなのではないだろうか。

 そもそも『魔力のない世界』で生きてきたのだから。

 この体が魔力を持っていても……わからないから使いこなせない。

 

「ヴィクス、そんな顔をしなくていい。五歳で魔力を感知できるなんて普通はないんだよ。だからシャーロットは特別、って話をしただろう?」

 

 僕が悲観しているのが顔に出ていたらしい。

 父上がそっと頭を撫でて、言葉を続ける。

 

「十二歳までに魔力を感知できるようにならない時は、魔法が使えない可能性が高い。でも大人になってからわかるようになる人だっているんだよ?」

 

 そうだね、と少し考えて父上が人差し指を立てた。

 

「庭師のトマスがいるだろう? 彼が魔法を使えるようになったのは……うちの庭師になってからだよ」

 

 トマスは……確か火魔法が得意で、土とか水が得意だったら仕事が楽になったのにとよくボヤいている……。

 

「ね? 人それぞれタイミングがあるってことさ」


 

 そこまでで一度言葉を切って、僕に食事を促してから、父上もサンドイッチを手に取る。

 

「それでも、どうしてもすぐに魔法が使いたいなら教えてあげるよ。できるかどうかは、ヴィクス次第だけどね」

 

 父上は笑顔なのに、なんだかとても厳しい顔に見えた。

 

「……やります」

 

「じゃあ、時間を取らないといけないね。お城に行くのを週一回に減らしてその時間を当てても大丈夫?」

 

 それは……ローレンツが悲しむかもしれない、でも……やっておくべきだと思った。

 

 できることは、なんでも手を出しておかないと生き残れないかもしれない。

 姉上は、『キャラクター』だから大丈夫かも知れないけど、僕は『本来死んでいるキャラクター』ということのようだから。

 

 

『いい子』を目指した姉が馬車の前に飛び出しかけたように。

 

 

 ——今回の『主に喰われた』だってその可能性はあるのだから。

 

 

「……嫌、かな?」

 

 答えない僕に、父上が再度確認する。

 

「やります。ローレンツには……謝らないといけないけど」

「そうか。嬉しいなぁ、ヴィクスがやる気になってくれて」

 

 

 にっこり笑った父上の顔が、なんだか怖い。

 

 

「ではまず、魔力の感知だね」

「エッ、今から……?」

「時間のかかることだからね。練習しておかないと」

 

 父上がトントンと自分のこめかみあたりをつつく。

 

「お父さんの感覚としてはこの辺に意識を向けるとやりやすいかな。草木も、人も。基本的には魔力を持ってる。それを見るんだ」

 

 いや、それがわからないんですけど……!?

 

 


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