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姉の運命を変える予定でしたが 〜死に戻った姉と転生した弟〜  作者: こまつり


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遊び相手と友達と

 

 

 ヴィトリークも、剣の授業が始まったそうだ。

 ローレンツは人伝にそれを聞いたことが、少し残念だった。

 あれだけ楽しみにしていたのだから、本人から教えてもらえると思っていたのに。

 

「今日、聞いてみようかな」

 

 シャーロットとヴィトリークは毎日お城に遊びにきてくれる。

 ……本当は来たくないのだとしても。

 父上がそう命令しているんだ。

 だって、ヴィトリークにも僕たちのように『授業』があるはずなのに。

 その隙間を縫って毎日お城で何時間も過ごすなんて大変なはず。

 

『皇子の遊び相手』は名誉になるけど、その相手が『僕』では意味がないはずだから。


 図書室に借りた本を返し、兄上やシャーロットと待ち合わせた休憩室に向かう。

 

「こんにちは、第二皇子殿下」

 

 シャーロットが綺麗にお辞儀をして、僕に椅子をすすめる。

 兄上ももうソファに座っていた。

 相変わらずシャーロットは澄ました様子で、兄上の話に相槌を打っているけれど、兄上が投げる『釣り針』を見事に避けていて。

 僕にわからないだけで、おそらく兄上は普段からもっとたくさんシャーロットを試しているんだなと感じた。

 

 ——兄上は、心配性だから。

 

 何事も……全てにおいて『理解した上で手に入れたい』のだとずっと前に溢したことがある。

 

「わからないまま手元に置いておくのは不安じゃないか。せめて安全な使い方、自分が制御できるかどうかを確かめておきたいだろう」

 

 よく『失敗も必要な経験だ』と言うけれど、兄上は『失敗を試している』のだと僕は知っている。

 

「ヴィトリークは、大丈夫かしら?」

「礼儀作法のことなら心配いらないよ。あの子はとても頭がいいね」

 

 心配そうなシャーロットに笑って見せて、ヴィトリークもう学校に通うようになったら、ここでお話しできるのに、と残念になる。

 図書室で一緒に本を読むのもいいな、本が好きみたいだから。

 

 僕の授業が終わるのを待つ間、いつも本を読んでいると聞いている。

 僕の本棚の本を読んでいいと言ってあるけど、もう少し本を増やそうかな。

 ヴィトリークが好きな本が少ないといけないから。

 

 

 馬車に乗って城へ戻ると、車止めには僕の馬車が着いていた。

 ヴィトリークがもう来ているということ。

 

 兄上たちに挨拶をして、馬車を飛び降り応接室に走る。

 

「ヴィトリーク、お待たせ」

「皇国の星、第二皇子殿下にお目にかかります。こんにちは、殿下」

 しっかり挨拶をして、ヴィトリークがにっこり笑った。

 応接室で待っていてくれたヴィトリークは立ち上がって僕に手を差し出す。

 その手を取って、毎日部屋に戻る前に散歩する庭園にヴィトリークを案内しつつ、いつものように『部屋で待っていてくれてもいいのに』と促すけれど、ヴィトリークには『勝手にお部屋に入るなんてできない』と断られてしまう。

 ようやく手を繋ぐことを恐れ多いと断られなくなってきたところだもんね。

 

 もっと仲良くなれないかな。

 父上とアルセン侯くらい仲良くなりたいのに。

 

 

「ヴィトリーク、剣の授業が始まったんでしょう?」

「はい! とても楽しいです」

「どんなことを習ってる?」

「……今はまだ体力作りだけですけど……でもとても楽しいんですよ」

 

 まだそれほど難しいことは習えていないけれどとちょっと恥ずかしそうにしながら、それでも授業が始まったのは嬉しいとヴィトリークが笑って。

でも何故か、剣の先生については、何も話してくれない。

 

「いつか、殿下のお役に立てるほど強くなりたいですね」

「そんなこと言わなくていいよ。ヴィトリークが楽しんでいればきっと強くなれるんだから」

 

 ヴィトリークの言葉にムッとして言い返す。

 お世辞なんかいらない。

 頭のいいヴィトリークのことだから、きっとすぐにもっと先のことを習うようになる。

 僕の役に立てるなんてお世辞じゃなくて、兄上の……『皇帝陛下の右腕になります』と言ったって僕は応援するのに。

 


 僕の役に立ったってそれはせいぜい『近衛騎士団の精鋭になります』くらいでしかない。

 国を支えるというのならそれはとてもいい目標だとわかっているけど、ヴィトリークならもっと……強くなってほしいし、僕が皇家の騎士団を率いるようになるのならその上にだって立ってほしい。

 

 僕はそのうちどこかの領地をもらって、分家になる……皇家ではなくなるのだから。

 僕の元に居続けるなんて、考えなくていいのに。

 

 

 分家になっても皇位継承権を持ったままの大公閣下もいるけど……それは父上が望んでいるんだから仕方ないこと。

 そもそも『皇位継承権がない』僕とは違う話だ。

 

 

「殿下、また嫌なこと考えてます?」

 

 ヴィトリークが心配そうに声をかけてきて、ハッとすると、目の前にもう東屋があることに気がつく。

 いつもの散歩コース、ここで少し休憩してから部屋に戻る。

 

「ごめん……でも……」

「僕は殿下の遊び相手なんですよ? 殿下が楽しく過ごせないと意味がないです」

「ヴィトリークが大きくなったら、って考えてただけ」

 

 きっと、その頃には僕はどこかの領主になって、ヴィトリークは兄上の——皇帝陛下の——下で働いているだろう。

 

 もっとヴィトリークと仲良くなれないかな。

 

 大叔父様は、遊び相手だった政敵のドローレス先代当主と今でも仲良しだと聞く。

 僕も……もっとヴィトリークと仲良く、ずっとこうして友達でいたい。

 

 例えヴィトリークが兄上の騎士になっても……こうして散歩ができるくらい。


次回更新は6/11 6:00です

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