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二回戦 ダイジェスト



では二回戦の残り試合をダイジェストで送ります。



◇◇◇



第二試合


モンゴル代表 vs インド代表


世界制覇に最も近づいた超巨大国家、モンゴル帝国。その支配はユーラシア大陸全域に行き渡り、世界中を震撼させた。


農耕で土地に縛られ守るべき財産や家族を持つ人民や国家に対し、何物にも縛られず狩猟民族としての圧倒な武力で略奪を繰り返す蒼き狼どもが、徒党を組んで土地を、国家を、ありとあらゆる全てを要求してきたのだ。その恐怖は計り知れない。


現代を生きる我々にその善悪は問えない。後世の人間が中世の国家政策に対して倫理を問うのは卑劣な行為といえよう。なぜならそれは、生き残った者による後だしジャンケンであり、公平な評価に値しない。


ただそれは数千年に渡り農耕で文化・文明を発展させてきた民族にとって悪と断ずるに他ならない行為であり、また同時に数百万年の狩猟・採集生活を送ってきた人類にとって憧れを抱かざるを得ない英雄的でロマンチックな物語でもある。



モンゴル帝国の手はユーラシアを超える。



極東の島国、日本。二度にわたるモンゴル軍の襲撃を時の鎌倉幕府は退ける。元寇と呼ばれるそれは、モンゴル軍に尋常ならざる損害をもたらした。この戦争を要約すると、騎馬民族が支配地域の人民を掻き集め船に乗って日本を攻めたが、ほとんど上陸できず台風で全滅、である。


船では持ち味が生かせないモンゴル騎馬軍団に士気の低い支配地域軍、その他もろもろ死亡フラグが立ちすぎてるとはいえモンゴル陣営の戦死者10万人越えは後世にまで大きな影響を与え、以降全ての中国王朝に日本への侵攻を躊躇させる要因となるのだった。



しかし、モンゴル軍を追い払ったのは日本だけではない。

陸戦最強の彼らを正面から撃退した英雄的国家がある。

インドのデリー・スルターン朝である。


インド亜大陸を支配するデリー・スルターン朝はユーラシア大陸と陸続きであるため、当然のようにモンゴル帝国の侵攻をうけた。それは100年間に渡り、その苛烈さは想像に難くない。しかし数々の英雄が軍を率いモンゴル軍を撃退、インドを侵略者の手から守り抜いたのだった。


まあ、そのデリー・スルターン朝もヒンドゥー教徒を支配するイスラム国家なんだけどね。



閑話休題 (それはともかく) 料理対決の先攻はモンゴル代表・バルグジン。開会式の宣言通りタルタルステーキを選択するも、そもそもモンゴル料理では無い。タルタルのルーツとなるタタール人は、その多くが現在ロシア連邦に住んでおり、ロシア人に次ぐ人口を誇る。


しかし、モンゴルの伝統料理は貴族令嬢の料理対決に向いてなく、彼女としてもやむなき選択ではあった。されどインド代表の貴族令嬢・スジャータ相手では意味を成さない。なぜなら彼女は、全てをカレーにしてしまうのだから。


あえてフレンチの手法で正統派のタルタルステーキを出すバルグジンの料理も大変美味で審査員の評価も高かったのだが、片面を焼きつけクミンとガラムマサラを主軸としたスパイスで調理されたスジャータの料理はレベルが違った。カレーという料理はインドに存在しないとよく言われるが、彼女の解釈は違う。混合されたスパイスが産むインドの世界観がカレーなのだと。それは健康であり、快楽であり、幸福であると。


पतञ्जलि योगसूत्र


なにより審査員たちを驚かせたのは、スジャータの提供するそれが牛肉のタルタルステーキだったことである。ヒンドゥー教徒と思わしきインド人の彼女が牛肉を?審査員がそれを問うと、彼女は答えた。



「ओम्、だってその方が美味しかったんだもの」



恐るべしスジャータ。彼女は健康と快楽の為には禁忌も平気で踏み越える。敬虔なるヒンドゥーの信徒にして、暴虐たる神の奴隷にあらず。貴族として庶民の健康と快楽のため、そしてなによりこの世の真理を追究するため手段は問わない。


バルグジンは相手の恐ろしさを知り膝をつく。スジャータ、彼女こそ惨白き牝鹿の生まれ変わりに違いない。かつてモンゴルがインドに勝てなかったのは、スジャータの誕生する聖なる地だったからだ。


わけのわからないバルグジンの解釈はともかく、スジャータは微笑んで両手を合わせる。それは神々しく審査員たちはもちろん、観客席の貴族令嬢も一斉に手を合わせた。ノリの良いことである。インド代表・スジャータ三回戦進出。



◇◇◇



第三試合


ドイツ代表 vs ロシア代表


これがとんでもない試合となった。ロシア代表のアナスタシアはロマノフ王朝の生き残り。一族のルーツはドイツ・プロイセンにあるとも言われ、もともとドイツと縁のあるロシア王朝 (女皇帝エカチェリーナ1世と2世は生粋のドイツ人) だけにドイツ貴族のマルガレーテと仲良くするかと思いきや、これがまさかの大乱闘。


ロシアの老人はソビエト時代のプロパガンダが効いたかドイツ嫌いが多く、お爺ちゃん子だったアナシスタはナチス、ナチスとドイツ代表・マルガレーテを挑発。マルガレーテも、おまえら一族もソ連に滅ぼされたじゃねえかと言い返したもんだからさあ大変。アナシスタが掴みかかるもマルガレーテ、電撃戦の如くビンタを炸裂。


激昂するアナスタシアはマルガレータの後方に回り込み、彼女を持ち上げ投げ飛ばした。カレリンズ・リフトと呼ばれるこの技はマルガレーテを失神させ、地下闘技場はスターリングラード攻防戦を思わせる惨状となった。



「ウ―――ラ―――!!」



盛り上がる観客席。料理対決なのに失神KO勝ちという斬新な結果かと思わせたが、審査員協議の結果、先に挑発した上にカレリンズ・リフトはやりすぎだとの声が上がりアナスタシア失格、ドイツ代表・マルガレーテ三回戦進出。



◇◇◇



第四試合


イギリス代表 vs ローマ代表


イギリスが先攻、フィッシュ&チップスを選択。何も語ることはない。そもそも、イギリスが料理対決で一回戦を突破したことが奇跡なのだ。いかなる料理を選ぼうと、イタリア料理を背景にしたローマ代表に勝てるわけがない。奇跡の量でも相手はカトリック教会の本場であるローマ、離婚問題でカトリックを抜けて英国国教会を創ったヘンリ8世を恨むがいい。ローマ代表・マリア三回戦進出。




【 二回戦 結果発表 】



日本代表───────

          │──日本代表

中国代表───────


モンゴル代表─────

          │──インド代表

インド代表──────


ドイツ代表──────

          │──ドイツ代表

ロシア代表──────


イギリス代表─────

          │──ローマ代表

ローマ代表──────


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― 新着の感想 ―
インド令嬢、次にカレーを出してきそうな予感!(☆∀☆) 今日はオレンジジュース飲みます!(スジャータ)
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