Epilogue
【R】が用意した特別機でマリアは神戸空港を飛び立った。
機内でマリアは時折クスクスと思い出し笑いをしながら、書き換えられた過去と未来について考えを巡らせていた。
マリアは自らの出生を知っている。
作中で明かすつもりはなかったが、彼女は筆者である。
ゆえに不可解な奇跡も自由に行使できるのだ。黒い安息日など、筆者の理想とする人物像で描かれた登場人物に過ぎない。これは作品のプロット段階で決めていたマリアの正体である。
しかし、歴史は書き換えられた。
それは、人類存亡の回避だけではない。
マリアの未来、そして過去が書き換えられたのだ.。
「かぐつち・マナぱ」氏
「大浜 英彰」氏
ふたりの作家が別作品「ビルの上で The Dunwich Building」の主人公を憐れんだため、彼女の無残な未来が書き換えられマリアとリンクしたのだ。「彼女」もまた、筆者であり矛盾はない。
共に我ら、■■■■の子である。
ユダヤ・キリスト・イスラムの神は神聖にしてその名をみだりに出すことを禁じられている上に、発音できない言語で人類は呼称できない。エホバ、ヤハウェ、YHVH、全て仮称である。アラーは神を表す言葉で名前ではない。
マリア、彼女、筆者、三位一体の主人公であり
登場人物、筆者、読者の三位一体で世界は構築される
本作で頂いた膨大な数の「いいね」は生涯忘れない。筆者だけが知る読者の気持ち、正直評価ポイントより嬉しく誇らしい。ほんとうにありがとう、感謝します。
そんなマリアが
「彼女」が
これから不幸な人生を送るわけがないのだ。
◇◇◇
燃えている。
燃やされている。
冷たい瞳で揺らめく焔を見つめるスジャータ。
彼女はインドに帰り、隠匿された研究所を建物ごと焼き払った。香辛料の研究施設とされていた建築物が燃え落ちる様を、危険なため遠く離れた場所で職員とスジャータが見ていた。
焦げた違法薬物の匂いが漂う。
スジャータは人の心が見える。それは超常の力というより、ヨガの瞑想で得た洞察力によるものだった。彼女はマリアの正体に気付いていた。人ではないマリアの全てを見抜いていたわけではないが、世界の理を超える存在であり、料理大会と称して勝ち上がり、人類の代表に善と悪の彼岸を問うことは見えていた。
難題を押し付け人をからかうのが超常たる証。
スジャータは手段を選ぶつもりはなかった。マリアがカタストロフィーを選ばせないために薬物の使用も選択肢として持っていた。万が一敗北したときは、政府が保有するインドラの矢で周辺ごと焼き尽くす。それをもって人類の奇跡と罪の力を見せるつもりだった。
◇◇◇
「本省課長、官房長官が報告書の提出を……」
「わかっとるわ、ちょっとまたんかいな」
「いまどき書面でしか提出できないとはねえ……」
「まあ複製されて世に出たら大事やしな」
「補佐官も急かしてたんで、なる早で……」
「アイツも読みたいゆうてたな、ほな帰りに寄るか」
KIZOKU REIJOU FIGHTERS
2024
おわり。