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14/20

三回戦 ダイジェスト



では三回戦の残り試合をダイジェストで送ります。



◇◇◇



第三試合


ドイツ代表 vs ローマ代表


神聖ローマ帝国とローマ・バチカン市国、2つのローマを代表する貴族令嬢が闘技場に立った。


ローマとは何か。イタリアの首都であり、カトリックの総本山バチカン市国もローマ市内で独立国として所在する。しかし、ここで語るべきローマとは地理的な話ではない。


では改めて、ローマとは何か。ヨーロッパ文明の根源である。それを語るには本来ヘレニズム・ヘブライズム、ローマ帝国史から紐解くべきだが、浅学をひけらかすのは恥ずかしいのでやめておこう。めっちゃ長くなるし。


注釈)

ここではヘレニズムをギリシャ文化+オリエント文化、ヘブライズムをユダヤ・キリスト教文化と定義する。



ローマを文明の祖とするヨーロッパ。後に全土を席巻するゲルマン民族は、支配者としての根拠を示す必要があった。土地に根差した民族は神話を持って支配の根拠を示す。ヨーロッパを侵攻するゲルマン民族は、支配の根拠を宗教に求めた。キリスト教である。


信仰を持って侵攻を進めるゲルマン民族は、その支配根拠を示す為にキリスト教、つまりローマに権威を与え利用する。フランク王国が分裂してイタリア・西フランク (フランス)・東フランク (ドイツ) となってもローマの権威は奪わなかった。武家政権における天皇制と同じ構図である。



例を上げよう。



西暦950年、東フランクの王子オットー1世にイタリア王妃が救いを求める。王位簒奪を狙う貴族ベレンガーリオがイタリア王を毒殺、娘であるアデライーデ姫は貴族ベレンガーリオの息子との結婚を迫られ幽閉されていると。オットー1世は軍を率いてイタリアへ。無事姫を救い出し、オットー1世はアデライーデ姫を妻に迎えるのだった。


10年後、イタリアから再度の救援要請、今度はローマ教皇ヨハネス12世が貴族ベレンガーリオに迫害されているとのこと。オットー1世は軍を率いて貴族ベレンガーリオを捕縛し追放。オットー1世は教皇より帝位を授与、神聖ローマ帝国の始まりである。



か、か、か、かっこいい!



まあ教皇ヨハネス12世もアレな人だったり、オットー1世も事態が深刻化するまで10年も放置してたり、色々あるけどカッコいいのは間違いない。そもそもドイツ史はむちゃくちゃカッコいいのだ。プロイセンやドイツ騎士団も語りたいが超長くなるので我慢する。


話を戻そう。ヨーロッパにおいてローマは権力構造の重要な機関として存続し、時に十字軍など失敗も重ねながら宗教的かつ政治的、そして精神的に権威の象徴として今日に至る。前述したが天皇制との類似性は非常に高く、神聖ローマ帝国がオットー1世の時代から所持していたロンギヌスの槍などその最たるものである。西洋版「三種の神器」だ。


……ダメだ。オットー1世の話だけでも終わらない。涙をのんでしめよう。とにかくローマというのはすっごいの!ヨーロッパの象徴なの!以上!



◇◇◇



そんな……

そんな……


そんな、バカな!



ドイツ代表・マルガレーテは震えが止まらない。



ありえない!

ありえない!


そんな、ありえない!



観客席の貴族令嬢たちもわなわなと震えている。



先攻はローマ代表・マリア。彼女は再びパンを選択、ワインは未成年の貴族令嬢もいるので選ばなかった。従者のいないマリアは、手提げの籠から取り出したパンを、観客席にいる全ての貴族令嬢にひとつひとつ手渡した。時間はかかったが、観客は徐々に違和感を覚える。



全員分のパンが、あの小さな手提げの籠に?



全員分を配り終わると、マリアは呆然とする審査員たちにもパンを手渡した。我に返った審査員が恐る恐る口にする。フワリ。その白いパンほのかに甘く、味覚とは違う何かを刺激した。



とどめなく、流れる涙はそのままに、彼らは聞いた。



「シスター・マリア、このパンはいったい……」


「マナ (Manna) です」


「シスターがお作りになったのですか?」


「いいえ、■■■■がお作りになりまして……」



聞き間違いか、よく聞き取れなかったマリアの言葉。いや、むしろ聞いてはいけない言葉だと、本能が強く警告している。マリアは何かを思い出したかのように呟いた。



「あらいやだ、私ったら、みだりに名を語るだなんて」




観客席を飛び出すひとりの名も無き貴族令嬢。彼女はマリアの足に縋りつき、涙を流して叫んだ。



「シスター・マリアさま! 私の母国は戦争をしています! お願いします! 止めてください! これ以上人々を! 兵士を! 家族を! お救いください!」



とある貴族令嬢はよたよたと観客席を出て、マリアの前にひれ伏した。



「シスター・マリア、父が不治の病で伏せております、我が身は捧げますゆえ、どうかお助け下さい」



またひとり、またひとり、観客席を立つ令嬢たち。

シスター・マリアは彼女たちに答えた。



「誤解なさってますわ、私にそのような力はありません」



納得しない足元の貴族令嬢たち。

シスター・マリアかく答えたり。



「神に祈りを」



パンを自宅に持ち帰り、家宝として飾ろうとした令嬢も多くいた。しかしマリアのパンは、夜が明けると朽ち果てていた。



◇◇◇



ドイツ代表、戦意喪失。


ローマ代表、決勝戦進出。




【 三回戦 結果発表 】



日本代表───────

          │──日本代表

インド代表──────


ドイツ代表──────

          │──ローマ代表

ローマ代表──────


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― 新着の感想 ―
壁|ω`*)<なんか呼ばれた気がする〜?、もう成人してるのでパンとワインがほし…あ、下戸なので、やはりパンだけで…ドイツとローマって、むっちゃ長いですよね?
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