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三回戦 नमस्ते मुझे करी पसंद है みんな大好きカレーライス


三回戦 第一試合


インド・スジャータ vs 日本・黒い安息日


カレー料理対決



◇◇◇



どんがらがらがら……



巨大な鍋と山のような食材が阪神甲子園の地下闘技場に運ばれてくる。一か月の間、老執事にカレーの作り方を特訓された日本代表の貴族令嬢・黒い安息日が、必死で野菜の皮をむいている。おいおい、この人数分を今から作るつもりなのか!


包丁でタマネギを割って皮をむき、ピーラーでジャガイモの皮をむく。老執事が手伝っているとはいえ、横には手つかずのニンジンなどが未踏峰の山となってそびえ立つ。これぞカレー食材の狂気山脈、その山頂で待つのは古の邪神か。


使用人やシェフはどうした!なぜ手伝わない!時間が掛かりそうなので観客席の貴族令嬢たちは、スマホを開いて小説を読み始めた。


ほぼ毎話感想を書いてくれた、インド代表スジャータ推し「かぐつち・マナぱ」先生の作品を読んだり


日本代表・黒い安息日の知能指数と執事の黒さを見抜いた「しいな ここみ」先生の作品を読んだり


小説 [あの時代の残響] でジューダス・プリースト:Painkiller 衝撃の事実を筆者に知らしめた「菱屋千里」先生の作品を読んだり


日本シリーズの結果に涙をのんでクリームソーダを飲んでいるであろう「辻堂安古市」先生の作品を読んだり


いいね!を押してくれたり、評価してくれたりしてくださった温かい方々の作品を読んだりして彼女たちは日本代表・黒い安息日の料理を待つのだった。



◇◇◇



……遅い。



そりゃそうだ。観客を含めた人数分のカレーを、たった二人で作ろうと言うのだ。野菜の皮をむくだけで日が暮れてしまう。我慢しきれなくなった観客席の名も無き貴族令嬢が立ちあがった。



「待ってられないわ! 私も手伝いましてよ!」

「私も手伝いましてよ!」

「味見は私にお任せあれ!」

「いいからアンタは仕事を探せ!」



観客席から闘技場へ貴族令嬢たちがなだれ込んだ。次々と下準備がすすむ大人数分のカレー、前々作で追加された「人材の貸し出し」OKのルールにより反則行為とはならないが、もはやそんなことはどうでもよかった。


楽しいのだ。みんなでカレーを作ることが楽しくて仕方がないのだ。そして観客は楽しみたいのだ、そのために阪神電車にのって甲子園球場の地下闘技場に来ているのだから。そもそも勝敗なんて、観客が悲劇で泣くか喜劇で笑うか、クライマックスを盛り上げる要素に過ぎないのだから。


巨大なガス窯で浸水されたお米が炊かれていく。なお、使用されるのは無洗米。大量に炊飯する食堂やお弁当屋さん、食品工場や学校給食の炊事場では無洗米がデフォルト (定番・普通) 。時間短縮はもちろん衛生面・環境面からしても最適解であり、味も安定する。


米のとぎ方で味が変わるのは、主婦や自炊する方々ならご承知だろう。無洗米は微増する水分量を見誤らなければ、達人ならずとも名人の炊くご飯の味を保証してくれる。もし家族が文句を言うなら以後は毎食そいつに米を研がせて毎回文句を言ってやれ! ぬか臭い! とぎ過ぎて味がない! 一か月を待たず泣きを入れてくるだろう。



カレーのルーについても言及したい。



ネタバレになるがインド代表・スジャータのカレーはスパイスから作る本場インドのスパイスカレー、今回黒い安息日が作る日本のカレーは市販のルーを使用する。小麦と油脂で作られたルーは不健康だという主張もわからなくはないが、そこまで言うなら塩も砂糖も口にできなくなる。


高級食材を扱うお店で売られているオーガニック系カレー・ルーにも筆者は懐疑的である。大人のご馳走として使用するには最適、筆者も個人的にお気に入りのマイナーなブランドがある。しかしワンパク小僧やヤンチャな貴族令嬢に愛されるカレーはそれじゃない。もっと下品でジャンクな料理、清濁併せ持つのがカレーの魅了ではないか。


市販のルーでは個性が出ないという意見には賛同する。筆者もカレー屋さんでハウスのバーモントカレーが提供されたらキレる。しかしそれはお金と引き換えに料理を提供するお店に求める物であって、安らぎの場である家庭に必然のない個性は必要としない。


つまり日本代表・黒い安息日は勝負を捨て、ここを安らぎの場と認識したのだ。いや、そもそも彼女は、初めから勝負などしているつもりがない、好きなことをして遊んでいるだけ。そこに貴族性があれど、黒い安息日の料理に品性など皆無、彼女にとってこの大会は、お友達がたくさん集まる楽しい遊技場に過ぎないのだ。



熱せられたタマネギの甘い香りが闘技場に漂う中で、大量のハウス・バーモントカレーが投入されていく。しかし予備で用意されていた各種のカレー・ルーも、観客の貴族令嬢が好き勝手に投入していった。


エスビーのゴールデンカレーを投入する貴族令嬢がいた。濃厚さより具材の味をいかすべく調整されたスパイシー寄りのルーは、具沢山のカレーを好む彼女には最適なのだ。


ハウスのジャワカレーを投入する貴族令嬢もいた。バーモントカレーで育った子供が、大人になって物足りなくなった時に現れる魅惑のルー、単体なら最強説も……


ハチ食品のカレー・ルーを投入する貴族令嬢もいた。余談だが某所でハチ食品の社長さん (すでに退任されている) とお話しさせて頂いたことがある。気さくな方だったが、ガチのメタル好きで話が大いに弾んだ。良い思い出である。


ヘッドバンキングしながら大同のメタルインドカレーを入れる貴族令嬢や、LEEのルーがなぜ売ってないんだと憤慨しながらグリコのZEPPINを投入する貴族令嬢……そしてヒンドゥーはおろかクトゥルフの神々もびっくりの、混沌としたカレーが作られていくのだった。


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― 新着の感想 ―
わぉーん!?、作中に私の名が!?、何と名誉な事でございましょうか!?、更に拙い私の作品も読んで下さっているとは!?…共にカレーを作った亡き母への良い思い出話ができました!、ありがとうございます!m(_…
拝啓 拙作を貴族令嬢の皆様にお読みいただけますことは、この上ない光栄でございます。誠にありがとうございます。 さて、かの御令嬢がいかなる思いで、カレー対決の場にてラウドネスのライブでの掛け声「M・…
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