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第八話

挿絵(By みてみん)

アーカート城から砂浜に出て、左に行くと岩がありその先にあるクレリゴス教会の入口に従卒長のアームといっしょに近づいた。

「リチャード様、知り合いの修道女であるエミリはローレンツ王の味方でございます。

かつては、教会のタキ司祭もローレンツ家と親しかったのですが、エミリが言うには、最近のタキ司祭はこの海岸を隔てたブラックアイランド島を領地にしている豪族のベクター氏に近づいているとの事。

ベクター氏から金品を受け取りローレンツ家の情報を流しているらしいのです。

この教会から小さなボートでタキ司祭は密かにブラックアイランドと行き来していると言っておりました」


教会の入口からでもその大きな声が聞こえてくる。

タキ司祭の声だろうか。

「マリナ、今からお前はもうここの修道女でもない。

このクレリゴス教会は、ベクター様が多くの寄進をしている教会である。

数日前にこの砂浜で気を失っていたお前を私がこの教会の修道女として引き取ってやったというのに。お前は私を裏切った。

先日、ブラックアイランド島から内密に、夜中にベクター様がやってこられた。

この教会に寄進の金貨を持ってこられたのだ。

私も見返りにこのアーカートの地の情報をベクター様にお伝えしたのだ。

最近、メイ・ローレンツの姿を見かけないと。

メイ・ローレンツは悪魔を恐れているらしい。

アーカートの地に舞い降りたオーフィ・アポフィスの悪魔を恐れていたと」

司祭の声がますます大きくなる。

「ベクター様は、お前の姿を見て、ベクター様の愛妾にしようとおっしゃてくれた。

愛妾と言っても子供を身ごもれば正式に婚約できるのだ。

どこの馬の骨とも知れないお前をベクター様の第二夫人として婚約できる話がまとまったと聞いた矢先になんてことをしたのだ。

ベクター様は、ローレンツ家のメイの姿が居ない間に船団で攻め込もうと天気の悪そうな日を選んでこのアーカートの地に攻め入ろうとしたのだ」

タキ司祭の独演会のようだ。

「お前は、修道女の分際で、ベクター様の軍隊を海賊呼ばわりして、ボートに乗ると怪しげなボードゲームの駒のようなものを空中に投げつけた。

突然そこから急に変なことが起きて空が晴れ、ベクター様の船団が攻め込めなくなったのだ。

お前が変なことをしたせいで天候がおかしくなった。

お前が、ベクター様の軍隊の邪魔をしたのだぞ。

ベクター様の家来から、『ベクター様にはまだ話はしていないが、お前との話は一旦白紙にする』と言われたのだ。

お前の婚約は破棄。破棄されたのだ。

もう修道女でもない。

ここを出て行け!」


私は教会の入口から中を覗いた。

ツインテールの黒髪の女性は後ろ姿しか見えなかった。

タキ司祭と視線が合った。司祭の横には修道女らしい女性と赤髪の女性と派手な女性が居た。

「貴様は、ベクター様の領地になるのを逆らっているローレンス家のバカ息子のリチャードではないか。

お前はこの教会にいる資格は無い。

出て行ってもらおう。

この教会は、アーカート城の指図は受けぬ」


司祭は横を振り向くと修道女らしい女性に声をかけた。

「エミリ、さっさとこの女と若造を追い出せ」

エミリと呼ばれた修道女は私とアームを見て目配せをした。

この修道女はローレンツ家の味方だ。アームの部下の兵の知り合いに違いない。

修道女のエミリはツインテールの赤髪の女性に寄り添った。

ツインテールの女性は、エミリに導かれてゆっくりとこちらを振り返った。

私はその女性をじっと見つめた。



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