表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/40

第七話

挿絵(By みてみん)

トマスが青ざめた顔で私を見ている。

「トマス、どうした?」

「リチャード様、いえ、陛下」

「リチャードで良いぞ。

まだ戴冠式も済んでいないし第二王子のままのはずだから。

それに王子かどうかもわからないし」

「リチャード様、メイ様はどこにいってしまわれたのでしょうか。探さなくてもいいのでしょうか」

「私も同じことを母であるローレンツ女王に聞いたのだが、いずれ戻ってくるとだけ言われたよ」

「前にもそういうことがあったのか?

トマスは、兄であるメイに侍従としてよく世話をしていたのか?」

童顔だがキリっとしている顔のトマスは顔を赤らめてしばらく立ち尽くしていたが、周りを見て城の奥で誰もいないような柱のそばに私を案内した。

やはり、顔立ちはトマスの従妹のルシアによく似ている。トマスがもし女性なら強さと可憐さが同居した顔立ちなので美女と言われただろう。

「リチャード様、メイ様の侍従としてお仕えしておりました。

本当に良くしてくださいました」


トマスは更に話を続けた。

「メイ様のお城の書庫にもお供しましたし、この城の先のアーカート山にもお供しました。

メイ様はアーカート山にしばしば行かれておりました。

アーカート山はこの城から歩いて登れません。途中で両方が断崖になってその真ん中に川がアーカート城とアーカート山を隔てているのでございます。

いつも山に登るときは、海岸の砂浜沿いを教会の方に向けて船で回っていくのです。

教会を過ぎて更に砂浜沿いに船を走らせると急な川があり、そこの船で川を上がっていくのです。

しばらく船で川を上っていくと山側の断崖に祠がある岩山があり、その岩山の祠に鉄の柵で覆われた穴がありました。

船を出すときにはアームに頼んでいました。アームは船を操る天才でしたから」

「アーカート山には何がある?」

「わかりません。穴の中はダンジョンになっていているとメイ様はおっしゃっておりました。

私とアームを祠で待たせて、メイ様だけ穴のダンジョンの中を入って行かれておりました。

ダンジョンの穴は鉄の柵で閉じられているのですがメイ様が祠のどこかを押すと鉄の柵が空いたのです。

メイ様はこの中のダンジョンの先がアーカート山頂に繋がっているはずだとおっしゃっておりました。怖いので私はそのダンジョンの中に入ったことがありません。

「メイと何か話していたのか」

「メイ様は他の誰にも他言無用とおっしゃってから、『赤い龍の紋章が刻印されたムラマサの剣、赤い太陽光が輝く奇跡のペンダント、凄まじい温度変化を引き起こす赤い月がある龍の駒に囲まれたティアラを見つけないといけない』と。

『このアーカート山にヒントがある』とおっしゃっておりました」

「アーカート山か」

「リチャード様、それからメイ様は太陽の子である女性を探さなくてはいけないとおっしゃっておりました」


(兄であるメイも、古文書のとおりは全部できないと言っていた。

しかし3つの神器は見つけようとしていたし太陽の子である女性も探していたようだ。何故古文書のとおり全部できないといったのか?)


トマスの顔はますます赤くなり、黙ってしましった。

やがて意を決したように私に告白した。

「リチャード様、メイ様は私を可愛がってくださいました。

それに私が森の中のクスノキの根元でうたた寝をしていると、そっと私の頬にキスをしてくださいました」


油断していた私は衝撃的な言葉に腰を抜かしそうになった。

(メイは女性ではなく、私の目の前にいるトマスのような男性に興味があったのか。

だから、太陽の子を見つけても夫婦になる気が無いから、古文書のミッションは全部できないと言っていたのか)


「トマス、そうなのか」

「あっ、いえ、メイ様はそういう嗜好では今まで無かったと思います。メイ様が心配ですし私だけではなく従妹のルシアもメイ様の行方を大変気にしています」

「トマス、私の直観なので確証はないのだが、3つの神器と太陽の子を探していると兄であるメイも見つかるのではないかと思う。

だから、ローレンツ女王のいうとおり、3つの神器を探しに行こうと思う。


「リチャード王子」

精悍な従卒長であるアームの声がする。

「トマス、また後で話をしよう」

アームに私は近づいて行った。

後ろにはルシアの姿も見える。

「どうした」

「先日ベクターの軍団を追い払ったとき、リチャード王子が見つけた女性ですが、あのあと砂浜でクレリゴス教会のタキ司祭がやってきて、この教会の修道女だと言ってそのまま連れ去って行かれたのです。」

「それで?」

「私の部下がクレリゴス教会の修道女と従兄妹なのです。

その名をエミリというのですが、エミリが言うにはリチャード様が砂浜で見つけた女性は、あれ以来クレリゴス教会で昏々と眠り続けていたらしいのですが、今朝、ハヤト、ハヤトと言っていたらしいのです。私もエミリのことはよく知っていますが嘘をつくような女性ではありません。

少し気になりましたので、お耳に入れたほうがいいと思いまして。

メイドたちがリチャード様を砂浜で最初に発見した時、リチャード様は

『私はリチャードなのか?

ハヤトではないのか』

とおっしゃったとか。」


先程のトマスの告白をはるかに超えた衝撃が来た。

マリナ、マリナは無事なのか、教会にいるのか。

「アーム、すぐにクレリゴス教会に行くぞ。先導せよ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ