第六話
私は古文書を読み終えたが、封印のところが気になった。
『太陽の子のパワーとチャトランガの魔術で、途方もない灼熱と極低温の龍神を召喚し、再び私とアマデアは悪魔を封印することができた』のところだ。
「ローレンツ王、チャトランガの魔術とは何ですか?」
「わからない」
「侍従のうちの一人の親が東方の魔術に詳しいが、ジパンの国にそういう戦術があるらしい。それに関係するかもしれない」
(インドのチャトランガは日本の将棋のルーツではあるが、どうすればいいのだろう。将棋が何か関係するのか?)
ベッドに横たわるローレンツ女王が上半身を起こし、哀願するような目を私に向けて言った。
「私にはできない。
悪魔の封印が解けた地の選ばれし勇敢な男性の王が必要だ。
私の伴侶は遠い昔に亡くなった。
そして私は年老いた女王だ」
ローレンツ王は苦しそうに息をしている。
「お前の兄であるメイも知性は優れているが勇敢かどうか、
私の後を継いでローレンツ王になればそれはそれで勇敢な男だとは思うが、メイ本人は、全部古文書のとおりするのは無理だと言っていた」
ローレンツ女王は私の手を取った。
「だから、わかるな。
3つの神器、いや祖先のアーカート王が天から授かった神器を集めよ。
その前に契りを結ぶ女性を探せ」
(兄のローレンツ・メイと会ったことは無いし、兄でもできないものが私出来るのだろうか。東京では何もかも中途半端で挫折した私が)
「時間はそう残されていない。昼間の太陽が暗闇に包まれない前に3つの神器を探すのだ」
「古文書のことは城内で情報共有しなくてもいいのですか」
「すべてを言う必要はない。私たちの祖先のアーカート王が子孫に残した物だからな。但し、3つの神器を探す必要があるとは兵たちに私が言う。
兵をこの城に集めてくれ。
それとリチャードに相応し王妃の候補を見つけるために、この城で舞踏会を開催する。イザベラとルシアを呼んでくれ」
ルシアがやってきた。
ローレンツ女王はルシアとこの後の対応話をしていた。
ルシアは頷きながら時折私に悪戯っぽく好奇心に溢れた目を向けていた。
ローレンツ女王はルシアにケアをされながらゆっくりとベッドから起き上がり歩き始めた。
ルシアは部屋を出ていった。部屋の外からルシアの大きな声が響いてきた。
「トマス、すべての兵を城内に集めなさい」
ルシアに変わって、女が部屋に入ってきた。
全身から妖しい香りというかフェロモンの分泌を感じる。
アラフォーなのだろうか。アラビアンスタイルの全身青と白のベリーダンサーのような妖しい衣装にフェイスベールで顔を覆っている。
顔ははっきりとは見えないが、へその周りが露出の多い衣装である。
「イザベラにございます。」
占いの道具のようなものを手に携えてイザベラと呼ばれた女は、ローレンス女王の元ににじり寄った。
イザベラはローレンツ女王の耳元で囁いているが、何を言っているのか分からなかった。時折フェイスベールの奥から私の方を睨んでいるような気がした。
ローレンツ女王は集められた城内の全ての兵に向け2つの事柄のスピーチをした。
「はじめに、最近紫色の霧が城を覆っている。つい最近、空から星が降ってきて地面が揺れている。それらは邪悪な良くないことが起きる前兆である。
それを防ぐために、リチャードが3つの神器を探す必要がある。
従卒長のアーム、侍従のトマスもリチャードを守り立てて、3つの神器を探せ。」
「二つ目は、私、ローレンツ王を継ぐ者をこのリチャードとする。
兄のメイも今は外に出ているがわかってくれるはず。
リチャードには王妃が必要だ。王妃を見つけるためにこの城で舞踏会を開催する。
王妃には職業貴賤関係ない。
リチャードの妻として邪悪なこの状況を突破できる者として、私と城内の占い師であるイザベラの眼鏡にかなうものになる。
リチャードはこの困難な状況を突破して結婚をした後、戴冠式を行い私はローレンツ王を引退する。
皆の者、新しい王に拍手喝采を!」
城内で拍手と歓声が上がった。