表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤いアポフィスの悪魔を封印せよ  作者: lavie800


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/40

第二十九話

挿絵(By みてみん)

ルシアが教会で借りていた衣装が帆船の船室に残されていたので、海に落ちて海水まみれのルシアと私、墨だらけのアームも衣装を着替えることにした。

着替える必要のないマリナもやってきて、

「男どもはさっさと着替えて船室から出て行って」

と言われて船室から追い出された。

船室の中で、窓に覆いが被さり女性二人とも見えなくなった。

私が良から想像をしていると、声がした。

船室からマリナとルシアが出てきた。ルシアはメイド服だ。衣装を着替え終えたようだ。

「ルシア、あなたも同じような所にあれが、あるのね。

少し模様は違うけれど。」

ルシアは恥ずかしそうに「普段は自分では見えませんので」と俯いていた。

「リチャード、着替えるところを見たかったのでしょう」

マリナは胸を反らして胸元を強調した。

前のウエディングドレスは捨てて、背中がぱっくりと開いた真っ赤なワンピースに着替えていた。

私は図星だったので目を反らして黙り込んでしまった。

マリナは再びルシアの近くに行ってルシアの背中に手を入れてのぞき込んでいた。

「ルシア、そう言えば、リチャードが怪我をしていたときに何かを塗っていたわね。

そうしたらすぐ傷が治った。

あれは何なの?」

「医術でございます。

魔法の効能にもなるかもしれませんが。

王室の医師から医術を学んだ時に薬草について教えてもらったのです。

菜の花から薬草を煎じると皮膚の修復を助ける成分があるようです。

東方の医術で、ブラシノステロイドという成分だそうです」

「そうなの。

私やあなたのこれにそのブラシノステロイドを塗ったらすべて白い素肌の背中になるのかな」

「それはわかりませんが、東方の医術によりますと傷だけではなくブラシノステロイドは呪いの穢れも解消できる魔法のような成分もあるらしいです。

試したことは無いですが」

「わかった。ブラックアイランド島で誰か怪我するかもしれないから準備しておいて」

「はい。マリナ様」

「アーム、大砲の準備をして。先制攻撃よ」

マリナはリーダらしく命令した。

「マリナ様、承知しました。船は自動走行でブラックアイランド島の港近くをゴール地点でセットいたしますので、私は大砲をいつでも発射できるよう待機します」

「発射待機」

(やはり、リーダはマリナだな)


すっかり海は暗くなった。

ブラックアイランド島の手前にかがり火が見える。城の付近だろうか。

手前の港にも軍船らしき構造物がかすかに確認できる。

「アーム、軍船を狙う。軍船は燃えやすい木で、できているはず」

「マリナ様、承知しました」


「大砲、発射!」

「発射します」

大砲の爆裂音が響いた。

砲弾が放物線を描いて、ブラックアイランド島の港に向って飛んでいく。

軍船から火の手が上がる。

その後に爆発音がこの帆船まで届いてきた。

複数の軍船に砲弾が何発かあたり、次々と軍船から火の手が上がっている。

軍船に隣接していた船も火の粉が降り注いている。

港の軍船が大挙して大爆発を起こしている。

「よし、制海権はこちらのものだ」

「マリナ様、相手の港の軍船が燃えていない所にあと少しで着岸します」

「よし、アーム、次はあの城を目掛けて、撃て」

「はい。マリナ様」

砲弾がベクターの簡易な城に目掛けて先ほどよりきれいな放物線で飛んでいく。

暗闇で包まれたベクターの城が、強烈な光に包まれ、破壊音がした。

城から逃げ惑うベクターの兵士の姿が目視できる。相手の兵士は動揺したのか、武器も持たずに城から逃げ出している。

城に向けて二度目の大砲が発射され、大きな破壊音のあとに城を取り囲んでいた塀が崩れ落ちた。

マリナは帆先で身構えている。

ルシアがマリナの後ろに、アームはマリナの前に行き帆先で待機している。

私も腰に差しこんだ剣を確認した。

ブラックアイランド島に降り立つと私たちは一斉に城に向けて進んでいった。


大砲の威力で安普請の城の塀が崩れ、城塞はむき出しになっている。

城のあちこちから砲弾による火の手が上がっている。

ベクターの城の中に入った私たちは、抵抗する気力も失せていたベクターの家来たちを難無く取り押さえた。


「武器を捨てろ。抵抗しなければ命は奪わない。ベクターはどこだ」

観念したベクターの配下の兵士たちは武器を捨てて両手を上げている。

返事が無いが、降伏した兵士たちはこの城の奥の小高い林の前にある建物を見ている。


八重歯がチャーミングで好戦的な整った顔つきのマリナが叫ぶ。

「城の奥の林の先に建物があるみたい。ベクターはあの林の建物の中よ」

マリナの顔を見て思った。

(敵に回すと恐ろしい存在だ。味方で良かった)


林を抜けて建物に近づくと、急に建物から矢が飛んできた。

リチャードの頭のすぐ横を矢が通り過ぎる。

「伏せろ」

「大丈夫か。マリナは私の後ろで」

私はムラマサの剣を構えた。

剣が光り輝いている。体に力がみなぎってくる。

私の身体や腕が素早く勝手に動き、飛んでくる矢をすべて払い落とした。矢は地表に落ちた。

(剣の道を極めたようだ。)

新しい剣を武器に私の中の剣の力を再認識した。

やがて敵の矢が切れたのか建物の気配が静かになった。


ベクターが潜んでいるに違いない建物に私が先頭になり、アーム、マリナ、ルシアが突進する。

建物の扉を開けると、ベクターが建物の後ろの出口から女と走り去っていくところだった。

建物には弓が残されている。矢は無い。使い果たしたようだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ