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赤いアポフィスの悪魔を封印せよ  作者: lavie800


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第十七話

挿絵(By みてみん)

私たちの後を追ってきてやってきたのか、この帆船は。

「リチャード様、マリナ様、ご無事ですか」

教会の入口から私たちのほうにアームが叫んでいる。その後ろからルシアとエミリが走ってくる。

私は手を振った。

「大丈夫だ。二人とも無事だ。

帆船が流れ着いた。因縁のある帆船だ」

「また、このウエディングドレスも濡れたかも」

「大丈夫ですよ。まだ着替えならありますから」

エミリが声をかける。

「船が手にはいったみたいね。

早速中を調べないと」

ティアラを頭につけたまま、マリナが岩場に立って帆船を見ている。

どうやら帆船が教会の前の砂浜に打ち上げられたようだ。

あの時の船かどうか中に入ればわかるはず。

(帆船を見ればマリナも記憶を戻すかも)

波が引いて砂浜が再び顔を出した。

紫色の霧も晴れて、日食も終わり、上空は太陽で輝いている。

アームが教会に戻り太い紐のようなものと梯子を手にして戻ってきた。

「リチャード様、帆船が波にさらわれないように、帆船を固定しましょう」

そういうとアームは岩場の上にある柱のようになっている所に太い紐を固定して、帆船のへさきにある穴に太い綱を要領よく固定していった。

「小さな波なら、これで船が流されることも無いでしょう」


ルシアとエミリを砂浜に残し、私とマリナが帆船に乗り込んだ。

アームが甲板に登れるように梯子を持ってきた。

さすが船に慣れている。

先にアームが船の前辺りから甲板に上り、マリナ、私の順に甲板に上った。

じっとり湿度が高く心なしか甲板の空気が澱んでいるような気がする。

上空は晴れているのに、甲板の付近にはまだ紫色の霧が残っている。

視界はあまりよくないが、帆船の真ん中あたりには和室が見える。その先には運転室の船室があるはずだ。

何かヌメヌメと動いている感触がする。

立ち込めた霧の足元から、私とマリナの間の足元に急に黒い液体が飛んできた。

「危ない。また大ミミズなのか。」

「マリナ、気を付けろ。魔物が足元に潜んでいるぞ」

「リチャード様、こちらにも黒い液が。墨のようです」

私たちの先に居るアームの足元にも別の何かがいる様だ。

アームが甲板に落ちていた団扇のようなもので足元を扇ぐと、そこには吸盤の足がいくつもあるタコのような魔物が潜んでいた。吸盤の足の先にはタコのような魔物の胴体と眼が見える。胴体の皮膚は紫色で、粘液と墨でヌメヌメしているようだ。

市場で見るタコの数倍は大きい。

黒い眼が不気味に見える。

墨を出した後、タコのような魔物は吸盤のあるいくつもの足で、マリナの膝辺りを襲ってきた。

「うわっ。気味悪い」

マリナが飛び跳ねているが脚で追い払おうとして逆にタコの吸盤にマリナの足首が吸いた。

マリナが転倒しそうになっている。

「マリナ」

私がマリナに近寄るとひとりでに私の剣がタコのような魔物の胴体を突き刺した。

私の剣に突き刺された魔物は断末魔のような声を出し、魔物の吸盤もマリナの足首から外れ魔物の体は蒸発して跡形も無くなった。

私はアームの近くにいるタコのような魔物にも剣を近づけると、剣は魔物の胴体を先ほどと同じように貫いた。

魔物は蒸発して消えた。


「ウエディングドレスが台無しだわ。先へ行きましょう」

マリナは魔物に襲われても全く気にならないようだった。

「足元に注意したほうがいい。まだ魔物がいるかもしれないぞ」

マリナはさっと手を差し出す。

躊躇していると、

「さっさと手を取って、私をエスコートしなさい。先にリチャードが行って足元を確認するのよ」

「わかった。まずあの和室のある所に行こう」

(赤月龍王戦の将棋の対局が行われたあの和室に違いない。

和室の屋根には太陽光パネルがある。確かにあの時の帆船だ。ここでも発電できるだろうか。)


マリナが和室を覗いている。私もその後ろから和室の中をうかがった。

入口付近に将棋のタイトル戦で二人が来ていた衣装が掛かっている。

マリナの衣装はポケット付きの赤いワンピースだ。

「誰もいないようね。

ドレスが汚れたから、私、この赤いワンピースに着替えるわ。

少し目を閉じて後ろ向いていてね」


「リチャード様、この部屋の先に更に別の船室があるようです。

分かれましょう。私は別の船室を調べてみます」

帆船にある和室の外で立っていたアームはそう言うと甲板の一番後ろのほうにある船の操縦する船室に向って走って行った。


マリナは着替えが終わると、和室の周辺を回っていき和室の出入り口から部屋の中に入って行った。

部屋の中央には将棋盤が見える。そして盤上に桐の駒箱が置いてある

(ということは、あるのか)

私は駆け足で駒箱に駆け寄った。

「どうしたの。何があるの」

マリナが後ろから声をかける。

「赤い月がある龍の駒!」

私は駒箱を開けて、すべての駒を盤上に出した。

私は、駒の中から、飛車と角の2枚を両手に持って駒をあらゆる方向から眺めてみた。

「これだ。飛車の裏には、竜王と書いてある。そして角の裏には龍馬と書いてある。

まさに龍の駒だ。」

「赤い月というのは何かしら」

「タイトル戦の名前が赤月だったが。

あっ、あった。

駒の一番下に駒の作者の名前だと思う。

赤月 昇龍斉と書いてある」

マリナは赤いワンピースのポケットに手を入れた。

「何か紙が入っているわ。

『滝宗因棋士と王飛マリナの世紀の対局。

江戸時代の名職人 赤月 昇龍斉氏の駒が由来の赤月龍王戦のタイトル戦!』

と書いてあるわ。

写真、あれっ、この人私にそっくり」


(それはそうだ。本人だから写真はマリナそっくりのはず)

私は、マリナのティアラを貸してもらい、ティアラの五角形の枠にこの二つの将棋の駒が合うか重ねてみた。

「まさにサイズもピッタリのようだ」


その時、アームが走って和室に入ってきた。

「リチャード様、船室は船の操縦室でした。

そこに、これがありました」

「これは?」

「これはリチャード様のお兄様であるメイ・ローレンツ王子様が履いていた靴でございます。

それからこの紫のマントはメイ様が普段着ていた衣装でございます」

マントの裏地には署名でメイ・ローレンツと書いてあった。

(メイ王子はこの船に居たのか。私がこの船から大波にさらわれる前に見たマント姿の男は夢ではなく、この世界での私の兄、メイ・ローレンツだったのか)



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