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赤いアポフィスの悪魔を封印せよ  作者: lavie800


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第十一話

挿絵(By みてみん)

「リチャード様、承知しました。

マリナ様、別室で舞踏会の準備を致しましょう。

明日まで私とメイド見習いのアリスで、マリナ様をお預かりいたします」

ルシアはそう言うと私に微笑みかけてきて、更に付け加えた。

「リチャード様、明日の舞踏会は王妃になられる候補者を探すという目的もございますが、今回は貴賤隔てなく参加できるということで、年頃の女性が殿方にアピールする社交場としての目的もございます。

王妃に選ばれなかった女性でも、城に居ります別の殿方や意中の方にも観ていただきたいということで参加する女性もいるようです。

舞踏会では、リチャード様は参加したすべての女性と踊って頂きたくよろしくお願いします」

「わかった」

「それから従弟のトマスとも話をしたのですが、リチャード様のお兄様のメイ・ローレンツの行方がわからず心配です。

でも、私はこのアーカート城かまたはここから近い所でメイ様が見守ってくださっているような気がするのです。

三種の神器を見つける旅に行かれるときはぜひこのルシアも付いて参ります」

ルシアは真剣な表情で私の方を見ていた。


翌日、城内で舞踏会が始まった。

軽やかな音色が流れてきた。王室の管弦楽団だろうか。

城の広間には何人もの女性が着飾って佇んでいる。数人の女性が優雅に踊り出している。

メイド見習いのアリスのルシアに案内されてきたマリナは広間の一番奥の隅で白い清楚なドレスを着て佇んでいた。

マリナの顔を見ると心配そうだった。

気のせいか、私の顔を見ると少しほっとしたような顔を見せたような気がした。

ローレンツ女王が座っている王座の右隣で、私は用意されている椅子に座っていてマリナを眺めていた。左には占い師のイザベラが立っている。

精悍な従卒長のアームや侍従のトマスも広間の後ろで控えている。

舞踏会に参加している女性を見渡すと、教会で見かけた派手でフェロモン全開の確か、アリシアという名前の女性を見かけた。

彼女はベクター家の知り合いのはず。胸を殊更強調しているドレスを着飾っていて首にはペンダントをつけている。どうせ胸はコルセットで成形しているのだろう。

(何故、宿敵のローレンツ家の舞踏会にいるのだろう)

私が会ったことのない着飾った女性も二人ほど見かけた。

それからこちらを見てウインクしている着飾ったドレスの女性の一人の顔を見て驚いた。

メイド長のルシアだ。

いつものメイド姿ではなくどこか神々しい雰囲気にみえる。

(ルシアは、私がマリナを王妃したいと知っているはずだが。

それとも私に興味があるのか?)

わけもわからず額に汗が出てきた。

 ローレンツ女王を見ると膝にブランケットを覆っている。寒いのか?

イザベラに促され、私は参加している女性たちと踊るために広間の中央に歩き出した。

最初に知らない女性と次々に短時間踊った。

知らない女性たちに聞いてみると、私に選ばれなくてもかまいせんと言っていた。

その視線の先は私ではなく、どうやら従卒長のアームを見ているようだ。

私が王子でなければ目もくれなかったに違いない。

(やはり男は精悍な顔つきのほうがいいのか。何となく気分がよくないような)

次に、妖しい女のアリシアを踊りに誘い、聞いてみた。

「ベクター家の知り合いが、何故宿敵ローレンツ家の舞踏会に来ているのだ?」

「あの占い師イザベラに誘われたのよ。ほら、このペンダント。欲しくない?」

少し赤みがかったペンダントを胸にあてたて私に見せた。

(赤いような橙のような、東京タワーで使われているインターナショナルオレンジに近い色のような気がする。

まさか、3つの神器のペンダントなのか。

何故アリシアがそんなことを知っている。

そうとしたら何故持っている)

頭の中が堂々巡りで真っ白になった。

「何故、舞踏会に参加したって?

ベクターの愛人より、正規の王妃になればこのアーカートを支配できるでしょう?

ほら、よく考えてね」

アリシアはペンダントを私の目の近くに近づけると、私の胸板にアリシアの上半身を密着させてきた。

香水のにおいがきつい。

(苦手なタイプだ。笑顔の奥の目が笑っていないし何故か体がゾクゾクしてくる)

アリシアを振り切り、広間の真ん中に移動した。

アリシアは憤然としていつの間にか広間から姿が見えなくなった。

知った顔が広間の隅に居た。

「ルシア、このドレスも似合うね。

メイド姿も何故か神々しく感じるけれど」

「ありがとうざいます」

いつものメイド服ではなく明るい色のドレスを着飾っているルシアだ。

「どうやら、私は男性の魅力が無いようだ。

他の男性の当て馬か打算的理由で舞踏会に参加している女性ばかりだ」

ルシアは顔を赤くして

「リチャード様は、素敵な女性がお似合いでございます。

ローレンツ家の血を引いているのですから、魅力的な殿方でございます」


そして最後にマリナの前に私は立った。

「マリナ、私と踊ってください」

後ろのほうで管弦楽隊が生演奏でアップテンポの舞踏曲に変えて演奏している。

「記憶が戻るまでこの城に居てください。戻ってもずっといてください。

社交ダンスの経験は無いしうまく踊れないし、うまく言えないですが昔から私はあなたと」

広間の会場がざわついている。

ローレンツ女王がふらふらと玉座から立ち上がったかと思うとまた玉座に座り込んだ。

参加者や城の人たちも心配そうな顔をしている。

ルシアが玉座に走って行った。

イザベラもローレンツ王の横で異変を感じているみたいだ。

「ごめん。マリナ。女王の様子をみてくる」

私も女王のもとに駆け寄った。


ルシアがローレンツ王の玉座の前に来て声をかけた。

「大丈夫ですか」

ローレンツ女王の顔色が良くないが思い切って言った。

リチャード王子が玉座の前に立った。

「私は、本日舞踏会に参加したあの女性、マリナと婚約したいと思います」

イザベラは私の言うことが聞こえなかったかのように屈んで玉座のブランケットを手に持った。

ルシアの悲鳴が広間中に響き渡った。

ローレンツ王の脚に蛇が絡みついている。

更に女王の脚に何か茶色の液体のようなものが広がっている。

私は夢中で蛇の頭を掴んだ。

アームもやってきて私に加勢した。

女性たちの悲鳴が響く中、私とアームは苦労して無理やり蛇をローレンツ女王の脚からもぎ取って誰もいない広間の中央に投げつけた。

蛇は、広間に居た女性たちの横をすり抜けてそのまま猛烈なスピードで広間から抜け出していった。

マリナを見ると広間の隅でしゃがみ込んでいる。

ルシアとアームとイザベラがローレンツ女王を支えて広間から女王の部屋に運び出していった。

こうして舞踏会は終わった。


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