トラウマ
翌日昼過ぎ、鏡に映るのはパンパンに腫れた目をした私。
昨夜は、初めてこの部屋で号泣した。
忙しさで忘れていた孤独を思い出したのだ。
そして昔の夢を見た。
私は結婚当初、結婚というゴールをしたのだから安心だと思っていた。
夫婦になるということは相手に正直であることと疑わなかった。
だから妊娠した私は情緒が不安定になり、夫に整理のつかない気持ちをぶつけることに躊躇はなかった。
分かち合えると思っていた。
耐えかねた夫が初めての浮気をした日。
出産予定日を3週間後にひかえた頃、深夜帰宅が多いと思っていた。
深夜帰宅した夫からは必ず同じ香水が漂っていた。それが相手の女性の牽制だとも気が付かずに。
そんな私に相手の女性がしびれをきらした。
いつもより酔っぱらって帰宅した夫、脱ぎ散らかしながら浴室へ移動する。
ついて回りながら、脱いだ洗濯物を集めて回った。
ふと夫の首筋に目がいくと、赤い虫刺されのような跡があった。
まさかと思いながら夫を正面に捉えた、その赤い主張は首筋から胸元までいくつもあった。
これはキスマークだ、相手の女性の悪意だと理解した。
怒り、攻めた私に放った元夫の一言
「俺に必要以上を求めるな、俺はお前の苦しさや悩みを共有したい訳じゃない。」
「家族じゃないの?」
「家族ったって、俺らはそもそも他人だ。共有なんて面倒なことできるかよ。
女ならもっと気を使って、媚び売れよ、そんなんだから浮気したんだろう!」
私は驚き、傷付いた。ショックで産気づいた私を渋々病院へ送る夫。
それ以来私達夫婦が、心を交わすことは無かった。もちろん体も。
心に相手への嫌悪感を抱き、顔では笑い、平気なふりをする。
結果、この件は私の根本にも影響を与えた。
人を頼らない、人に心の内を見せいない、人を心に立ち入れさせない。
私は心を小さな箱にしまって、全て隠した。誰の目にも触れないように。
そんなのだから気が付けば孤独になっていた。孤独はちょっとした拍子に顔を出す。
昨夜はそれが少しひどかっただけ。
子供の頃の様に無条件に誰かに抱きしめて欲しかった。
そして、見返りの無い愛情に包まれて眠りにつきたかった。
最後までお付き合いありがとうございます。
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