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孤独に染まる

 珈琲をお代わりし、文庫本を読んだ。

心地よい場所で読書をするとついつい時間を忘れて読みふけってしまう。

ふと時計を見ると22時50分だ。本の中の世界から強制的に現実に引き戻される。

ヤバイ!閉店間際だ、明日は休みと油断した。

私は慌てて最後の一口の珈琲を飲み干し本を閉じた。



 レジに向かうと、眼鏡教授が立っていた、ズレる眼鏡を中指で押し上げながらレジを打つ。

「ご馳走様でした。とても美味しかったです。

デザートの生ガトーショコラと珈琲の相性もばっちりでした。次に来る楽しみが増えました!」

「喜んでもらえて良かったです。是非またいらして下さい、お待ちしております。」

教授の顔を正面に見る。あれ?ちょっとした、不自然さを感じた。

良く見ると眼鏡ってレンズを通した顔のラインと、通して無いラインでズレが出るはずなのに、教授の顔のラインにはズレが無い。

もしかして、この眼鏡度が入っていない?いや、ただ気のせい?

まぁ良いか、取り合えず福耳も充電したし、また頑張ろう!


 夜道を家路についた。楽しかった日の家路は特に寂しく感じる。

寂しさから孤独に染まる前にと悠里に電話した。

1回、2回と続く呼び出し音、諦めかけた時に、

「もしもし」少し不機嫌そうな声。

「寝てた?」

「いや、起きてた。何?」

用も無く電話かけた私は、悠里の不機嫌さに思わず口ごもる。

 電話の向こうで誰かの気配、そうだった息子には息子の生活がある。

それが自立するという意味だ、頭では理解してたんだけどなぁ。

「ごめん、ごめん。用は無かったのよ、元気?ちゃんとご飯食べてる?」

「ああ、食ってるし、大学もちゃんと行ってるよ。」

「分かった。体に気を付けて、たまには帰ってきてね。」

「了解、母さんも体に気を付けて。おやすみ。」

「おやすみ。」


 私は音を失ったスマホを見て、さらに色濃くなった孤独を嚙み締めた。

猫でも飼うか、いやこんな時は犬か?小っちゃくハムスター?瞑想してる。

夜空を見上げ、苦笑いして帰路についた。

最後までお付き合いありがとうございます。

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