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幸せの価値観

 携帯電話の音で目が覚めた、いつの間にか眠ってしまったようだ。

私は相手を確認する間もなく、慌てて電話に出た。


「もしもし」

「ごめん、寝てた?」ケイジさんに似たアルト声。

「ユウジさん?」

「そう。今、病院を出たとこ、圭司は危険な状態は脱したようだ。心配かけたね。これから夕食でもどう?」時計を見ると18時だ。

「折角ですが、」

「まさか俺の誘いを断るつもりかい?」

私は苦笑いしながら「では折角ですので、ご一緒します。」

「そうでないと。じゃぁ、『甘雨』で待ち合わせしよう。」


 私はシンプルなストライプのワンピースを着て、カーディンを持って出た。

『甘雨』に着くと、ユウジさんが休業のお知らせを貼っているとこだった。

「すみません、本来なら私がしないといけないのに。」

「そんなこと気にしないで。さぁ何食べに行こうか?嫌いな物ある?」

「いえ、特に無いです。久々の日本ですし、ユウジさんのお好きなお店で。」

「嬉しいなぁ。じゃ近所に昔通った小料理があるんだよ。外観こそ古臭いが、味は保証するよ。

そこで良いかな?」

「ええ。」


 ユウジさんに連れて来られた小料理屋は、確かに外観は古い。でも逆にその古さが昭和レトロで素敵だった。カウンター席に座った。

店主らしき人が「裕ちゃん久しぶりだね。何年ぶりよ。」

「ちょっと息子の顔を見に帰ったのよ。」


「まずは、俺、生ビールで、卯月さんは?」

「じゃぁ、私も。」

「取り敢えず料理は適当に注文するから、メニュー見て気になる物があったら注文してね。

大将、だし巻きとアサリの酒蒸し、ネギマ、つくね、皮、大根サラダお願い。」

「はいよ。焼き鳥はタレで良いんだよね。」

「そう。」


「俺が病院出る時に圭司が目を覚まして、俺を見てかなり驚いていたよ。まぁ父親見るの何年振りって感じだからしょうがないんだけどね。でも正直ほっとした。今回は兄貴から聞いて、覚悟しないといけないかもって思ってたから。」

「本当に意識が戻って良かった。」


 料理が出てきて、私達は料理を食べながら話していた。

「ねぇ、卯月さん。もしかして、圭司と何かあった?」

「何かと言うか、私『甘雨を辞めさせて下さい。』ってお願いしました。」

「何故?圭司から一緒にやってるって聞いて一安心してたんだよ。圭司のやつ、最近は以前のように柔らかくなってきて良かったと思っていたのに。」

「ええ、でも圭司さんはご自身で満足のいく珈琲を淹れられるようになってきたので大丈夫です。

それに、彼が変わったのは寄り添ってくれる女性ができたのかもしれません。」

「え!!それは初耳よ、あいつが卯月さん以外に興味を持つなんて。」

「私の思い違いの可能性もあるけど。」


 「ふーん。まぁいいや、で、卯月さんは店やめてどうする予定?」

「スペインへ移住できればと思っています。」

「いいね!バルセロナ?」

「ええ、ガウディに惹かれて。」

「うち来る?」

「え?!」

「丁度従業員が一人産休に入るんだよ。だれか短期で頼もうと思っていたんだ。卯月さんなら大歓迎だよ。どう?」

私は急な展開についていけず戸惑っていた。


 「ただし、一つ必ずやって欲しいことがあるんだ。

圭司が話せる状態になったら、ちゃんと自分の気持ちを話すこと。

きっと卯月さんのことだから、『自分とでは子供が持てない』とか『バツイチ』だからとか、しょーもないこと気にしているんじゃない?卯月さんは圭司のこと好きでしょ。『好きなら好き』で良いじゃない。条件とか他に誰かいても、当たって砕ければいいだけ。」


「でも、子供の存在って特別でしょ。」

「父親の俺は、そんなこと気にしてないよ。大事なのは、圭司が幸せかどうか。確かに子供は特別は特別だけど、女性が思う程ではないかなぁ。そこはやっぱり女性の凄いとこだよ、子供の為には自分の限界を軽く超えてくる。」

考え込む私に

「このまま圭司の前から消えるのは、無だよ。あいつを傷つけて良い訳じゃない。あいつにチャンスをやってくれ。」



最後までお付き合いありがとうございます。

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