真夜中の電話
深夜、携帯が鳴った。画面を見ると、ユウジさんだった。
「もしもし」
「卯月さん、夜分遅くごめんね。圭司が事故にあったんだ。今、深田総合病院で緊急手術してる。
俺も朝一の便で帰国する。貴方は圭司に寄り添う権利のある人だと思うから連絡したんだ。
親族には俺から連絡しておいたから、もし病院へ行こうと思うなら遠慮せずに行って。」
「もしかして、危険な状態なんですか?」
「うん、俺もまだ詳しくは分からないんだけど。」
「分かりました。ありがとうございました。」
私はタクシーを呼ぼうと携帯を持った。検索しようとするが震えで上手指が動かない、諦めて音声検索でタクシーを呼んだ。
支度をして降りると、マンションの前にはタクシーが来ていた。
「深田総合病院までお願いします。」
そう言って私は一心に祈った。『神様どうかケイジさんを連れていかないで。』
病院について縺れる足で走った。
手術室の待合室で、手足に包帯を巻かれた加奈ちゃんを見つけた。
何処を見る訳でもなく途方に暮れている感じだ。
一人の男性が声を掛けてくれた、何処となくケイジさんやユウジさんに似ている。
「卯月さんですね、加奈の父です。」
「すみません、厚かましく押し掛けてしまいまして。」
「いえ、ユウジから聞いているので。ご心配おかけして申し訳ない。」
「現状を教えて頂けますか?」
「どうも加奈を庇って車に轢かれたようです。内臓に損傷があるようで、出血がひどい状態です。」
「私もここで手術が終わるのを待たせてもらっていいですか?」
「ええ、勿論。」
私に気が付いた加奈ちゃんが何か言葉を発しようとしたが、すっと視線を反らした。
永遠とも思える時間。腕時計の秒針の音が妙に大きく聞こえる。
緊張で喉が渇く、でもそれを意識しても消えてく。一心に祈る、ケイジさんの無事を。
クーラーが効いているせいか、手足が痛いくらい冷たい。どの位経った?空が明るくなってきた。
私は空を見たくて、立ち上がろうとした。でも冷え切った足は言うことをきかず、バランスを崩しよろけた。『何故私に困難ばかり、何故私は幸せになれない、こんなに辛くて生きる意味は?』弱音ばかりが私を襲う。
そんな時、手術室からドクターが出てきた。
「結果から言うと、取り敢えず、一命を取り留めました。ただ感染症の心配もあり、まだまだ予断を許さない状態です。しばらくICUで様子をみます。損傷個所は・・・」
私の意識があったのはそこまで、後はただ木偶の坊のように立っていた。
取り敢えず、良かった!
加奈ちゃんのお父さんに挨拶し、病院のタクシー乗り場へ向かった。
途中、三上さんとすれ違ったが、彼女は走っていて私に気が付いていないようだった。
ケイジさんのとこへ向かうのだろう。やはり、彼女は圭司さんと親しい関係にあるのだろう。
いつの間に陽は高くなり、五月蠅いくらいの蝉の声。
タクシーで自宅に戻り、シャワーを浴びた。アイスコーヒーを淹れて、ソファに腰かけた。
冷たい珈琲は体中を冷やしてくれた。窓の外には入道雲が広がり、真夏の空は私の心の闇を拭った。
最後までお付き合いありがとうございます。
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