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似合いな二人

 早朝に目が覚めたので、ベランダに出てみた。

早朝なのに生ぬるい空気が立ち込める、お盆を過ぎると少し涼しくなるのだが。

グレープフルーツジュースを片手に椅子に座った。

グレープフルーツの独特の軽いえぐ味が起きたての寝ぼけた頭を一掃した。


 最近呼び方が『ケイジ先生』から『ケイジさん』に変った。

ある日、ケイジさんから「ここで『先生』と呼ばれるのもなぁ、『ケイジ』と呼んでください。」と言われた。流石に呼び捨ては出来ないので、『ケイジさん』と呼んでいる。


 さぁ今日は大雨の影響で延期されていた夏祭りだ。

多分ケイジさんと過ごす最後の夏祭りになるだろう。



 昼前に出勤し、私達はお祭りの準備に追われていた。

ケイジさんとすれ違った時、ふと鼻を掠める香水の香り?移り香に近いくらいの薄い香り。一瞬、加奈ちゃんの顔がよぎった、でも加奈ちゃんの香水とは違う。

「珍しいですね、香水ですか?」

「え!香水なんか付けてないよ。ここに香水なんか付けて来ないしね。」

「ごめんなさい、気のせいですね。」

そう私が言うと、ケイジさんは少し考えていた。

そして、彼は何か思い当たることがあったような顔をした。


 

 例年はビールとハイボールだが、今年はクラフトジンを使ったジントニックも提供することになった。

最近お客さんに若い人が増えてきたので、変わった物も用意してみた。どうも背景にはケイジさんの学生がこっそり来ているようだ。

 今日のジンは私勧めの国産ジンだ。木の芽、山椒、松などを原料に使っているから年配の人にも抵抗なく受け入れられるのではないかと思った。

おつまみも若者向けに揚げ物系も取り入れた。


 不変でありながらも変化し続ける、矛盾があるように聞こえるが、結果が『甘雨』らしくあればアプローチは違っていいのだ。少しずつ私達らしく変えていけば良いと思っていた。


 午後になり辺りが歩行者天国となった。

私達はテーブルの設置に追われていた。

「先生!お手伝いに来ました。」数名の若者がやって来た。

「おう!来たか、ありがとう。早速だがテーブル設置を頼むわ。三上さんも来てくれたの?」

「ええ、学生を引率するという名目で。」そう言った女性は、同性の私が見てもため息が出るくらい綺麗な女性だ。

しかも、ストレートのロングヘアを一つに束ね、サロペットパンツできちんと手伝い適した服装だ。



 彼女は私を見つけると

「こんにちは、佐田君のお母さんですよね?私、悠里君が学生の時、研究室で助手をしていた三上と申します。」

「そうなんですね、息子がお世話になりました。」

「悠里君は優しい子ですね、お母様が愛情を掛けて育てられのだと思いました。」

「ありがとうございます。そう言ってもらえると嬉しいです。」

三上さんから香ってくる香水は、ケイジさんから香ってきたものと同じだった。


 そうなんだ、私は理解した。並んだ二人は、見た目は勿論、年齢的にもお似合いな二人だった。

最後までお付き合いありがとうございます。

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