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あなたに相応し人

 私達は当面は夕方からの営業で再開した。

営業再開を知った加奈ちゃんは店にやって来て、私がいることに激怒した。

「佐田君のお母様がなぜここにいるんですか?あれだけそっとして置いてくださいって頼んだのに。

なんて勝手な人なんですか!」

「ごめんなさい。でも、『甘雨』はどうしても守りたい場所なの。」

「加奈ちゃん、卯月さんには俺が無理言ってお願いしたんだ。彼女を攻めるのはお門違いだよ。俺は営業を再開したいんだ。でも今の俺には爺さんの珈琲は淹れなられない、卯月さんの力が必要なんだ。」

「だったら今無理に再開する必要ないじゃない。」

「一刻も早く再開したいんだ、ここを待ってくれている人がいるはずだから。」


「でも・・・」更に何か言おうする加奈ちゃんに、

「そもそも、俺が加奈ちゃんに許しを請う必要がある?」おっと黒いケイジ先生の登場だ。

「俺と加奈ちゃんは特別な関係ではないだろ、あくまで親戚。それ以外の何物でもない。」驚くほど冷たく突き放した。


 加奈ちゃんは半泣きで「そんな、私は圭司さんに特別な感情を持っているわ。圭司さんも少しは思ってくれているから、恋人役引き受けてくれたじゃないの?」

「ああ、都合の良い勘違いだな。従兄の兄ちゃんの娘だから頼まれれば、守ってやりたいと思うのは当然だろ。だけどそれは、あくまで妹みたいな感覚で恋愛対象では無い。加奈ちゃんは、もっと自分に相応しい男を探すべきだ、こんな中年オジサンじゃなくてさ。勿体ないよ、こんなオジサン相手にしてたら。」

私はまるで自分が攻められているような気がした、分かっている不釣り合いなこと。



 先生が自分の納得いく珈琲が淹れられた時、それは『甘雨」を一人でも続けられるサインだ。

 

 私にとってケイジ先生はとても愛おしい存在。だからこそ、私が彼にこんな気持ちを持ってはいけない、一刻も早く身を引かなければならない。

ユウジさんの言うとおり、もしケイジ先生が私に特別な感情を抱いていたとしたら、それは彼の人生にとってはマイナスになる。

私は自分自身を否定している訳ではない。悠里の親である私の目線で見た当然の結果。


そして、それは私のことを覚えていない今だからこそできること。


 

 閉店後二人で賄いを食べながらマスターの思い出話をしたり、他愛のない会話した。

最近のケイジ先生は笑顔が穏やかになってきた。心がリラックスしてきているのかもしれない。


 それと比例するように珈琲の味が良くなっていった。

彼が満足してお客さんに提供できる日も近い、一緒にいられる日もあと少しだろう。

最後までお付き合いありがとうございます。

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