一歩を踏み出す勇気
久々の日本の朝だ、今朝は雨、ベランダに出ると雨独特の匂い。
優しく樹々を揺らす雨、優しく奏でる雨音。『甘雨』を訪れるにはぴったりな日だ。
私はスペインでの旅行で、もう一度ケイジ先生に逢うこと決めていた。
加奈ちゃんに何を言われようと、私はケイジ先生とお店を続けたい。
一歩を踏み出せば、何かが変わるはず。
私にとって一番守りたいのは、愛する人が守りたいと思っている『甘雨』だから。
私のことを覚えていなくても、二人でやればきっと『甘雨』を取り戻すことができる。
アプローチは以前と異なっていても結果が『甘雨』になれば良い。
スペインのお土産を持って、お店を訪ねた。居なければ自宅にと思っていたが、幸いお店にいた。
ドアを開けると『カランコロン』良い音だ。
私を少し驚いた顔で私を見たケイジ先生。私は先生の目の前で止まった。
「ケイジ先生、貴方はきっと覚えていないと思いますが、私はしばらくの間『甘雨』をお手伝いしていました。貴方とも一緒に働いていました。私にとってもこのお店は守るべき場所なんです。私と一緒にお店を再開してもらえませんか?」
「やっぱり、何となく貴方とは何か特別な関わりがあったのではないかと思っていました。
再開させてたくても、僕は以前と同じような珈琲の味が出せないんです。満足いく珈琲が出せない。」
「私に淹れさせてもらえませんか?」
私はマスターに教えて貰ったことを一つ一つ丁寧に思い出し、私の全ての思いを込めて淹れた。
「どうぞ。」
「頂きます。」香りをかいで、一口の飲んだケイジ先生は驚いた顔で私を見た。
「祖父のとは少し違うけど、『甘雨』らしい珈琲だ。嗚呼、懐かしい。」
そう言って微笑んだ先生の目元に涙が見えたような気がした。
「ありがとうございます。一緒にお店をやらせてもらえますか?」
「ええ、是非お願いします。」
「不躾ですが、僕は佐田さんのことなんと呼んでいました?」
「『卯月さん』と呼んでくださっていました。」
「卯月さん、そっかぁ、なんか『佐田さん』よりしっくりきますね。」
そう言って笑ったケイジ先生は少し嬉しそうだった。
私は自分がお土産を持っていることを思い出した。
「これ、この前スペインへ行ってきたので、お土産です。」
「ありがとうございます。開けても良いですか?」
「ええ、珈琲豆です。ご自宅で飲んで頂きたくて、ここの豆とは違う感じの豆です。」
「それは楽しみだな。」
ユウジさんにケイジ先生の好みを聞きながら選んだ豆だ、気に入って貰えるとうれしいなぁ。
「スペインかぁ、良いとこですよね。特にバルセロナのガウディの作品は必見ですよね。」
「ええ、今回の旅はガウディメインで行ってきました。
そこでたまたま引き寄せられるられるように入ったカフェが『Wings Rest』でした。」
「え!!まさか。父の店ですが、あんな路地奥の小さい店、良く気がつきましたね。」
「入ったら店内の雰囲気がここによく似ていて驚きました。」
「しばらく行ってないのですが、父のお店はここに似ていましたか。
父は自分の永住の地を見つけたのかもしれないですね。」
最後までお付き合いありがとうございます。
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