様々なアプローチ
それから、私はガウディ観光の傍ら、毎日のように『Wings Rest』へ通った。
マスターの淹れる珈琲に自分の疲弊した心が少しずつ元気を取り戻しているのを感じた。
そろそろ、日本への帰国が迫ったある日
「明日は休業日なんです。良ければ観光案内させて貰えますか?」
「ええ、お願いできると嬉しいです。あの写真集の写真家さんの案内って、それはもう絶対素敵な案内に決まってます。」
「プレッシャーだな。」
翌朝私のホテルへ迎えに来てくれた。
「今日はお願いします。」
「こちらこそ、今日は流石に『マスター』は微妙なんで『ユウジさん』で。」
「わかりました。『ユウジさん』ですね。」
ユウジさんは教会へ連れてい行ってくれた。
初日とは違うルートで回った、近くで見ると彫刻家によって作風が異なり、全体から受ける印象と異なってた。
「ガウディの死後、内戦や火災で設計図や模型が無くなっててさ。皆が思うガウディらしさが異なったんだろうね。でも不思議と同じゴールを目指している、アプローチは千差万別でいいんだと思うんだよ。」
「なんか、人生みたいですね。百人いれば百通りの人生がある、でも最後は『ああ楽しかった』と言って死にたい。」
「良いこと言うね!でもそうだと思うよ。
俺もね、最初は写真家目指していたんだ。写真は見ている人の表情を直接見れないでしょ。もっと直接的に笑顔を見たくなったんだ。そんな時、父の店に行ったんだよ。
そこでお客さんの笑顔や笑い声を聞いて、『大事なのは結果、アプローチは変えてもいいんだ。』と気が付いたんだ。」
「何故日本でなくバルセロナで?」
「それはやっぱり、ガウディ先生の作品の傍でいたかったから。子供も巣立って、妻にも先立たれて、日本に俺を縛るものが無くなったとき、何処に行こうかと思って最初に浮かんだのがここ。俺はガウディの作品が大好きで、近くに感じていたかったんだ。」
ユウジさんの話は私自身と重なるような気がして、何かが琴線に触れた。
そんな私の心を読むかのように不敵な笑みを浮かべて言った。
「卯月さんにも心当たりあるようだね。いいとこだよバルセロナ。」
ユウジさんは夕食に誘ってくれた。
「外食も良いけど、僕の家でどうかな?折角だから圭司の写真見に来る?」
正直とても魅力的なお誘いだった。ケイジ先生の写真がみれるなんて、お父様だからという気のゆるみも手伝って「お言葉に甘えて」と答えていた。
最後までお付き合いありがとうございます。
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