サイドK No.4
桜が咲く頃、永遠に続けば良いと思う程、楽しく穏やかな日々に終焉がきた。
爺さんがいついも時間になっても起きて来ないので部屋に行ったら、眠るように亡くなっていた。
爺さんらしい穏やかな最後だった。
まだまだ教えて欲しいこと、学びたいことは沢山あった。時間はいくらあっても足りなかったな。
ただ、不思議と爺さん孝行はできたのかもしれないと思えた。
卯月さんに手伝ってもらいながらだが、最後まで店を営業することができた。
俺は不思議と成し遂げた気持ちでいた。
問題はこれからのこと、俺は店を閉めたくない。だからと言って大学も辞めたくない。
夜の営業だけするか?夜だけだとしても、誰か人を入れないとな。
卯月さんが手伝ってくれると嬉しいが、そんなに甘えてしまって良いものかとも思う。
そんなことを店で珈琲を飲みながら考えていた。
臨時休業の案内を出していたにも関わらず、ドアの鈴がカランコロンと鳴った。
「すみません、今日は臨時休業です。」と振り返り見ると卯月さんが立っていた。「卯月さん・・・」
「ごめんなさい、マスターにお線香だけでも上げさせて頂けませんか?」
よく見ると泣き腫らした目で立っている。
「ありがとうございます。爺さんも喜びますよ。」
近くの爺さんと俺の家に案内した。
「ごめんなさい、厚かましいお願いをして。ただマスターには本当によくして頂きました。
『甘雨』の存在に私はどれほど救われたか。感謝してしきれないくらい。」
卯月さんはしばらく仏壇に手を合わせていた、まるで爺さんと話でもしているかのようだった。
「お店はどうされます?」
「迷ってます、閉めたくなくて、でも大学も辞めたくなくて。」
卯月さんが意を決したように俺を正面から真っすぐ見た、初めてかもしれないな。
「大変厚かましいお願いですが、もしお店を存続させるのなら私にもお手伝いさせて下さい。
私のように孤独や、過去に苦しむ人が、癒され、羽を休める場所として残したいのです。
いつも変わらず笑顔で迎えいれてくれる、心の拠り所として不変のまま残したのです。」
ああ、この人は何故俺の心が分かるのだろう、俺が言葉にできず困っていたことを言葉に綴ってくれた。「願ってもない話です。あなたが手伝ってくれれば僕は迷うことなく続けることができます。」
降参だ、俺は彼女を愛おしく特別な存在だと認めざる得ない。
俺は初めての感情に恐怖と歓喜で震えた。ただこの気持ちを彼女に伝えるかどうかは別問題だ。
最後までお付き合いありがとうございます。
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