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別れの準備

 休日のお昼、陽が指す時間に珈琲片手にベランダに出る。

今年の冬は特に寒い気がする。マスターとの別れが近いのも理由かもしれない。

マスターは皆との別れを惜しむように毎日、カウンターで珈琲を淹れ常連客と話をしている。

不思議なことに悲壮感なんてなくて、同窓会のように皆楽しそうに思い出話をしていた。


 ケイジ先生は以前より店に立つ時間が増えているようだ。

マスターから珈琲豆の焙煎の仕方など色々学んでいるようで、悲しんでいる暇はない感じだ。


 マスターは夜は疲れが出るらしくいつもより早く上がってしまう。

私は、迷惑かと思ったが勇気を出して夜と休日の手伝いを申し出た。

 私が現在一人でもなんとか日々を送れているのは、マスターやケイジ先生、『甘雨』の存在があるからな訳で、少しでも何かの形でお返しできればと思った。

「マスター、ケイジ先生、ご迷惑でなければ、夜と休日にお店を手伝わせもらえないでしょうか?」

マスターはケイジ先生を顔を見た。

「卯月ちゃんが良ければ是非お願いしたいな。アルバイト代もはずむよ。」

「バイト代は要りません、私のお願いなので。」

「どうする?圭史。」

「僕からも是非お願いしたい!でも無給と言うわけには。」ちょっと前のめりのケイジ先生に私は安堵した。

「じゃぁ、珈琲と賄いをお願いします。」

「分かった、俺が美味しい賄いを用意するよ。卯月ちゃんよろしくね。良かったな圭史。」

「卯月さんよろしくお願いします!」

「こちらこそ、ご迷惑ならないように頑張ります。」


 ただこのことが更なるトラブルのきっかけとなった。


 手伝い初めて一週間経った頃、閉店間際のお店に加奈ちゃんがやってきた。

「なんで佐田君のお母さんは良くて、私は駄目なのよ。」ケイジ先生へ食って掛かった。

「理由が分からない?前も言ったのに、今日も香水プンプン匂うんだよ。そういうとこだよ。」

「だって何やったってケイジさんに認められることなんて無いんだもん。だったら好きにしたって良いじゃん。」

「加奈ちゃんがもっと色々な経験をして歳を重ねればもっと色々な事が見えてくる。この店はそんな経験を積んだ人達が集まる店なんだ。

お互いを思いやり尊重し、そして時を共有する場所。

傷ついた時、羽を休めて次に向かって休息する場所。そんな店なんだなんだ。

だからね、加奈ちゃんにはまだ必要ない店なんだよ。」

「分かった。じゃぁ私が経験を積んで成長した時には快く迎えてくれる?」

「勿論。その時には僕が美味しい珈琲を淹れるよ。」



最後までお付き合いありがとうございます。

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