夏祭り(後)
少し酔った加奈ちゃんをケイジ先生が送っていくことになった。
若い女の子が浴衣でウロウロいていい時間帯じゃない。
ケイジ先生に、ここは大丈夫だから送った方がいいと言った。
「加奈ちゃん行くよ。ほら立って。」
立った拍子にバランスを崩す加奈ちゃん、それを支えるケイジ先生。
なんか直視できずに目をそらす。
私は誰にも特別な感情を持ちたくない、『もう、懲りたでしょ?』と自分に問う。
私のこれからの時間は私の為に使う、誰にも依存も共存もしない。
マスターは疲れているようだったので、無理やり常連さんに連れて帰ってもらった。
夏バテだろうか?最近少し調子が悪そうだ。ここ最近猛暑が続いているから気になった。
ケイジ先生が戻るまでに片付けておきたかった。変な意地だと失笑しながら一心に片付けた。
戻ってきたケイジ先生は息を切らしていた。
『急いで帰ってきてくれたことが窺えて嬉しかった』のだから現金なものだ。
久し振りの美味しいお酒と愉快な会話、楽しい時間のお礼を言って帰宅しようとした。
送っていくという先生の申し出を拒めず、送ってもらうことにした。
私は酔っても顔に出ない。多分今夜は飲み過ぎてしまっていたのだろう。
うっかり思い出してしまった、元夫の口癖『だからお前は可愛くないんだ』。
この言葉が私を雁字搦めにする、蜘蛛の糸に引っかかった虫の様に身動き取れない私。
それがまるで周囲の期待のように、可愛くない女の役割をこなす。
そんなことに慣れていたはずなのに、先生の一言に傷ついた。
気が付くと先生の腕の中だった。一瞬魔が差した、私でも幸せになれる?
その時香水の香りが鼻を掠めた、あっつ加奈ちゃんが纏っていた香り。
すぐに我に返って離れた。あれは先生の同情、何より私はもう懲りている。
最後までお付き合いありがとうございます。
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