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夏祭り(中)

 今日の卯月さんは浴衣だ、凄く綺麗だ。

まさか自分が『綺麗』なんて言葉を口にする日が来るなんて思いもしなかった。

彼女しか目に入らなくて、彼女の姿ばかり探してしまう。

彼女の一挙一動に心を乱され、その場に存在するだけで全てが彩づき鮮やかに見える。

こんな経験初めてで、戸惑う日々だ。そんな自分に、彼女に、恐怖すら抱く。


 常連さん達と気軽な会話を楽しみながら過ごした。

ヤバイなそろそろ加奈ちゃんを帰さないと。

「加奈ちゃんそろそろ帰らないと。」

少し酔った加奈ちゃんは「え~、ケイジさん送ってください。」

「いや、俺はここがあるから無理よ。」

酔っぱらいはタチが悪い「嫌です!ケイジさんが送ってくれないと帰りません。」

見かねた卯月さんが手伝うと言ってくれた。

「ここは私が手伝うので、加奈ちゃんを送ってください。

こんな可愛い娘が遅い時間浴衣だでウロウロしていたら危ないです。」

「ありがとうございます。じゃぁタクシーが拾えるとこまで送ってきます。」

「加奈ちゃん行くよ。ほら立って。」


 タクシーを停めようと躍起になっていた。

「ケイジさん、まさか佐田君のお母さんに特別な感情なんて持ってないよね?」

「えっなんで?」ヤバイ焦るな俺、平常心、平常心。

「だって相手は年上、その上保護者だから問題になっちゃうでしょ。」

俺はムッとして思わず本音が出た。

「年は関係ないよね。保護者だって佐田君が卒業すれば問題無いし。」

言葉にしてしまった直後にヤバイと思った、誰にも悟られていない気持ちなのに。

驚いた加奈ちゃんの顔。

「あくまで一般論よ。さぁ加奈ちゃんタクシー来たし乗って、気を付けてね。」

何か言いたげな加奈ちゃんを無理やりタクシーを押し込んだ。


 店に戻ると卯月さんが片づけをほとんど終わらせていてくれた。

今年は猛暑で爺さんの体調が優れない日がある、年だしあまり無理をさせたくないので正直助かった。

「ありがとうございます、助かりました。凄いなもうほとんど片付いている。」

「加奈ちゃん大丈夫でした?ちょっと足元がふらついていたから。」

「ええ、タクシーに乗せました。」


 残りを片付けてたらすっかり夜も更けていた。

「遅くなったので、送って行きます。」

「大丈夫です、歩いて帰れる距離だから。」

「いや、送らせて下さい。心配過ぎて一人で帰すなんて無理です。」

卯月さんはカラカラと笑い。

「あ~可笑しい!私みたいなおばちゃん襲って徳なんてないと思うけど、お言葉に甘えてお願いします。」


 俺は出来る限りゆっくり歩いた、少しでも彼女の存在を感じていたかった。

「今日はとても楽しかったです。お祭りなんて久しぶりで飲みすぎちゃいました。」

「良かった。楽しんでもらえて、来年も声掛けますね。

卯月さんってお酒強いですね。常連の爺さん達にお酌されるままドンドン飲んでいくので驚きました。」

「そうね、折角の好意を無下にするのもね、飲める範囲でね・・・でも、きっとそんなトコも可愛げが無かったのよね。」最後は独り言かと思うくらい小さな声だった。でも俺は聞き逃さなかった。

「卯月さんは可愛いいし、綺麗だし、何より貴方の纏う雰囲気が作り出さす空間はとても心地よい。

こんなこと言ったらキモイかぁ。でもあなたは十分素敵なんです。」

卯月さんは今にも泣きそうな笑顔で「ありがとう」と言いった。

俺は考える前に彼女を引き寄せ抱きしめていた。

「本音です・・・嘘はない。」

彼女は戸惑うように俺の背中に手を回した、ほんの一瞬。

「私、少し飲みすぎたみたいね。」と俺の腕の中からいなくなった。




最後までお付き合いありがとうございます。

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