表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/42

避難場所

 気が付くと季節は巡っていた。 私は孤独に支配されそうになると、『甘雨』へ避難した。

いつもは窓際の席だが、そんな日は敢えてカウンターに座る。

お客さんが少ない時は、マスターや眼鏡教授が話相手になってくれる。

常連客は皆『ケイジ』と呼ぶでいる。私の心の中では眼鏡教授なんだけどね。

なんかあの眼鏡が良いんだよね、眼鏡を上げる仕草も色っぽいし。

眼鏡と教授はセット、切り離せない感じ。


 私は当初は個人情報を話題に盛り込むことのない、本当にたわいもない会話を好んだ。

私の根底にはずっとトラウマがある、だからこそそんな会話が癒してくれたのだ。

随分通って、やっと最近少しずつ私個人のことことも話せるようになった。

でも、それはまだまだ小さな日常の出来事だけだ。



 マスターはそんな私の何かに気が付いているようだった。

ちょうどお客さんの切れ目で、店内はマスターと私の二人だった。

「お客さんにこんなことを言うのは初めてなんだけど、なんか卯月ちゃんはお客さんっていうより娘みたいなんだよね。だからジジイの遺言だと思って聞いてくれると嬉しいな。」

いつになく真面目な顔でマスターが言った。


 「君はきっと過去に辛い経験をしたんだと思うんだよ。

でもね人生はまだまだ長い、きっと君の傷が癒え幸せを掴める時が必ず来る。

その時は最初の一歩を踏み出す勇気を持ってね。」

この時はそんな日は永遠にこないと思っていた。

自分の年齢、しまい込んだ心、他者に何かを求めるには条件が悪すぎる。


 カランコロン「ただいま帰りました」買い出しに出ていた眼鏡教授が戻ってきた。

あれ?何故だろう声が怖い。いつもの奏でるような声ではなく、鋭さを含んでいる。

でも見せる笑顔はいつもと変わらない。気のせい?

「お帰り」「お帰りなさい」

「卯月さん、いらっしゃい!」

「お邪魔してます。美味しい珈琲を飲みにきました。マスターの珈琲は私の心の万能薬なので。」

「いいね、その表現。俺の珈琲でそんなに喜んでもらえるとはマスター冥利につきるね。」

「卯月さん、あまり褒めないで下さい。この爺さんすぐに調子に乗るんで。」


 店内に流れる穏やかな時間。

今日も私は孤独に支配されることなく一日を終えることができる。

最後までお付き合いありがとうございます。

面白いと思って頂けたら、ブックマークや★をお願いします。励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ