突然の身バレ
初夏のある日、久し振りに息子とランチすることになった。
大学の近くの駅で待ち合わせをした。
少し早く着いたので学校へ入るわけでもなく、何となく近ずいて行った。
中から聞こえる学生の声、笑い声などを聞きながら微笑んだ。
大人と言うには幼く、子供というには大人だ。
昔は親元を離れたら大人になった気持ちだった、親目線だとまだまだ子供なんだな。
そんなことを思いながら歩いていると、
「母さん!」
懐かしい声、スマホ越しでない声。
振り向くと悠里が立っていた、その横には少し緊張した微笑で立っている女の子がいた。
「母さん待ち合わせは駅だったよね、どうしたの?」
「早く着いたから何となく歩いてたの。それより可愛い女の子連れてるのね。」
「彼女の加奈ちゃんだよ。」
「初めまして、加奈です。」とお辞儀をした。
礼儀正しく、派手過ぎず、真面目過ぎず、親から言わせれば第一印象は満点だ。
今日は彼女に会わせたかったんだな、珍しくランチの誘うから何事かと思ったけど。
「こんにちは、息子がお世話になってます。」
「じゃぁ、加奈。また後で連絡する。」
「えっ!折角だから一緒にランチ行こうよ。どう?」
息子に尋ねると、「母さんが良いなら。」と加奈ちゃんと顔を見合わせる。
「もちろん、大歓迎よ。加奈ちゃん何か食べたいものある?」
「駅近にカジュアルなイタリアンレストランがあって、美味いんだけどどうかな?」
流石、息子よリサーチ済みか。
息子と彼女のやり取りは、見ていてとても微笑ましいかった。
きっと付き合い初めて間もないのだろう、お互いを想う気持ちと距離感を計る感じが初々しかった。
加奈ちゃんは長女だという、一人っ子の息子には良いかもしれない。
面倒見がよく、状況を良く見ているから周りとのバランス感覚も良い娘だ。
聞くと彼女も今年入学で、一人暮らし、下宿先も偶然息子と同じマンションだ。
この前の誰かの気配は間違いなく加奈ちゃんだろう。
息子に大事な人ができたことは、安堵の中に少しの寂しさを含んでいた。
食後、彼女は帰宅し、私は大学へ戻る息子と歩いていた。
「良かったわね、可愛い彼女ができて。」
「ああ」
「要らない世話だと思うけど、避妊だけは必ずね。彼女が大事なら絶対よ。」
驚いだ顔で私を見て「分かってる。」と真っ赤な顔で答える。
そんな時、前からまさかの眼鏡教授!!
大学近くをウロウロしていたら、眼鏡教授に逢うかもしれないと思いつつ、保護者というのを黙ったまま『甘雨』に通うことにも抵抗があった。
でも今更言えないし、一層バレた方がいいのではないかと思い始めていたのは確かだ。
しかし、突然すぎる事態に動揺していた。
眼鏡教授も驚いた顔でこちらを見ている。そうだよね、まさかだもんね。
息子が教授に駆け寄り
「河村先生、質問があって今日は夕方研究室へいらっしゃいますか?」
教授は私から視線を外さず「ああ、16時半以降ならいるよ。ところで隣の女性は?」
「母です。」ほんの一瞬、教授の顔が険しくなった。保護者はやっぱり面倒だったかぁ。
「いつも息子がお世話になっております。」
「河村です、よろしくお願いします。」
挨拶だけを交わしすれ違った。
その後息子の話は耳に入らず、眼鏡教授の険しい顔がフラッシュバックしていた。
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