第7話 一緒に寝ちゃった
「まっ、まだ寝てないもん!」
リビングに戻るために寝室を離れたと同時に、部屋の中からそんな叫び声が聞こえてきた。
そして、勢いよくドアが開いた。
「……絶対寝てただろ」
「うっ……。まあ、寝てたけど……」
そう言いながら眠たそうにしている目を擦って、氷翠は俺の体にもたれかかってきた。
何もしなかったら倒れそうなので、慌てて彼女を抱え込むように支える。
「……眠いんだったら寝ろよ」
「せっかく一緒にいてるのに、寝るなんてもったいないこと出来ないよ……」
甘えるように腕の中で優しく呟かれたせいか、鼓動がだんだんと早くなってきた。
「うおぉ〜……。ドクンドクン言ってる……」
「……離していいか?」
「ダメです。今離したら私倒れるけど」
俺の胸の辺りに耳を押し当てているような状態のまま、可愛い幼馴染みは言葉を続けた。
「……立ってるのしんどいからちょっと座ろうよ」
「ハイ……」
彼女を抱いたまま言われた通りに廊下で座り込むと、あぐらをかいた俺の上で氷翠が丸まって寝転んだ。
座ったおかげで手を離す事は出来たが、上に乗られているせいで身動きが取れない。
しかも彼女は目を瞑ってウトウトし始めた。このまま寝られたら非常に面倒くさいのに。
「……寝るなら寝室戻ってくれませんかね?」
「んん〜……」
「おーい、氷翠さん?」
「おやすみぃ……」
かわいい寝顔をこちらに覗かせながら、小さく寝息を立てて眠りに入った。
「まじか……」
今日は一睡も出来そうにないぞ……。
◇ ◇ ◇
……とか昨日寝る前は思ってたのに。
気付けば爆睡していたようで、目が覚めると俺は氷翠の上に乗りかかるような形で眠っていた。
幸い、彼女はまだ目を覚ましていなかったようで、怒られることはなさそう。
「……あ、おはよう」
「……おはよう」
「昨日私の上で寝てたでしょ?」
氷翠は何故か嬉しそうにニヤニヤと笑いながら尋ねてきた。
「……気付いてたか」
「そりゃね。急に何か重たいモノが乗ってきたんだもん」
「ごめん……」
「どうしよっかなぁ〜。許して欲しいなら……」
彼女は体を起こしてから、再び口を開いた。
「今日も泊まって行かせて」
「……それぐらいなら別にいいけどさ。親は許してくれるのかよ」
「今いないし、多分いいよって言ってくれる」
「……そうか」
そう呟くように返してから朝ごはんを作る為に立ち上がろうとしたが、足がしびれて動かない。
必死に痛みに耐えている姿を見て、氷翠はお腹を抱えて大爆笑していた。