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第5話 ほら、食え

「何してるの?」


 俺がカップ麺にお湯を注いでいると、興味深そうにじっとこちらを見つめていた氷翠ひすいが急に声を掛けてきた。


「見たら分かると思うけど、晩ごはんのカップ麺作ってる」

「ふーん……」


 俺の回答が満足のいくものでは無かったのか、彼女は何故か素っ気ない態度を取って冷たい反応を返してきた。


「……どうしたいの?」

「……いや、なんでもない」


 絶対に何かあるような難しそうな表情で離れていったので、こっちが心配になってくる。

 もしかしたら体調が悪いのではないか、とか。

 気にした所で答えてくれそうに無いので、俺はすぐに諦めたが。


 三分後、出来上がったカップ麺と《《二人分の》》お箸をリビングの机に置いて、すでに座っている氷翠ひすいの隣に並んで手を合わせた。


「いただきま〜す」

「いただ……え? えぇ!? ちょっ、れい……?」

「ん?」


 食べ始めようと箸で麺を掴んだとほぼ同時に、彼女が顔を少し朱色に染めながら焦り始めた。


「カップ麺一個しか無いの……?」

「え、一緒に食べるのってダメか?」


 氷翠ひすいは図書館からの帰りに結構大きめのパンを食べたし、一度同じ食べ物を食べて間接キスは経験したので、これぐらい良いかなと思ったのだが嫌だったようだ。


「……ごめん、嫌だったか。もう一個取ってくるからコレ食べといて」


 そう言って立ち上がったと同時に、服が後ろに引っ張られるような感覚がした。

 振り向くと、さっきよりもヒドく顔を赤らめた氷翠ひすいが視線を合わせないようにか俯きながら俺の服を掴んでいた。


「えー、何がしたいのでしょうか……」

「嫌……じゃない、から……食べよ……?」


 恥ずかしがりながら彼女は言った。

 もちろん、嫌がられていないなら嬉しい。思わず口角が上がりそうになったのを必死に耐え、椅子に座り直した。


「じゃあ、どうぞ……」

「ん……」


 一口目はあげようと思い、カップ麺と箸を渡す。

 氷翠ひすいはそれを受け取り、少し箸で掴むと、勢いよく俺の口の中に突っ込んできた。


「んごっ……!」

「ご、ごめん……強く入れすぎた……」


 もうちょっと強く入れられていたら喉の奥に刺さっていたかもしれないぐらいの所で箸と麺が止まって、ホッとした反面彼女がちょっと怖くなった。


「ほら、その……あーん、とかいうやつをやってみたくてですね……」

「…………」

「なんか恥ずかしくて思いっきり突っ込んじゃった……。ごめん……」


 非常に申し訳無さそうに謝られているのに、許さないなんていう選択肢は無い。


「全然いいよ。ただ勢い良く麺が口に入っただけだし。ちょっとビックリしたけど」

「ありがとう……」

「じゃあ今度は俺が食べさせる番だな」


 そう言って、俺は麺を掴むと彼女の口元までゆっくり運んだ。


「……えっ!?」


 予想外の出来事に、氷翠ひすいさらに顔を赤くして目を泳がせ始めた。

 動きが小動物みたいで可愛い。


「ほら、食え」

「え、えぇぇぇ!?」


 こんなやり取りをカップ麺の中身が無くなるまでひたすらに続けた。

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