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第1話 遊びたい

れい、おはよっ!」


 朝、ベッドの上で目を覚ましたと同時に、隣に座っていた幼馴染みである氷翠ひすいの元気のいい声が聞こえてきた。

 彼女はまあ、かわいい。黒髪のロング寄りでスタイルも良く、一応美少女という部類に入るのだろう。

 そして、未だに自分でも信じられていないのだが、氷翠ひすいは俺の彼女になったのだ。


 数日前までなら一緒に寝ていた事に驚いていただろうが、もうこれを何度も体験したせいか慣れてしまった。


「……あぁ、おはよう」


 眠たい上に物理的な距離も近いので恥ずかしくなり、薄い反応を返してしまう。


「なんか、今日は元気無いね」

「……昨日寝るの遅かったんだよ」


 恐らくバレているであろう嘘を付いて、俺は再び寝るために目をつぶった。今日は土曜日で特に用事も無いので二度寝でもしようと思ったのだ。


「……また寝ちゃうの?」

「眠いんだよ。10時まで寝かせて……」


 そう答えてしばらくすると、氷翠ひすいの何か呟いたような声が聞こえてきて、甘い匂いと柔らかい感触が俺を包み込んだ。


 彼女が抱きついてきたようだ。


「……どう? 眠気吹っ飛んだ?」

「いや全然」

「ぬあっ!? 私の必殺技が効かないだと……?」


 表情一つ変えずに答えると、ショックを受けたような顔をして彼女は体を起こした。そして、俺に馬乗りするような体制でこちらをじっと見つめ始めた。


「……どうしたんだよ」

「私、れいと遊びたいんだけどぉ〜……」


 人の上に乗っているというのに何かを気にする素振りすらせず、猫みたいに丸まって口を尖らせてしまった。


「……分かったよ。起きればいいんだろ? 起きれば」


 そう言って氷翠ひすいを降ろしてベッドから出ると、着替える為に自分の部屋を出た。


 着替えてからリビングに向かうと、温かそうな湯気が立っている味噌汁とご飯が並べられていた。


「……別に頼んでないけど、とりあえずありがとう」

「ふふん。実は私、味噌汁作るの練習してたんだ! 美味しそうでしょ!?」


 そう言ってドヤ顔で胸を張る姿は、普通に可愛いと思える。


「そうなのか。じゃあ、いただきます……」


 お椀を口に運んで、ゆっくりと口に流し込む。

 味噌を入れすぎているというわけでは無いが、しっかりと味はする、ちょうど良い美味しさだ。


「おぉ……、普通に美味しいな」


 やっぱり氷翠ひすいは料理のセンスがあるのかもしれない。何日か前に作ったハンバーグも《《味だけは》》美味かったからな。


「本当!? やったっ! 美味しくないって言われたらどうしようかと思ってヒヤヒヤしたんだよ?」


 彼女は俺の隣の椅子に座ると、そんな事を安心しきったような顔をして言った。


「彼女《氷翠》が作った味噌汁が不味いワケ無い」


 言い切った後でめっちゃキモいセリフを言った事に気が付き、後悔したがもちろん手遅れ。氷翠ひすいは顔を真っ赤にしながらこちらをじっと見つめてきた。


「……なんか、それはそれで気持ち悪いね」

「自分でも後悔したんだ。イジるな」

「ふふっ。でも、な〜んか嬉しかったよ?」

「……そうか」


 彼女がニコッと笑いながら言ってくれたおかげで、少しだけ恥ずかしさが和らいだ気がした。

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