5、さようなら…樹 榊原瑠菜の目線
昨日、樹が詩織ちゃんと百貨店で楽しそうに歩いているとこを見てしまった。しかも、樹と目が合っちゃってうちは逃げるように家に車に向かった。それ以来うちは一睡も眠れていない。今日は学校も休んじゃったし。そろそろお兄ちゃん(るき)が帰ってくる頃かな?って思いながらうちはベットに横になった。
その10分後ぐらいにお兄ちゃんが帰ってきた。帰るなりうちの部屋に入ってきた。入るなりお兄ちゃんは
「瑠菜お前ずる休みすんな」
と言ってきた。うちもムスっとして
「別にお兄ちゃんに関係ない!」
と言い返した。
「関係なくない!家族やろ!」
うちの家族はお母さんが滋賀出身でお父さんも京都出身のため家では関西弁を使うことが多い。でも、うちとお兄ちゃんは関東育ちなので外では、標準語が多い。お兄ちゃんは家でもあまり関西弁を喋らないけど怒ったり、感情が高ぶる時に関西弁が出る癖があった。なので関西弁がでてるってことはそれだけうちを心配しているんだと思う。うちは、反省して
「さっきはごめん。」
と、謝った。
すると、お兄ちゃんは
「分かったらいいんや」
と言って許してくれた。
「ねぇ榊原瑠季くん、関西弁になってんで。そんなにうちのこと心配してくれたん?」
と言ってみると
「うるさい!」
とどやされた。
「と言うか、そんなことを言いに来たんじゃないんだ。昨日 詩織と会っただろ?樹は、あの″西条家″の跡取りらしい。それで詩織と許嫁になる予定だったそうだ。でも、断ったらしい。」
「断ったのに何で詩織ちゃんと買い物に言ってたん?」
「2人ともあんまり友達と買い物に行ったことがなくて行ってみたかったんだってよ。」
「なんだ~そうだったんだ。」
「じゃあ、明日から学校来いよ。」
とだけ言って部屋から出ていった。うちは、小さい声で
「もう無理だよ…」
と呟いた。
次の日うちは、学校に行った。でもいつもみたいに樹に話しかけることは出来ずに樹のことを避けてしまった。きっと跡取りなら別の許嫁が出きるはず。もしそんなことになったらそんなの耐えられない。うちは、樹に似合う子になりたい。だから、叔父さんのいるニューヨークに留学することにした。叔父さんは前からいつでも来ていいよっていってくれていた。今朝お兄ちゃんが家を出てすぐお父さんとお母さんに伝えた。お父さんとお母さんはすごく驚いていたけど賛成してくれた。お兄ちゃんには今日の夜に伝えるつもりだ。
学校から帰ってきたお兄ちゃんに伝えたら、
「急すぎる!なんだ急に!」
と驚いていたけど一生懸命理由を話したら納得してくれた。
「それでいついくんだ?」
「もうすぐ冬休みじゃん?だから1週間後かな?」
すると、お母さんが
「透のところにいくってことはたっくんにもよろしく伝えといてや~」
と言っていた。たっくんこと秋葉匠海は、うちと、お兄ちゃんの従兄弟にあたる。
「うん!」
と返事して私は部屋に戻った。
1週間後、学校でみんなに挨拶をして車に向かった。すると
「瑠菜留学とか聞いてない!何で教えてくれなかったんだ!」
と、樹が叫んだ。今、樹の顔を見ると絶対に泣いちゃうから樹に背中を向けて
「さようなら…樹」
とだけ言ってその場から走り去った。