4、西条樹(にしじょういつき)の好きだった人
半年がたった頃、俺の幸せだった時間は欠けてしまうことになる。
ある日父親にリビングに呼ばれた。俺の父親は、名家″西条家″の出身で俺は長男のため跡取りとして許嫁ができることになった。俺には、5歳年上の姉がいた。でも、姉はパティシエになるためにフランスに留学中だった。父は
「許嫁なんて形だけで1度一緒に食事をして出掛けるだけでいいよ。父さんも相手の方に失礼だからとりあえず断るにしても会うぐらいはしなさいと言っていた。」
「わかった。でも、絶対に断るから。」
と言って俺は、リビングを後にした。
次の週、俺は相手の九条家の跡取り娘の、九条詩織さんと食事をすることになった。話してわかったことだが彼女もはじめから断ろうと思っていたそうだ。食事が終わり百貨店で少し買い物をして帰ることになった。俺も、詩織さんも友達と買い物に行ったことがなくすごく楽しんでいた。帰りに迎えの車に向かっている途中俺は、瑠菜と瑠季に会った。俺が声をかけようとすると、2人も俺に気づいて目があった。その瞬間、瑠菜が駆け出した。瑠季は、瑠菜を追っていった。それを見ていた詩織さんは
「あの2人と知り合いなんですか?」
と、聞いてきた。
「はい。同じ学校で、」
と答えると詩織さんは、驚いたようにいった。
「彼らは、榊原瑠季さんと瑠菜さんですよね?九条家と榊原家は親戚でしてお正月や、法事で会ったことがあるんです。」
「あの2人がそんなにすごい人だなんて知りませんでした。明日学校で2人に聞いてみます。」
その後、俺と詩織さんはそれぞれ家に帰った。
それと、詩織さんとは連絡先を交換して時々友人として連絡を取り合っている。
次の日学校に行って瑠季に昨日、詩織さんが言っていたことを訊ねた。
「まさか、瑠季が九条家と親戚だったなんて驚いた。」
瑠季は、
「あれ?言ってなかった。詩織とは、親が従兄弟同士なんだ。だから再従兄弟にあたるのかな?」
「そうなんだ。あと、聞きたいことがあるんだけど昨日 瑠菜が走ってどこか行ったけど何かあったの?今日も学校に来てないし。」
「あ~その事は気にしないで。と言うか樹こそなんで昨日、詩織といたんだ?」
「俺と詩織さんが許嫁になる予定だったんだけど2人とも断ったんだ。でも、そのあと仲良くなって友達にはなったんだけどね。」
「そういうことか。」
「この事 瑠菜には言わないでくれないか?」
「えっ!なんで?」
「ならなかったと言えど許嫁ができそうになったなんて知られたくないからさ、」
「樹、瑠菜のこと好きなのか?」
「うん。実は…。あっ!でも瑠菜には言わないでくれよ!」
「何で?」
「恥ずいからに決まってんだろ」
「そんな理由!?まぁ樹の好きにしていいけど…」