コント「反転」
(ぐわんぐわんと言う音がする)
ツッコミ「……?(辺りを見回す)」(首に『ツッコミ』と言う札を下げている)
(横にボケが倒れている。ボケも、首に『ボケ』と言う札を下げている)
ツッコミ「あっ!イエロースポッドサイドネックタートル君のお父さん!」
(ボケ、起きない)
ツッコミ「ねぇ!起きてよ!イエロースポッドサイドネックタートル君のお父さん!イエロースポッドサイドネックタートル君のお父さん!」
ボケ「(カッと目を開く)え、何?俺の息子、世界一長い爬虫類の名前で呼ばれてるの?」
ツッコミ「あ、よかったぁ!起きた!ねぇ、イエロースポッドサイドネックタートル君のお父さん、ここ、どこか分かる?」
ボケ「取り敢えずその呼び方やめてくれる?」
ツッコミ「えぇ……まぁ、いいけどさ。で、ここどこか分かる?田中太郎さん。」
ボケ「いや、俺は決してそんな名前でもないんだけど……まぁさっきよりましか。俺も分かんない。ここどこなんだ?」
ツッコミ「そっか……でも僕、ひょっとしたら、ここが異世界なんじゃないかって思うんだ。」
ボケ「異世界?……何を言ってるんだい、君。」
ツッコミ「だって、僕、こんな草、見たこと無いんだ。」
ボケ「異世界なんて、そんなわけ……って、草?」
ツッコミ「うん、草。あのね、僕、草の事なら何でも知ってるんだ。頭の中に全ての草がリストアップされてて、もし新種の草が出来たら、見なくたって感覚で分かる。」
ボケ「……は?」
ツッコミ「本来なら、数秒に一度は新種が更新されているはず……なのに、全然現れないんだ。」
ボケ「え、草ってそんな勢いで新種できてんの?」
ツッコミ「え?……でもさ、あの草の名前、分からないでしょ?」
ボケ「……ゴンべギルゲ草、とか?」
ツッコミ「あてずっぽうに言わないでよ。そんな草存在しない。」
ボケ「だよなぁ……。」
ツッコミ「……で、多分異世界だと思うんだけど、どうしようかと思って。」
ボケ「百歩譲って異世界だったとしたら、勇者になるかスローライフするかで大きく変わると思うよ。」
ツッコミ「え?」
ボケ「え?」
(数秒どちらとも固まる)
ツッコミ「取り敢えず、寝る場所の確保しないと。田中太郎さんは何か持ってる?」
ボケ「いや、ごめん。俺何ももって無くて。」
ツッコミ「そっかぁ……。」
ボケ「君は何か持ってる?」
ツッコミ「うーん。ガイアナオオゴキブリなら持ってるんだけど。」
ボケ「なんでゴキブリ常備してんの。」
ツッコミ「飼ってるタランチュラの餌だから。」
ボケ「嘘だろ……。」
ツッコミ「あ、洞窟があるよ!」
ボケ「あー、じゃあ、今日はあそこで寝ようか。」
ツッコミ「うん!あ、僕、薪集めて来るね!」
ボケ「おー。」
(暗転。)
ツッコミ「えーっと、これと、これと……あ、あれ、火おこしに使えそう!(薪と、乾電池を拾う)……あれ、でも、なんで電池なんかがあるんだろう。」
(暗い顔をするが、一転して明るい顔になる)
ツッコミ「あれ……と言うか僕、なんで乾電池が火をつけられるものだって知ってるんだろう。(暗い顔になる)」
ツッコミ「……。(首から下げている、ツッコミの文字を見つめる)」
(暗転。)
ツッコミ「田中太郎さん!僕、元の世界に戻る方法が分かったかもしれない!」
ボケ「え?本当か?」
ツッコミ「うん!逆に戻せばいいんだよ!」
ボケ「は?」
ツッコミ「ずっと違和感があったんだ。全部逆なんだよ。」
ボケ「いや、何言ってるんだよ、」
ツッコミ「そもそも、さ。貴方が大人とは思えないんだ。僕が一人で薪を拾いに行って求めない。僕、まだ7歳だよ?普通、そんな多い量拾ってこれないし、戻ってこれなくなるかもしれない……同じ状況を分かち合えなくて、一人ぼっちになるのは、あんまりよくない事でしょ?」
ボケ「……。」
ツッコミ「さっきの、ゴンべギルゲ草も。もしかして今、草の事全部わかんじゃない?本来の僕みたいに……今僕たちがいる、異世界の草、全部。」
ボケ「……。」
ツッコミ「本来、この札、逆だよね?そのことに気が付いているから、どうしていいか分からなくて、弱いツッコミばっかりしてたよね。」
ボケ「……。」
ツッコミ「きっと、本当は僕が大人で、僕が草をすべて分かれて、僕がボケだ。そういう、逆に……反転している世界なんだと思う。コメディと不思議展開とかも、本当、真逆みたいなもんだしね。」
ボケ「……ああ。」
ツッコミ「だから、さ。多分、この札を交換したら、戻れると思うよ。」
(ツッコミ、ボケにツッコミの札をかけて、ボケ、ツッコミにボケの札を掛ける)
(暗転。)