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短編ホラー集

ひのきのぼうの買取り拒否した店主

作者: Sasanosuke

 とある日――


 勇者なる存在が “ひのきのぼう” を売りに来た。


「だから10ゴールドで買ったんだから5ゴールドで買い取れよ! 主要キャラクターでもない奴が容量食うなよ! 買値の半分が売値なの! なんでわかんないかな?!」


 理不尽の塊である。


 恐らく元は建材だった “ひのきのぼう” は亀裂が入りモンスターの体液と思われる物が染み込んでいた。


 これを価値ある物として買い取るなど到底できない。


「残念ですがお断りさせていただきます」


「たかが店番が設定に逆らうなよ! 運営に言い付けてやる!」


 勇者なる存在は捨て台詞を吐き捨てながら帰っていった。


――そして数分後に黒服の男が現れて勇者なる存在が次にひのきのぼうを売りに来た時は後日私が買い取るから5ゴールドで買い取って欲しいと言われた。


 口頭での契約では私が納得し無かった為に書類で残す事になった。


 あんな端材に価値を見出すとは人の業には底が無い……



 翌日――


 勇者なる存在は “たびびとのふく” を売りに来た。


 これは明らかな犯罪である。


 この “たびびとのふく” は冒険者を引退してこの街に住み着いた宿屋の親父の宝物だ。


 買取り査定として奥の部屋に引っ込んだ私は頭を抱えた。


 武具を持ち明らかに堅気ではない勇者なる存在はこの盗品には35ゴールドの価値があると主張している。


 昨日売りに来た “ひのきのぼう” であれば契約書通りに買い取れたのだが良い品であっても盗品は勿論買取り不可である。


「残念ですがお断りさせていただきます」


 しばらく考えた私は殺されるかもしれない恐怖を押し殺しながら勇者なる存在に拒絶の意志を伝える。


 私の武器屋で一番攻撃力の高い武器を装備して……


 勇者なる存在は何も無い空間を何かを選ぶように指差していた。


 その後何も無い空間に喋り出した。


「運営さん?! バグみたいなんですけど?! 買値の半分が売値であっているんですよね? 場所は……」


 勇者なる存在は私を無視して去っていく。


 よかった。


 戦う事にならずに済んだようだ。


――そして数分後に黒服の男達が現れて店を勝手に閉め始めた。


「何をするんですか? 私にも家族がいるんです! 勝手に店を閉めないでください!」


 私は抵抗した。


 しかし多勢に無勢。


 店の入り口は立ち入りができない状態となり街から切り離された。


「自立思考の異常かね? 取り敢えずバグが治るまで店を隔離しよう」

「そうですね。しばらくは別のマップに繋げて運営しましょう」


 私を無視して消えようとする黒服にしがみつき訴える。


「せめて家に帰してください。家には家族がいるんです」


 黒服は私を弾き飛ばす。


「家族はいないですよ? 家もないでしょう? 作ってないですから」

「やめとけ!」


 黒服達は理解できない発言を残して私の店から消えていった。

 

 私はこれからどうすればいいのだろうか?

最後までお読みいただきありがとうございます。


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