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恋した瞬間、世界が終わる -地上の上から-  作者: hougen
第1部 降下するダンス
8/95

07 心ある人によって

2021年8月27日 投稿開始


ーー暗がりにある、明かりの届かないところ


ランプすらない。

誰かの幸せが照らすのを待つだけの。


来てくれるのを待つしかない時。

時が来るまで。

それまで身を潜め。

明かりの当たらない場所で。

幸せを感じず、幸せを疑ったままの人。

泣いたって、誰も気づかない場所で。


冷えた体は、冷えた心は。

薪のないストーブ。

孤独は、寒さのこと。

孤独は、冬のこと。

暖める手段を欠いた人生のこと。



私は、最近

心について考える



言われた通りの人生を歩んだとしても、

そこに、支障はある。

誤解を招いてしまうこともある。

手に入るはずのところで、すり抜けていってしまうこともある。

心の行き違いで、悲しくなることも。



私は、最近

心について考える



「生きるというのは、悲しいのことだ」


「生き直すということも、気持ちの良いものではない」


「見ているのか? 私はこうして言われた通りに、生きている」


「誰が死に、誰が生き、誰が生まれようと、それに逆らうことはできない」


「私は、食欲が減退し、最近痩せてしまった。意欲…意欲が減退している」


「かろうじて、私は約束を覚えている。それを頼りに生きている」


「でも最近、それを疑って、信じられなくなっている」


「猜疑心によって、心が蝕まれて…疲れてしまった」


「一方通行な生き方だ、私に還ってくるものなどないのでは」



追いかけるものなどなく。

夢は、この暗闇からはイメージすらできず。

自分の傷口を確認するだけ。

声に出して泣いたって、誰も。



 夢


心の交わられない場所


泣いたって


泣いたって


寄り添う人などなくて



ーーその時


    「隣りに座ってもいいですか?」




私が腰掛けていた待ち続けるベンチに、

一人の男が横に腰掛けた。

私の視界は霞んでいて、はっきりとした表情が見えず。

その男は白い靄に包まれていた。


「夜を忘れなさい」


「夜を忘れる?」


私は自分の足元に眼をやった


「沢山の夜を忘れなさい」


足元の暗がりが靴の形に合わせて、四方に散るーー


暗がりの一点が飛び、ベンチの角に眼をやった


「あなたはよく働いた。自分の為だけではなく、誰かを見てきた」


角に溢れた明かりを見る


「見えない明かりは、先の方にあるんだよ」



白い靄は、暗がりへと消えた。

夜だった。

静かな公園には春を控えた木々が待つ。




 第1部 降下するダンス 完


2021年9月5日 毎日PM15時投稿開始

(次回9月9日 PM15時投稿)

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