55 旋回する頭上の鳥
2021年 8月27日 投稿開始
9月 5日 毎日投稿開始
10月 5日 毎日投稿終了。ほぼ毎月投稿に変更。
2022年 9月23日 次回投稿予定。投稿時間は “午前11時” です ←
「この暗闇は……、そうなると、これも陰と陽になります。もちろん闇の中へ入る。隠れた側に入るのですね。かたちを作りだすなかで、つまり花に、果実に、葉に、姿を現す力は、外的には消えてしまう。そして、外的にはもう存在しないから、だからこそ力は自由になり、内へと入り、そこでかたちを作る、変容する。(中略)姿かたちを得ることは、外へと現れ出ることです。わたしがカバラから学んだように、世界の二元性は、実はこの現れることが永久に交錯する、そのことにあるのです。(中略)たとえば、旧約聖書の冒頭の言葉、“はじめに神は天と地をつくられた”を、こう翻訳してもいいのではないでしょうか。“はじめに神は内と外をつくられた”」
(ものがたりの余白 エンデが最後に話したこと 岩波現代文庫より)
雨が続いていましたーー
ファミレス
平日の店内は、一昔前のPOPsをずっと選び続けていて、もう終わる頃になってからも何処かの懐古主義者がBGMを変えることを拒んでいるようでした。
その場では、ウェイトレスや客の所作が、音の隙間で目につくように立ち昇り、わたしは余韻を聞き取りながら、接客をしていました。
若い男の客
知らない顔の客
見覚えのある顔の客が一人いて、
ウェイトレスの“あの娘”に、話しかけていました。
わたしは会話の内容が気になって、若い男の客に「いちごパフェ特盛」を運びそうになりました。
タブレット端末を覗き注文を再確認、あれ、合ってる? あなたさっき大盛りのパスタ食べたでしょ?
…好きなの? その目、堂々と食べなさいよ、今さらでしょ。
ウェイトレスの“あの娘”とはプライベートでもよく会います。
読書が好きだというお互いの共通の趣味がありました。
ある時、わたしに本を貸してくれました。
本のタイトルは、
“once, at the place that I gave up” という詩集でした
わたしはよく、詩集の中の言葉を頭の中で想い味わいながら働きます
ーー1ページ目
「旋回する頭上の鳥」
頭上を見上げ
空から仰ぐ
記憶は…漏れて
音は…旋回する
決して降りては来ない
鳥が頭上に 一羽
あれは…なんて鳴くんだろう?
旋回する頭上の鳥は
軌道上に描く声を落とし
霞む景色が
独り善がりで
つぶらに円を描いて
旋回する 一つの声
夢にも現れない
何処に居るのだろう?
どうして和えるだろう?
もう居ないかな…
旋回する
頭上の鳥
円を描いて
軌道上
vortex
頭上を見上げ
空から仰ぐ
記憶は…漏れて
音は…vortex
旋回する 頭上の声
旋回する 一つの声
もう嫌だ
続きばかりだ
何処にも
出れそうもない
あれは…なんて鳴くんだろう?
「ことめいこさん」
見覚えのある顔の客と、眼があった時
音楽が近づいてきたーー初め、そう思いました
それとも、死が近づいていたのでしょうか?
何処かに悲しい響きが残っていました
聖歌の終わりの余韻
最後に、天から堕とされて終わる響き
物悲しさ、そして
雨はまだ、足らないというかのように続いています
わたしは、窓に降り、撥ねかかる雨の波形が何故、店内の中に入ってこないのだろうか?と不思議に感じました。その時、
ーー恋した瞬間、世界が終わる
と、石板に書かれた言葉みたいに、手元のタブレット端末の画面に現れました
「あなた達に与えられた猶予は、あと3日間
-恋した瞬間、世界が終わる-」
見覚えのある顔の客が、“あの娘”に語りかけます
「あなたは、今日から
別な誰かになるんです」
「誰か……に?」
見覚えのある顔の客は、“あの娘”に何かを思い出させるように
「元は同じでも、波形が、どのように辿って来たのかが大事なのです」
「占いとか、家系ですか?」
店内のBGMは証言するかのように停止して、まとまりを欠いたそれぞれの生が、3日間で与えられた可能性を巡って、店の窓に撥ねかけ、もっと、強く、雨音を叩きつけながら暴れるように、行き場をぶつけ求め始めていました。
わたしは、“あの娘”の中で、止めることのできない流れがあることを察しました
見覚えのある客は、わたしの方を向きましたーー
「いえ、方法なのです」
次回の投稿時間は、
2022年9月23日で、【AM11時】の投稿です。
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