32 水先案内人(ガイド)
2021年8月27日 投稿開始
「水先案内人に、
あなたは出会ったことある?
ある娘がね、私に教えてくれたの」
そういってから、ココは
「あなたは“くちぶえ”が吹けるかしら?」
男の記憶を運ぶ“ミツバチ”となった私は、
反発者の男の記憶を辿るうちに、
“ガイド”を伴った旅の記録に目が止まった。
それは秘境へと向かう旅だった
男はとある土地で、儀式的な行為を行っていた
“new leaves”による新種の植物の発見以降、
何かが解かれるように、彼らの団体に事が雪崩れていった。
まず“ガイド”と呼ばれる水先案内人が彼らの前に現れた
その“ガイド”は、小さな花の種子を手渡したーー
「育てなさい
それが、“自分”であるように
それが“、人々”であるように
育てなさい」
彼ら団体の一人一人に、一つずつの種が撒かれた
それから彼らは人々の傍へとその種子を広げることになった
「一つの種子が、一つの花が与える影響を知りなさい」
団体の中から男が選ばれ、特別な場所へと案内されたようだった
私はその手順を真似るべく、
その土地へと向かったーー
忘れ去られ、見放された土地だった
消えかかった最後の良心が逃れるように、
人々の粗悪さを避けた場所を選ぶように。
物事が終わったような場所だった。
環境が停止されたような場所だった。
誰も開発されることのない土地だった。
有り触れた自然があるだけの、
商業的価値からは“特別さ”を欠いただけの。
ーーそこへ向かうための“ガイド”
それが、ココだった。
私の車のラジオからはチェロが、
細胞を再生させるように、
リフレインを繰り返し奏でていた。
田んぼには光が照子となって、
夏がジリジリと私の肌を湿らせていた。
-あるルートで折り返す-
古民家が見えてきた。
田んぼの横に車を止めた。
エンジンを切り、チェロが止んだ。
その代わりに犬の吠える声が甲高く立ち昇り、
私の期待を高めた。
玄関の手前にはポストがあった。
“記憶”にはそれを通じて、
ある儀式のような段取りが必要だった。
男の記憶に残されたように、
私は途中の道で“タンポポ”を摘んできた。
それを一輪、ポストに入れた。
それが合図だったーー
景色はそのままだった。
夏が私の肌を湿らせたまま。
犬の甲高い声もそのまま。
「それで良かったのか?」を信じて。
また車へと戻りエンジンを掛け、
ラジオからチェロがまた繰り返した。
私の期待を、細胞を震わせた。
そこからまた、
車を走らせ、あるルートへと。
合図を信じて。
一輪の花を、一輪のタンポポを信じて。
さらに秘境の奥、ある集落へと向かった。
田舎のさらに奥地へ。
田んぼは次第に姿を変えた
代わり映えのしなかった景色が、
管理されていない丈の長い草木に。
より自然に近づいていった。
人が住んでいる証拠が消えてゆく
人の手で維持されている証拠が失せてゆく。
私たちの「マニュアル」は、届いているのだろうか?
うねるような曲がり道で、
久しかった田んぼに光る粒子が、
走らせた車の窓を飛び越えて、
私の瞼を閉じさせた。
一瞬、瞼を上げると、
脇道に人影が見え、
麦わら帽子に添えた一輪の花が目に留まった。
タンポポだと思った
白いブラウスが揺れ、私の方に手を振った
綺麗な人だった
心の透明さが田んぼの粒子のように、
散りばめられた宝石となって、
零れるように溢れ出ていた。
白いブラウスの胸の膨らみ
麦わら帽子にまた目を向けると、
それが“タンポポ”ではないものだと気がついた。
カエルの声が聴こえてきた
“音”が帰ってきた
帰ってきたのは、
賑やかなカエルの合唱隊だった。
道の脇に車を停めて降り、
私は心の透明さに触れたーー
「私は、ココ
あなたの名前は?」
ココと出会ったのは、
ある集落へと向かう途中の田舎道だった
私が落とした背景に
ココは残って居てくれた
「水先案内人に、
あなたは出会ったことある?
ある娘がね、私に教えてくれたの」
2021年9月5日 毎日PM15時投稿開始
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・投稿日は、その都度の小説の後書きにて報告します。
(次回は10月4日、PM15時投稿)
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(これも10月5日までの1ヶ月間の試験的)
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