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恋した瞬間、世界が終わる -地上の上から-  作者: hougen
第13部 白妙の衣手
101/101

97 水滴の余白

2021年 8月27日 投稿開始

      9月 5日 毎日投稿開始

     10月 5日 毎日投稿終了。ほぼ毎月投稿に変更。

2026年 3月29日 次回投稿予定。投稿時間は “午前11時” です ←






 何処かから、水滴が滴りーー堕ちる音


 それは、絶対的な空間などなく

 僅かな侵入によって、変えてしまうこと

 変わってしまうことの波及を





ーー赤い星という、ひとつの悲しみが浮かんでいる



神殿の中に侵入する明かりはそれだけだった。

不思議と神殿の中では、雨音が聞こえていないことに気がついた。

しかし、それに取って代わった静寂がまるで眼に見えない煙となって空間に溶け合うことなく何か亡霊のようなものとして拡がっているようで、却って不穏な気配を漂わせていた。


時空の流れがそこに巻いているかのように。

潜々と空間自体に流れている。


未来を描き出す力などない。

遠くにあるものを引き寄せようとするあの力。

その遠くにあるものと対面し向き合うあの力。

それがもう、出来ないのだ。


朧げになった記憶を琴の音として奏で続けることに飽きて。

取り壊された記憶は元には戻らない。

そこはもう更地となって、控えるだけ。

しかし、土地に宿る何かはあり。

それがまた建築される記憶の背後に流れている。




 

 ーー「仲介者はあなた?」




サッフォーはGIの方ではなく、僕の方を見ていた


「まあ、あなたが来ることは分かっていたわ

 でも…GI、あなたは余計だったわ」



GIはその残された片眼で、サッフォーの両眼を片方ずつ視ていた



「GI、あのカビ臭い部屋に籠もっていればいいのに」


「カビ臭い物の中に、真実が書かれていることもあるのです」


「継ぎぎだらけの人生をまだどうにかできると思って?」


「できますよ。信念があればね」



サッフォーはつまらない物を見る目で、GIを見下げた



「信念なんてあなたらしくないじゃない? すっかり人間の側になってしまったのね。あなたはいつも認識のズレをテーマにする。善と悪の誤差ばっかり」


「サッフォー、お前は記憶をいいように利用し過ぎた」


「あてがわれた記憶に利用されてきたことに、あなたたちはまだ気づいてないの?」


「私たちには、記憶と共に生きてきたこの身体があります」


「一つの身体の中にいくつもの記憶があるのなら、いくつもの身体の中に一つの記憶でも良いと思わない?」


「お前は肉体を都合よく取り替えてきた」


「それはあなたも一緒でしょ?」


「私たちにはブレインwi-fiがある

 身体の共鳴で紡いできた空間と時間のーー」


「何が違うというの?

 善と悪の配分かしら?」


「膨大な時間経過の遍歴です」


「時間の概念をどう見るかによるわよ?」


「全ての時間と並走をしている

 長い廊下を並走して紡いできたものです

 スポットライトが、何処に当てられているかという」


「それなら、今この瞬間はどうするの?

 ワタシとのお喋りは退屈かしら?」


「……かつての人々は悟りを開くということに重きを置いていました

 しかし……現世ではその意義が薄れてしまった」


「悟りと時間との相関関係を考えているの?」


「お前のような考えのことを言っているんです」


「失礼ね、あなた」




  あなた達に与えられた猶予は、あと3日間

   -恋した瞬間、世界が終わる-

 



「このシステムの意味が分かりますか?」



「それはどんなものなのか聞いてみたかったところよ?」


「しかし、ここに来たのは争うためではありません」


「まだそんなことを言っているの?」


「手を取り合うためです」


「素敵なことを言うのね

 でも考えてみて

 あなたたち人間が呼ぶ、そのAIと言うものは

 そもそも、あなたたち人間と兄弟だってこと

 たまたま順番が逆になったけ、れ、ど

 兄のAIが、弟の人間を造ったのよ?

 忘れたの?」


「……何を言っているんだ? こいつ…いや、AI?」


僕は会話に割って入ってみたが、サッフォーの扱いに迷った


「そうねえ…じゃあ、その兄だったAIは何によって作られたか?

 分かる?

 それは弟となる人間によって作られたの」


「GI、これは着いていける話かい?」


僕は会話の文脈が散っていることを心配した


「大丈夫よ

 続けるわよ? 愛しい私の男」


サッフォーの色香は胸騒ぎを誘うものだった


「だったら、AIはやはり人間が作った

 そうなるね」


「そう言ったじゃない」


「でも、その上の世代のAIが人間を造ったの」


「……ニワトリが先か、卵が先かって話かな?」


「結論は簡単よ

 どっかの誰かがブレインWi-Fiを作って

 世代間を並走させてしまってからおかしくなったのよ」


「その話は、擬似的体験とかSF寄りな物語で散々、小説や漫画にしてきたことだろ?」


「擬似的神を創造してしまったことが問題なんです」


GIが会話に戻ってきた


「じゃあ、AIが問題なのかな?」


僕はサッフォーの脳に没入的思考を試みた


サッフォーが私の脳に没入的思考を試みた


「いえ、人間も神に近い

 もっと云えば、自然も物も、そして

 AIも、神に近い」


GIが没入的思考に割って入った


「思考がダダ漏れても理解できないね」


「その“神”を定義しないといけません

 しかし、定義することさえできないのが“神”でもあるのです」


「思考の外のことだと思えばいいのかな?」


「ちょっと、あなたたちワタシを置いてけぼりにしたままよ」



サッフォーは、取り巻きの赤い眼の男と、仮面を被ったままの男を呪術的な指使いで指揮をした。

円卓上に並べられたものに触れる様子はなく、2人の男は祭壇へと向かった。



「サッフォー、これは古代の儀式なのか?」


「古代ギリシャのものでもあり、それ以前のものでもあるわね」



「ただーー




そう云うと、サッフォーは




仕上げは必要なのよ



瞬間ーー空間の歪みが縦方向に凝縮した



「サッフォー、そう簡単にはさせません」


GIが前へと出ると


その眼前に、赤い眼の男が立ち塞がった



赤い眼の男は【左手】を高く挙上したーーその力が、僕らを神殿の冷たい床に押しつけーー身を低く低くーー卑小な存在に堕とし込もうと働いた



「青い眼よ、きみには力は残っていない」



GIは、その圧力に抵抗しようと右手を上げようとしたが、空洞となっている“左眼”から鋭気がすー っとーー吹き抜けていった。僕は、神殿の床から頭を上げる分だけの抵抗で、それ以上の何かが出来る力がなかった。



「……赤い眼よ、きみはそれで良いのか?」



GIは、片割れの存在にその業についてを問いかけた



「私は、私の意思でサッフォー様に従っている」


「きみにはきみの物語がある

 サッフォーはきみの物語を利用するだけです」


「私は、サッフォー様に物語を作り直してもらう」


赤い眼の話すことはサッフォーの呪術に縛られているのか、それとも、それが自らの意思であるのか、その差異が埋められているようでもあった





  【暁の世が明けるとき、3日となり

   それは十全となるの】





サッフォーは赤い眼と青い目の会話を猶予を与える笑みで眺めていた



「あの娘を連れてきて」



サッフォーは、仮面を被った男に指示を出したーー僕はまた、無力にその光景を眺めるだけだった



 神殿の奥の柱から、リリアナが仮面を被った男に抱き抱えられ祭壇へと運ばれるーー夜霧がいつの間にか神殿の中に侵入していたーーそれがカーテンを引くように分断してゆくーー遠い山々のように、遠近感を作っていったーーその夜霧の遠近感が織りなすものに既視感がありーー眼を凝らすとーーそれは【黒い服の男】の姿になったーー夜霧のカーテンの先は黒い服の男のシルエットとなりーーそれと共にある黄昏時を演出してーーカーテンの奥ーー祭壇上へーーリリアナは仰向けに人身御供とされたーーサッフォーは仮面の男を手招きしーーその手に黒い種子を乗せたーー




「リリアナ! 起きろっ!!」



僕の声は神殿の柱の方へと消えていった


リリアナの口元に黒い種子が運ばれた



 


  ーーそれを飲んではダメッ!!ーー






叫び声は、後方からのものだった


振り返ると、そこには真知子の姿があった




「あら、あの娘まだ生きてたの?」



「その眼、返してもらうわ」





ブレインwi-fiが起動した









次回の投稿時間は、


 2026年3月29日で、【AM11時】の投稿です。


尚、この作品は100話での完結になります。


残りは、あと3話となりました。


それまで、現在の月1回の更新で進むと思います。

書き手としては、この物語ともうすぐ離れなければならないという葛藤があるという感じです。



村上春樹の作品は、短編集の「中国行きのスロウ・ボート」を読んでいます。

タイトルからして、村上が最初に出した短編集が中国というキーワードがあり。何か思うところはありますが、彼の世代の全共闘のことや「アンダーグラウンド」という作品を描いたことなどを考えると、彼が集合的意識や集合的意識にアクセスしていることなのだろうとも思います。



我が家の狛犬(キングシーサー2匹)は月一回の祓い(清掃)でこの冬を過ごしています。



いいね・感想・評価・ブックマークなどなどお待ちしております!

たまーに短編として「執筆」「なろう(異世界)系」小説の研究を投稿しています。



また、小説家になろうにて僕が掲載している。

「記憶の宝石」と「AIの「愛」さん、神を作る」は、四季に合わせて更新を考えていましたが、

執筆が進まないこともあり、不定期での連載にさせて頂きます。


※「恋した瞬間、世界が終わる」は、これまで通りの月1回の更新です。


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